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とりあえずカメラも治ったので、ガイドツアーが始まる前に受付に顔を出して水を買っておきました。

最初、試しに100ドル紙幣を出してみたのですが、案の定お釣りが払えないからと断られたので、コロンで支払いました。(400コロン、またもやコロンが減ってしまいました・・・)



さて、15時半からガイドツアーが始まるはずなのですが、すでにその時間は回っているにもかかわらず、受付前に肩にスコープを抱えて登場するであろうガイドさんが現れる気配がまったくありません。


私以外にガイドツアーの開始を待っている人すら居ない感じだったので、待ち合わせ場所を間違えたかと思い、近くを歩いていた若い白人の男性に「15時半から始まるガイドツアーについて何か知ってますか?」と、質問してみたのですが、「知らない」という返事が返ってきました。


受付の親切なおじさんに地図に15時半集合ってちゃんと書いてもらった上に何回も丸で囲ってもらったので、集合時間を間違えているってことは無いはずなのですが、一向に人が集まって始まる気配が無かったので、再び受付に顔を出しおじさんに確認してみます。


すると、「もうしばらくしたら始まるから、もうちょっと待っててね」とのこと。


なるほど、ガイドさんの到着が遅れているか何かで、まだ始められないみたいです。


そう解釈して、受付前のベンチに腰をかけて、ガイドツアーが始まるのを待ちました。



15時50分を過ぎた所で、目の前をアジア人の若い男の子が通り過ぎ、目があった所で、彼が話しかけてきました。


話しかけてきた言葉が中国語だったみたいなので、


「ごめん、中国語はわからないんだけど」


と、答えると


「あ、中国人かと思いました。韓国からいらっしゃったんですか?」


と、質問が来たので、


「いえ、日本から来ました」


と、答えました。(私は韓国人と間違えられることも多いですね)


「あぁ、そうでしたか。ところで、良いカメラをお持ちですね。あなたはカメラマンの方ですか?」


と、さらに否定せねばならない質問が来たので、日本人はカメラ好きなんだとおどけつつ、旅行中だということを伝えた所で彼は微笑みながら去って行きました。


彼が歩いて行った先にはいつの間にか若い子達がたくさん集まっており、彼もその中へと混ざって行きました。


彼は駐在の研究員の人なんでしょうか?


しばらくして、受付の親切なおじさんが首から双眼鏡をぶら下げて外に出てきて、


「遅くなりました。じゃぁ行きましょうか」


と、声をかけてきたので、このおじさんがガイドさん本人なんだとわかりました。



そういえば、壁に貼ってあった顔写真付き組織図によると、この方は上から2番目ぐらいのところにポジションされていたよなぁと思いつつ、


「すみません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


と、改めて尋ねてみると、


「ラファエルです。よろしく」


と、笑顔で答えが返ってきました。


早速ラファエルさんに一つ質問をします。


「このポスター(壁に貼ってあった夕陽か朝日をバックに大量の鳥が飛び立つ写真)みたいな光景を観たいんですが、何時にどこに行けば良いですか?」


「その光景ならこの建物の目の前で午後5時半頃見られるよ。でも、このガイドツアーはあそこ(指さしながら)の山の上から夕陽を眺めるから、ツアーに参加しちゃうと見ることはできないよ。どちらに行くかは君自身で決めてね」

とのこと。



う〜む、、、、

(考える事3秒)



「ガイドツアーに参加します」


「そう! じゃぁついてきて」



というわけで、ラファエルさんの後ろに着いて行きます。(16:10)


鳥が朝日や夕陽をバックに飛び立つシーンなら宮城の伊豆沼で見られますから、今回はガイドツアーを優先させることにしました。



参加者は私一人だけなのかとおもいきや、先ほどの若者グループも最終的に15人ぐらいに増えていて、我々のスタートにあわせてこちらに歩いてきて一緒に参加するみたいです。



どうやら、研究員ではなく彼らも観光客だったみたいです。


その中には先ほどの中国人の子と、最初に「ガイドツアー? 知らないなぁ」と答えた子も混じっていて、なんだかなぁって気分になりました。


さらによく見ると、最初に宿泊部屋を尋ねて、部屋まで付いて行ってしまった子も居ます。
若い男女だけじゃなく、数名私と同じ年ぐらいか、私よりも少し上ぐらいの年齢の人も混ざってます。(白人の方々って年齢がわかりにくいのですが)

いったい、彼らはどんなグループなんでしょう?


というか、若者が観光に来るにしてはここは渋すぎな場所だと思うのですが。


そんなことを思いながら歩いていると、ラファエルさんが話しかけてきました。


「えーっと、君の名前は・・・」


「ぎんがめです」


「そうそう、ぎんがめサン。どこから来たんだっけ?」


「日本の東京です」


「東京! 日本人は君で6人目ぐらいかなぁ」


「そうなんですか。少ないですね」


「君はどうしてここを知ったの?」


「ホームページで国立公園のことを知りました。宿泊についてはツアー会社の紹介です」


「どこのツアー会社?」


ゴジツアーズです」


「う〜ん、名前は聞いたこと有るよ。 ところで、日本からコスタリカまで飛行機でどのぐらいかかるの?」



なんて、話をしていたところで急に足を停め、上を指差します。



ありゃ、こんな施設の近くに猿が居たんですね。 ホエザル Mantled howler(Alouatta palliata


気が付きませんでした。

さすがに良い目をしてらっしゃいます。



超望遠も持ってきていたので使ってみました。

(日が落ち始めていたので、ちょいと暗かったのですが)




若い子たちの中には猿に興味が無いからか、友達とのおしゃべりに夢中になっている子もいます。



いや、それはともかく、蚊の多さが尋常じゃないです。


人数が多いので蚊も分散して集られる確率が下がるのかと思ったのですが、一人に軽く3匹は張り付いていて、彼らもしきりに蚊を叩いて殺してました。

私は蚊除け薬を塗っていてもなお何回か噛まれたのですが、すっかり抗体が出来たからか、ほとんど腫れもせず、痒くもならなかったので、途中から気にしないことにしました。





ここから山(小高い丘)に登っていくようです。


いつ、何が出ても良いように望遠レンズをつけっぱなしにしていたので、望遠画角の写真しか撮れません。




ラファエルさんが、


「動物たちを驚かさないように静かに歩いてください。あと、列が長くなり過ぎないように2列で歩いて欲しいので2人ずつペアになってください。あ、ぎんがめさんは私とペアーで」


と、余裕で一人ぼっちになりそうな私を気遣って、真っ先にフォローしてくれました。





というわけで、私はラファエルさんのすぐ後ろ、長い列の先頭について歩いて行きます。


珍しい生き物に会えた時にはまっ先に見られるラッキーなポジションです。





しばらく歩いた所で、ラファエルさんが突然



「ちょっと、ここで待っててくれる?」


と、言い残して先に歩いて行ってしまいました。



たぶん、動物がこの先に居るかどうか一人で確かめに行ったのだと思います。




5分後、戻ってきて肩をすくめたので、どうやら獲物が居なかったのだろうと判断して残念な気分になりました。

(静かにと言われていたので、この時質問しなかったのですが、いったいなにが見られたのでしょうか?)






そこからしばらく登った所で再びその場で待機するように指示されたので足を止めると、ラファエルさんは後方に歩いて行き、列の中央で何やら説明し始めました。




なるほど、ここで解説をするわけですね。


って、列が長いし、風の音がうるさいしでさっぱり聞こえません。



しかも、手前の子たちは話聞いてない感じだし・・・





というわけで、話が半分も聞こえなかったのですが、この一帯は乾季(今)はほとんど雨が降らず、これらの植物は乾季の間に落葉させるのだそうな。


なるほど、冬枯れならぬ乾燥枯れなわけですね。


乾季の間は東風が常に吹いていて、その間はカリブ海から吹きつける湿った風がコスタリカの中央を走る火山や山脈にぶつかって雨を降らせてしまうので、こちらに届く頃にはすっかり乾いているのだそうです。サンタエレナでも聞いた解説でしたが、場所が変わればここまで気象条件が変わるというのを文字通り肌で実感しました。


そして、雨季になると一斉にこれらの植物が芽吹き、それを目当てに昆虫が大発生、続いて捕食者がやってくると、、、


なかなか興味深いお話でした。



次の場所に移動するときに、後ろの小太りな子が声をかけてきました、


「ねぇ、一番先頭歩くの大変じゃない? 代わろうか?」


「いや、大変じゃないよ」


と、答えつつ、どうやら彼は先頭を歩きたいんだな、なら、そう言えばいいのに、と思っていたら、突然追い抜かされました。
(ついでに、その次に歩いていた年配の男性にも。二人は親子なんでしょうか?)



再びラファエルさんが説明を開始するときに、


「ぎんがめさん、こちらに来てください」


と、声をかけてくれたので、ラファエルさんの真正面で話を聞かせてもらいました。
話が聞こえなくて残念がっていたのを察してくれたみたいです。なんか、いろいろと気を遣ってもらってるみたいです。ありがたい話です。

(というか、中には自ら質問するぐらい熱心に聞いている人が居る反面、半分ぐらいの参加者があまりラファエルさんの解説に耳を傾けていなかったというのもあるのですが、だとしたら、なぜ参加したんでしょう? 動物でもたくさん見られると思ってたんですかね?)



ラファエルさんは一本の木の根本に行き、解説を始めました。


「これはブルセラシ(Burseraceae カンラン科)の植物で、この一帯を代表する植物です。Gumbo Limbo treeとか、Naked Indian Treeなどと呼ばれていますが、こんな感じで赤い皮が簡単にめくれるので・・・」


と、言いつつ幹を軽く手でなぞると紙のような樹皮がハラハラとめくれて風に舞います、


「TouristTreeとも呼ばれています。というのも、この木は海岸線沿いなんかの日差しが強いところに生えているのですが、そういうところに来る観光客の皮膚そっくりだからです」


と、ちょっと笑える小ネタから始めつつ、植物の生態について解説し、風や塩害などの悪環境に強く早く成長することから敷地の柵代わりや街路樹として利用されたり、森林伐採をしすぎてしまった地域を再生するために最初に植える木として利用されていたり、回転木馬の材料になったり、樹脂がニスや塗料、接着剤として利用されたり、お茶にしていろいろな病気に効く薬として利用されたりと、大活躍の木なんだと解説されていました。(と、思います、ほとんどは説明を聞きながら聞き取れた単語から帰宅後に調べ直しました)



いずれにしろ、大変勉強になる解説です。



そこから少し稜線風のところを歩いた所で大きな岩の前に到着しました。



ここを登るみたいです。





お〜、これはスゴイ!





視界いっぱい180度に広大な湿原が広がります。


そして、今、まさに日が沈もうとしています。



ラファエルさんもここでは特に解説することは無いからか、少し下がった所で微笑みながらこの景色を眺めていました。



到着直後は大騒ぎしていた若い子たちもそのうち静かになったので、こちらもゆっくりと景色を堪能させてもらいます。





あ、あれが宿前に居る鳥たちですね。





いよいよ日が沈んでいきます。










この旅で一番印象に残る夕陽かもしれません。(17:30)


いいですね〜、地球って。





完全に沈んだ所で宿に戻ることになりました。



若い子たちが足早に歩いて行ってしまったので、私は逆にゆっくりと歩いて静かな雰囲気を楽しみながら帰ることにしました。





つづく