今年は10年に1度と言われる紅葉の年。(ちなみに私はこのフレーズを好んで使ってますが、これは気象庁などが公式に言ってるわけではなく、とある山小屋の主がブログでそう書いていたので、それをそのまま真に受けて使っているわけです。でも、実際にそうだと思いますし、今回もそれを証明する旅になりました。検索すると今年は立山を中心にそう言われているみたいですね)
下ノ廊下の紅葉はただでさえ素晴らしいのですが、それが今年はどんな感じになるのか見てみたく10月ぐらいから狙っていたのですが、なんせ今年は例年より紅葉の始まりが遅く、中間地点の阿曽原小屋は10月末で営業終了してしまい、きっかけを掴めないまま11月になってしまいました。
ウェザーニューズの紅葉情報で黒部渓谷が「見頃」に切り替わったのと週末の気圧配置を確認し、テン泊装備なら小屋が営業終了でも問題無いだろうと判断してチャレンジしてみることにしました。
下ノ廊下は過去に2回行っていて、最初の時は体力温存のためロードスターで行って民宿前泊、ところがこれが仕事が終わってから長野に向かうと民宿の主に夜中まで起きて待っててもらわなければならないのと、実は下ノ廊下は前泊して温存して置かなければならないぐらい体力が必要ではないということが1回目のチャレンジで判明し、2回目の時はロードスターで車中泊。
そして、下ノ廊下を2回歩いてつくづく思ったのが最後のロードスター回収の大変さ。ゴール地点の富山県欅平駅から車を停めた長野県信濃大町駅までは直線距離にして約30kmほどしか無いにもかかわらず、北アルプスを主にマイナー路線を使って日本海周りで迂回するために7時間前後もかかってしまうのです。加えて欅平駅にはけっこう早い時間に到着せねばならず、2日目の行程はどうしても慌ただしくなります。
というわけで、今回のチョイスは電車で行って野宿。
いや、普通に宿を取ればよかったのですが、過去の登山記録を探したら「信濃大町駅で20人ぐらい寝ていた」という記録を発見し、どうせ信濃大町駅に着くのは最終列車で深夜0時ぐらいだし、それならそれでも良いかと気軽に決めた次第。
というわけで、民宿前泊 → 車中泊 → 駅で野宿 と、歳を取るとともに旅のグレードが下がっていくという不思議な現象になってます。

まずは
「♪8時ちょぉ〜どの〜あずさ33号でぇ〜、私は私は新宿から、
アン、
た・び・だ・ちぃ〜ますぅ〜」
と、いったい何人のおじさんが心のなかで歌ってるんだろうと思いつつ、新宿駅を出発。

松本駅(待ち合わせ室がなくて寒かった!)から最終の普通列車に乗り換えて、信濃大町駅ひとつ手前の南大町駅で降ります。(列車が遅れて0:05)
というのも、南大町駅前にはセブンイレブンがあって、ここで食料を調達したかったからです。(信濃大町駅から最寄りのコンビニは南大町駅とほぼ同じ距離ぐらい離れたところにあります)
いや、しっかし寒い!(この日はこの秋一番の冷え込みを記録した日でした)
宿の予約を取って来なかったことを少しだけ後悔しつつ、でもまぁ駅舎なら少しぐらいは暖房の暖かさが残ってるんだろうと期待しつつ信濃大町駅まで歩いていきます。

って、中に入れないように鍵がかかってる!!(0:30)
ぎゃぁぁぁぁ、野宿決定!!(読んでる人は意味不明だと思いますが、素直に想定外な驚きの気持ちです)
こうなることをまったく想定していなかったので、慌ててすぐに駅近くの寝られそうな公園を探し始めます。
一箇所駅近くで見つけた東屋は向かい正面にカラオケ屋さんがあって、そこはまだ営業してます。
酔っ払ったお客さんが店内から出てきて真っ先に寝てる私を発見したらどうするだろう?と、想像してそこはパスしました。
しばらく付近を探したのですが、あんまり探しても駅の近くに良い場所があるとも思えなかったので、予め目をつけていた駅の脇にあった大きな駐車場の端っこに停まっていたバスの陰で寝ることにしました。
バスの下も考えたんですが、万が一寝てる私に気づかずに方向転換しながら発進されたらヤバイと思い、運転手がバスに乗るときに嫌でも目に付く場所で寝ることに決めました。
とにかく寒いので持ってる服は全部着こみ、マット(1mの長さしかありませんのでお尻まで)敷いて寝袋に加えて寝袋カバーまで投入してから横になりました。
寝袋のチャックを内側から閉めるときに「ピシ!」っと腕に痛みが走り、せっかく治りかけていた腕の筋違いが再発、、、腕が痛くて仰向けで寝られなくなってしまいました・・・・
横になれば痛みは治まるのですが、その体制だと寝袋に隙間が開いて保温力が生かせないらしくかなり寒いです。
まぁ、でも寝るしかないので目を瞑って眠りに落ちるのを待ちました。
目を開ければ頂上付近に明るい月が輝いてます。(あまりに寒くてシュラフを完全に閉じているので、それを指で開けないと月は見えませんが、たまに見てました)
時折駐車場に車を回収に来た人の話し声やエンジン音が聞こえ、ライトの灯りがこちらを照らしたりしますが、バスの死角に隠れているのできっと見えてはいないはずです。
酔っぱらい集団の話し声が近くで聞こえたときは祈るような気持ちでしたが、幸い見つかることはありませんでした。
これまで野宿は1回だけしたことがありますが、屋根のない場所で寝るのは初めてです。
そんな43歳になって最初の週末の夜でした。(1:00am)
11月03日(土)
そして、それでも普通に寝られる自分に内心で笑いつつ朝5時半に起床。
目覚ましはもう少し遅い時間にセットしていたのですが、電車の動く音や駅からアナウンスの声が聞こえてきたので起きました。

すぐにパッキングしなおし信濃大町駅に向かいます。
すでに暖房の効いた待ち合わせ室が開放されていて、そこで昨日の夜に買ったおにぎりを頬張りようやく一息つきました。
まだ待ち合わせ室にはほとんど人が居なかったので暖房の温風で夜露で濡れたシュラフを乾かさせてもらい、しばらくすると扇沢行きのバスが到着したみたいだったので駅前のバス停に移動しました。(6:15)

チケットを買ってバスに乗り込むと、乗客は私含めて4〜5人といったところ。
黒部アルペンルートのほとんどの部分の紅葉も終わったということもあり、お客さんは大分少ないみたいです。
下ノ廊下に行きそうな装備を持っている人は・・・・、
居ません!
ありゃ、もしかしたら私ひとりですかね。
バスが信濃大町の街を抜けて田んぼ地帯に突入すると、霜で真っ白になってます。
いやぁ、どおりで寒かったわけです。

正面の北アルプスは雪をかぶって真っ白になっており、朝日を受けて輝いています。
なんか朝っぱらから濃厚なガスをまとっているのが気になりますが、今日の行程は実は直射日光があんまり当たらないほうが都合が良いので気にしないことにしましょう。(谷が深いので晴天だとどうしても日の当たる部分と影ができてしまい、目で見るぶんには岩や紅葉の木々が輝いて良いのですが、光のコントラストが強すぎて写真には見たとおりにさっぱり写らなくなってしまいます)
紅葉を楽しみながらバスに揺られ、トンネルを抜けるとそこには、、、

雪景色が!
げげげ、この標高(1400m)まで雪が降ったんだ!
と、焦る気持ちのまま扇沢駅に到着。
係員に今積もってる雪について尋ねた所、木曜日に降ったものだそうな。
ここより少しだけ標高の高い黒部ダムやそこから徐々に下っていく下ノ廊下はどんな感じなのでしょう・・・
周りを見渡してみると扇沢に泊まっていたであろう観光客が数十名、そのうち登山者が10名弱、私と同じバスにかろうじて下ノ廊下に行けるかもという装備の方が1名居たので、どうやら今日歩くのは私ひとりってわけではなさそうです。
その私と同じバスに乗っていた50代ぐらいの男性の方に
「今日は下ノ廊下ですか?」
と、声をかけてみると、
「そうですよ」
とのこと。
どう見ても山小屋装備風なザックの大きさなのですが、どうやらテント一式入ってるみたいです。
コンパクトなウルトラライト系ってわけでもなさそうですし、どんな装備なんでしょう?

そうこうしているうちにトロリーバスの乗車時間が近づいてきたので列に並びます。
こんなタイミングでウエストポーチのバックル無くした騒ぎで一人でパニクってたんですが、実は片方のバックルの紐が外れただけでバックル自体はちゃんと反対側に付いてました。(って、文章で書いても意味不明だと思いますが、どこかで落としたと思ったらちゃんと付いていたという話です。落としたと思い込んでいたので前の方に並んでいたのを放棄して四方八方を探しまわってました)
トロリーバスは3台体制。(乗客トータルで50名弱ってところでしょうか)

黒部ダムに到着し水を補給して準備を整えます。
トロリーバスは扇沢から黒部ダムまでトンネルの中(北アルプスの真下)を走ってきますので外界の様子はさっぱりわかりません。
さて、黒部ダムの積雪状況はどんなもんなんでしょう・・・・

って、いやぁ〜、真っ白!!
これ、行けるのか!?
と、思っていると同じバスに乗ってきた50代の男性は躊躇すること無く下ノ廊下へと下っていきます。
さらに男性が2名続きます。
行けるんですかね?
というか、すでに3人行ったわけですし、凍ってたりしてダメそうだったら引き返すつもりで私も出発することを決めます。
下ノ廊下ではスケール感を記録するために誰かに前を歩いてもらって被写体になってもらいたいので先行した3人の後ろに付いて行けば良かったわけですが、まだ8名ほどスタート地点に居たので、その中の私と同じぐらいの年齢の男性2人組がスタートするのを待ちます。
ところが様子をうかがってると、どうやら2人組ではなく8人で一つのグループの様子。
メンバーには若い女性から年配の方も居て、こりゃぁ前を歩いてもらうにもペースが違いすぎるなと予想して、慌てて先ほどの3人を追いかけて出発しました。(8:00)

3人からすでに5分ぐらい遅れてるのですが、追いつけるでしょうか?
雪は幸いそれほど積もっておらず、凍っても居ない様子で一安心。
それでも気を引き締めてすっ転ばないように慎重かつ良いペースで黒部ダムの下まで下って行くと、、、、

ちょうど川を渡るところで2人組に追いつきました。
って、彼らのザックは10Lサイズ。
しまった、下ノ廊下組じゃなかったか・・・・

黒部ダムに別れを告げて、先行したおじさんを追いかけます。

基本ガスってはいますが晴れ間も見えてます。
天気はばっちり。あとは紅葉がどんなもんかです。

お〜、雪と紅葉で綺麗!!

昨日もそれなりに歩いた人が居るらしく、登山道の雪はまったく問題ないみたいです。

35分ぐらい歩いたところでおじさんに追いつきました!
これで被写体確保です。
というわけで、ここから「写ってます」と書いてある写真にはおじさんが写ってますので探してみてください。

雪と岩と紅葉と柔らかい陽光の組み合わせが最高です!
いやぁ、来てよかった!(写ってます)

おじさんは私の巡航速度より少し遅いぐらいだったので、距離を開けたり詰めたりがしやすく、ちょうど良い感じです。
(写ってます)

いや、しっかし素晴らしい!
(写ってます)

おじさんが休憩体制に入ったので、私も15mほど後ろで休憩を取ります。
ちょうど歩き始めてから1時間半といったところでしょうか。
ここからしばらく自分用の写真集なのでコメント無しで掲載します。(コメントも「素晴らしい!」とか「ブラボー!」とかしか書けませんし実際道中では絶叫しっぱなしでした)

写ってます
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写ってます
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ここ、道が崩落していて高巻き出来るように整備されているのですが、先行するおじさんが崩落地帯を突破してしまったので、私もそれに続きました。
(写ってます)

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やはり空と一緒には写せないですね。

写ってます
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別山谷出合(10:45)

写ってます
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いよいよ核心部(ルート中の一番難しい箇所、本来はクライミング用語)に入って来ました。
(写ってます)

振り返ったところです。
谷の方角が変わったので太陽光線とお別れです。(この後本格的にガスってきたので、これが本日最後の太陽光線でした)
ここでおじさんが2度めの休憩を取ったので、近寄って挨拶して後ろから写真を撮ってることをお伝えしました。
前から疑問に思っていたおじさんの装備の件ですが、おじさん実は欅平まで今日中に一気に歩き通すつもりだとか。(一応キャンプ装備は入ってると言ってましたが、もしかしたらツェルトレベルかもしれません)
欅平に明るい時間に到着するのはこのペースでは100%不可能だと思ったのですが、おじさんは山慣れしてそうでそんなことはわかってそうだったので、あえて口には出しませんでした。
ちなみに、おじさんは比較的私のご近所にお住まいの方でした。

ここからがいよいよ下ノ廊下の本領発揮です。
道幅がいよいよ狭くなり慎重さが要求されますが私の大好きなエリアです。
(再び以下写真集です)

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つづく