8月18日(木)
2時半に起床。
観音岳の日の出狙い(地蔵岳より余分に時間がかかる)は私だけらしく、テントサイトはまだ誰も起きていないようです。
恒例の出発の準備をしつつ、今日は下山日でもあるので行動食や予備の食事として残っていたものを可能な限り食べ尽くすようにしてしまいます。
そこで突然ひらめき、野菜チップスとアルファ米を混ぜて作って、「野菜チップご飯」という新メニューを開発してみました。
どんな味になるのか楽しみです。

昨日確認しておいた梯子を使って登山道に入ります。(3:35)
これ、明るいうちに梯子のことを確認してなかったら、のっけから路頭に迷うところでした。

登山道を歩き始めてすぐに道の整備状況が良くないと感じたので、いつものヘッデン(遠くを照らす用)に加えて、ザックのショルダーベルトにワイドレンジを照らす予備の照明(普段はツェルト内照明として使用)も付けて、2灯体制で登ります。
さすがにここまでゴージャスに照らせば、足元から遠くまでよく見えます。

途中の樹間から覗いた北杜市方面の夜景。

鳳凰三山の稜線、地蔵岳と観音岳の中間地点に到着しました。(4:15)
ここからまだ40分もかかるということは、山頂はまだ遠いみたいです。

市街地方面の空が少しずつ明るくなってきました。

日の出には十分に間に合うように急ぎたかったのですが、花崗岩巨石群のど真ん中で登山道を何度も見失ってしまい、確認のために登ったり下ったりを繰り返させられました。
たぶん、日中であれば踏み分け跡(岩についた泥汚れ)やペンキマークを容易に見つけられると思うのですが、夜明けの時間帯は照明も太陽光も中途半端な明るさで、えらいわかりにくかったです。

結局、急いだ割には標識から30分かかって観音岳の山頂に到着。(4:45)
小屋を早めに出発したので日の出には十分間に合ってよかったです。
山頂はかなり冷たい風が吹き続けているので、ダウンの上にウインドブレイカー代わりのカッパを着るというフル装備体制で岩陰に隠れます。
風が冷たいことを除けば、今回の縦走の最終日にふさわしい、一人きりの静かな山頂です。
両サイドの地蔵岳や薬師岳(薬師小屋がすぐ側にあります)では、こうは行かなかったでしょう。
さて、日の出を待ちますか!

南アルプス方面。
う〜む、白根三山シリーズは今日もガスの中ですか。
逆に言えば、私が居る鳳凰三山はガスってないので本日もラッキーなのですが。

空が真っ赤に染まり始めました。
いよいよです。

進行方向、富士山と薬師岳。

食べ残しスパゲティを日の出ショーを眺めながらいただきます。

南アルプス方面、ガス取れないかなぁ〜、と思っていたのですが、むしろ厚くなってます。(北岳)
こりゃぁ、今日は南アルプス方面は一日中ダメそうな感じです。

甲斐駒はぎりぎり粘ってます。

いよいよ太陽が昇り始めました。
ドラマチックというよりは、優しい感じの日の出です。

こういう地平線が長々と入ってしまうような写真を撮るときは、カメラが傾かないようにカメラに付いている電子水準器がすごい役に立ちました。
電子水準器は以前に購入したK7から付いていましたが、今回の縦走で初めて意識して頼ってみました。
結局最後まで2メモリ分カメラが傾く癖が治らなかったので本当に助かりました。(ありがとう、ペンタックスK5!)

K5にも感謝ですが、いやぁ〜、最終日まできっちり晴れてくれて、本当にありがとうございます!

鳳凰三山は南アルプスの東に位置しているので、前衛の山が輝くことになりますね。

朝日を浴びる甲斐駒ケ岳。
この方角からは綺麗な三角錐の「駒ケ岳」です。

強風が吹き続けているため、空には竜のような雲が形を微妙に変えつつ絶えず伸びています。
これが見ていて飽きないわけです。

う〜ん、コンモリ! (北岳と間ノ岳)

地蔵岳の水前寺清子坂(勝手に命名)にも太陽光線が当たり始めました。

では、日の出ショーも終わったことですし、そろそろ薬師岳に向かいますか!(5:45)

オ〜ゥ、メチャコンモリ!(北岳)

南アルプスの眺望は「コンモリ」のままですが、正面を向けば楽しい稜線歩きです。

上空の空も相変わらず強風で形をかえつつ楽しませてくれるので、とても気分良く歩いていけます。

観音岳方面を振り返ったところです。

いよいよ最後の山、薬師岳に近づいて来ました。
というわけで、縦走最後の山、薬師岳に到着!(6:05)

薬師小屋から来たであろう登山者にお願いして、写真を撮ってもらいました。
最終的にザックの大きさが半分ぐらいになってます。重量もかなり軽くなっている実感があります。
あと、自分自身はこの時気がついていなかったのですが、今回の縦走だけで体重が5kgほど落ちていて(2011年4月から比べると10キロ以上ダウン)、人相や体型がかなり変わっておりました。
(帰宅後に「オムロン体スキャン」で測定してみたところ、体脂肪率10%、体年齢26歳と出て大喜びしたのですが、いろいろな人に「病気なの?」と、声をかけられ、本人が狙った効果はまったく出なかったのでした)

薬師小屋がすぐ近くにあるからか、こちらの山頂はえらい賑やかです。
もし幕営可能な山小屋だったら、私もここに泊まる計画を立てていたと思います。

山頂で粘ったところで特にガスが取れていくような傾向もなかったので、いよいよ意を決して下山開始です。(6:20)
「これでようやく終わる」という気持ちと、「ついに終わってしまうのか・・・」という相反する気持ちが混ざり合って複雑な気分になります。

程なくして薬師小屋の前を通過。用事はないので素通りです。

名残り惜しく薬師岳を振り返ったところです。

巨大な岩陰ですれ違った男性に「薬師岳までの距離」を訪ねられたのですが、その方がたまたまムーディ勝山そっくりだったおかげで、その後しばらく頭の中で「ちゃらちゃっちゃっ、ちゃらっちゃ〜♪」と、無限ループが始まって困ってしまいました。
しかも、肝心の歌のほうをちゃんと知らなかったので、前奏オンリーバージョンの無限ループでした。。。

そろそろ稜線を外れる気配を感じたので、ここで稜線最後の休憩を入れます。
さようなら南アルプスの展望。

いよいよここから夜叉神峠(左方向)へまっすぐ下って行きます。

さすが百名山、よく整備された歩きやすい登山道なので、不注意ですっ転ばない程度にペースを上げて下って行きます。

縦走の締めくくりにふさわしい「恒例の樹林帯」を下って行きます。

そろそろメールチェックでもと思ったのですが、やはりつながらないのでした。(相変わらずFOMAプラス問題)

南御室小屋に到着。(7:20)

楽しみにしていた「南アルプスで一番旨い水」ですが、、、
うん、普通に冷たくておいしい水でした。
(ブラインドテストして他の小屋の水と飲み分けられたらたいしたもんだと思います)
この水のためだけに本日の朝日を逃さなくてよかったです。
水を入れ替えトイレをお借りしてから、再び下山開始。

と、思ったらまさかの登り返し。
う〜ん、なんか騙された気分です(笑)

蕾平で例の「野菜チップスご飯」を食べてみました。
拍子抜けするぐらい両方を足しただけの味になっており、感動も落胆もしませんでした。
そう言えば、蕾平という名前から「つぼみが散りばめられた湿原」をイメージしていたのですが、全然違うのですね。

う〜む、夜叉神峠はまだまだ遠い!

ひたすら下って行きます。

うっげ〜、標高が下がってきたら樹林帯じゃないと暑い!!
思わずズボンを短パン仕様に切り替え(チャックで裾部分を切り離せます、今回初めて切り離しました)、ザックから帽子を取り出してかぶります。

そして、樹林帯じゃないから見渡せたガスに覆われた南アルプス。
本日が下山日で本当に良かったです。

空気抵抗が減るわけでもないのに、前後を極限まで詰めて登山道の道幅いっぱいに蛇行しながら登ってくるオバサマ達。
せっかく脳内無限ループが止まっていたのに、今度は「バタンキューのテーマ」が脳内再生開始です。。。
ババッババ、バババババタンキュウ〜ゥ〜・・・・

いかにも尾根筋というところをダラダラと下って行きます。

夜叉神峠手前から眺めた南アルプス。
写真ではなんてこと無い山の眺めですが、汗が吹き出すぐらい暑い場所でした。
写真を撮ったらすぐに下山再開です。

程なくして夜叉神小屋に到着。(9:40)
ジュースとかアイスとか売っていたので足を止め、、、
ません。気合で素通りします。

この辺りは雨が多いからか苔が枝から垂れ下がっていました。
なかなか良い雰囲気です。
夜叉神小屋から夜叉神峠登山口までが案外長く感じ、「まだか!、まだか!、まだなのか!?」と思いながら下ること30分、、、

ついに登山口に到着しました!(10:15)
11日間に及ぶ縦走、ついに完了です!!

登り累計 700m
下り累計 1750m
距離12km
そして、無いと思い込んでいた「ご入浴」の文字をバス停そばの売店の看板に発見し、さらに大喜びです。
幸い、すんでのところでバスを逃して次のバスまで50分ほど待ち時間があったので、ゆっくり入浴できます。
すぐに売店に入って受付のお兄さんに入浴が可能かどうか確認すると、「ちょっと待ってくださいね」と、一度奥に消えてから戻ってきて、「大丈夫ですよ」と嬉しい返事。
どうやら、最近(2005年から)始めたサービスらしく、今回の縦走で出会った人に聞いて回った範囲では、ここの入浴サービスの話は誰も知らなかったみたいでした。
湯船は家庭用のものより少し大きな湯船という感じで、どこかの鉱泉を汲んできて沸かしているみたいです。
まぁ、今の私にとっては「泉質なぞどうでも良い」話なわけですが。
風呂場の鏡に映った真っ黒に日焼けして頬がこけまくって髭ボーボーの自分を見て、自分で驚いてしまいました。
(精悍な山男というよりは、お笑い番組のコントに出てくる「南の島からから帰ってきた兵隊さん」みたいな感じです)
風呂に浸かると、首の日焼けはさすがに滲みます。
同じく日焼けした腕は今日の下りでかいた汗が皮膚の下に溜まったのか、水ぶくれがポツポツと出来始めていました。
売店のお兄さんに心の底からお礼を言い、バス停に移動します。
ここで、ふと思うところがあって再び売店に戻り、受付のお兄さんに「忘れ物をしてないか脱衣所をチェックしても良いですか?」と、尋ねてみたところ、「私が今チェックしてきたところですけど、何もなかったですよ」とのこと。
人生、このぐらいの慎重さが必要なのです。
(私の場合)

定刻通りに甲府駅行きのバスがやって来ました。
芦安ぐらいまでは座席も空いていたのですが、一本前のバスに乗って温泉に浸かっていた人がたくさん居たらしく、そこで一気に満席になりました。

夜叉神峠から1時間ほどで甲府駅前に到着。(12時15分)
街中に入ってようやく繋がるようになったスマホで調べた「鳥モツ(B1グランプリ優勝)」のおいしい店を目指して歩き始めたのですが、甲府駅前は標高2000mぐらいで「あっぢーーー!」とブー垂れていた私には信じられないぐらいの灼熱の大地なのでした。
今朝、観音岳の山頂で冷たい強風に晒されて、完全装備で岩陰に隠れていたのが信じられない気分です。

そして頼んでみました、蕎麦と鶏モツ丼のセット!
長期縦走下山後いの一番という条件を整えてなお「感動的な旨さ」を感じなかったので、なぜB1グランプリで優勝したのか不思議でなりません。
(基本鳥は内臓含めて大好きなのですが、私はしょっぱい味付けが苦手ってのが原因でしょう)
あ、蕎麦の方は下山直後補正ありで感動的な美味しさでした!

その後、甲府駅から特急「かいじ」に乗って新宿へ。

今度こそ「さようなら〜、南アルプス」。
初日に加加森山でひっくり返ったこと、カマドウマだらけやら、鉄のドアがちゃんと閉まらないのやら、楽しい管理人さんが居たりと個性豊かな避難小屋の数々、強風の中ツェルトにシュラフ無しで過ごした夜のこと、ほとんど晴れまくった静かな山頂から眺める絶景、すごいとしか言い様が無い日の出に日没の光景、そして道中に出会ったたくさんの人々、、、
本当に一生の思い出に残る縦走でした。

全行程の断面図がこちら。延々と続くアップダウンの記録です。(ひたすら右に続きます)
そしてアップダウンのまとめ表

全11日間の総移動距離 140km、累計登り1万6500m、下りもほぼ同じ。
そりゃぁ、痩せるわけです。
特急列車を降り、せっかく新宿に来たのだからと、登山靴にザックという出で立ち(ついでに帰還兵風な風貌)のままオフィス街のど真ん中にあるペンタックスのサービスに立ち寄り、酷使しまくったデジイチとレンズを点検清掃してもらいました。
本屋さんで1時間ほど時間を潰してから受け取りに行くと、受付のスタッフさんが、
「ぎんがめさん、まず広角(唯一防塵防滴じゃないレンズ)の絞りがダメになってますね」
と、少しだけ予想していた宣告を受けます。
たぶん夜露や初日の雨でやられたのでしょう。
今年はカメラの故障もカバーする山岳保険に入っていたので、こちらは問題なしですので、笑顔のまま
「そうですか。では修理をお願いします」
と、答えます。
すると、笑顔だったスタッフさんの顔が少しだけ曇り、
「あと、本体なんですが、、、電子水準器が狂ってますね。2メモリ分ぐらいなんですが・・・。これもお預かりして修理しないとダメですね。」
と、衝撃の宣告をされました。
(今回アップした写真はこのことを思い出すために全て傾いたまま掲載しています)
ちなみに、「オムロン体年齢26歳」ということで、職場にヒゲも剃らずにそのままのルックスで意気揚々と出社したら、
「路上生活者みたい!」
「(腕の皮めくれが)汚い!」
と、特に女性の同僚やら上司から散々な評判でした。
縦走記は以上です!