その22
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そうこうしているうちに彼の仲間が2人ほどやってきて「水は必要ないか?」と言うので、「冷えた水があるの?」と尋ねると、「あるよ」とのこと。
200KShだと言うので支払うと、ちょっと待っててと言い残してどこかに歩いて行ってしまいました。
10分後ぐらいに冷えた水(1リットル)を持ってきたので、もしかしたらサンブルロッジか管理事務所(ヘッドクォーター。キャンプ場の近くにあります)ま
で買いに行ってたのかもしれません。(いわゆる使いっ走りというやつです)
水はすぐに魔法瓶に移しておきました。
ちなみに水を買ってきてくれたおじさんは「ガイドもできる」と言っていたのですが、やはり自力で動物を探したかったのでそれは断りつつ、ネコ科の動物はど
の辺で出会いやすいか訪ねてみました。
おじさん曰く、川沿いを中心に探すのが確率が高いとのこと。さらに、具体的にヒョウがねぐらにしている木がある場所も教えてもらいました。
おじさんにお礼を言ってから早速出発します。
するとキャンプ場の近くに管理事務所(ヘッドクォーター)があったので、情報収集のために立ち寄ってみることにしました。
敷地内には女性のレンジャーさんがひとりいて(あとは先ほどのマック君の仲間と思わしきサンブルの住民の方々)、地図が入手できないか訪ねてみると、
ちょっと待っててと言い残して事務所の中に入り、5分ほど後に出された答えは「申し訳ないんだけど、今地図を切らしています」とのこと。一生懸命探してく
れていたのでしょうか。
彼女曰く18時にサンブルロッジの売店が開くらしいので、その時に行けば買えるらしいです。
18時以降は宿泊施設の外を走っちゃダメなんじゃないかと確認してみると、そういう事情なら18時15分ぐらいまでは外を走っても問題ないでしょうとのこ
とでした。
ついでに先ほど見た小さなレイヨウについて尋ねてみたところ、「ディクディクでしょう」とのことで、名前がようやく判明しました。
さらに猫科の動物の居場所を尋ねたのですが、毎日居場所が変わるのでわからないとのこと。
まぁ、そりゃそうですね。
では行ってみましょう!(15:00)
この大きな水たまりを避けて探していたせいでキャンプサイトと管理事務所を見つけられなかったのでした。(実際に走ってみると全然泥濘んでません)
2つ目の分岐のところの看板が成長したブッシュに隠されていたのも痛かったです。
おじさんに教えてもらったとおり、川に近いところに伸びる脇道を中心に動物たちを探しながら走っていきます。
時には本当の川沿いを走ることも。
砂が急に柔らかくなってスタックしないかヒヤヒヤです。
奥へ奥へと進んでいくと、草が盛大に生えていたり水たまりが深かったりで、なかなかの探検ドライブになります。
目の前の道路状況に気を使いつつ、ヒョウが休んでいそうな樹の枝やライオンやチーターが休んでいそうなブッシュの木陰も確認しながら走っていきます。
あ! 何か居た!
って、サバンナモンキーか・・・
とまぁ、このぐらい小さな動物ですら見落とさない勢いで走っているのですが、ちっとも出会えません。
まぁ、弱肉強食のヒエラルキーで言えば、肉食動物は絶対数が圧倒的に少ないから、そう簡単に会えないんですけどね。
幸い、ここには草食動物含めて日本では出会えない動物がたくさん居るので、ネコ科は会えたらラッキーぐらいにして、もっといろいろゆっくり観察しながら走ることにしましょう。
というわけで、こんな鳥でも止まって観察してみます。(テリムクの仲間)
Greater Blue-eared Starling (Lamprotornis chalybaeus)
写真だとわかりにくいんですが、青緑に輝く綺麗な鳥だったりします。
けっこうあちらこちらに居ました。
草を食むインパラ達。
群れのリーダーのオス(体格が大きくて立派なツノが生えている)は常にこちらを警戒していて、群れと私の間に位置取るように動いていることがわかります。
小さな水たまりでじゃれ合っていた若い2匹の象。
さらにもう一匹加わって楽しくじゃれあってます。
しばらく微笑ましく見ていたのですが、「じゃぁ、そろそろ行こうかな」と車を発進させると、慌てて遊ぶのをやめて・・・・
こちらに向かって「ア”オ”ーーーーーーーン!」と大きな声で鳴いて文句を言って来ました。
ちょっとこちらに向かって来る素振りも見せたので、まじめにびっくりしました。
さすが野生動物。
私の時はここまでじゃなかったですけど、追いかけられたら相当おっかないでしょうね。
遠くをゆったりと移動していくキリンの群れ。
スローモーションのような動きに目を奪われます。
半砂漠地帯(だそうです)のブッシュの中を進んでいきます。
道路上に居たハチクイの仲間。
一旦川沿いを離れてメインロードで東へ移動。
そういえば、サンブルにはオリックスが居るって聞いてたんですが、まだ見かけてないですね。
って、あれ、オリックスじゃないですかね?
あ! 本当にオリックスだ! East African oryx (Oryx beisa),
我ながらすごい霊感というか運が良いです。
(実際にはオリックスはそれなりに居て出会うのは難しい動物ではないと後で気が付きましたが)
そういえば、帰国後に知ったんですが「サンブル5」というのがあるらしいです。
アフリカのゲームサファリではビック5といって、撃ち損ねると反撃を食らって危険という動物が5種類い
て、それはライオン、ヒョウ、象、バファロー、サイなんですが、今でもこれらの動物を全部見て写真に収めたいという人は多いみた
いです。
そしてサンブル5はケニアで珍しいと言われているアミメキリン、ベイサオリックス、グレビーシマウマ、ゲレヌク、ソマリダチョウなんだそうです。
というわけで、ここでベイサオリックスに出会えたことでコンプリートしたことになってました。
お!イボイノシシ!Warthog (Phacochoerus africanus)
こちらも数が多いと聞いていた割には前回の南アフリカ・ナミビアドライブでは出会えなかった動物だったので、一度見てみたかった動物でした。
意外にでかいんですね〜。
臆病で近寄れないらしいので、至近距離で見られたのはラッキーでした。
もちろんすぐに逃げて行きましたけど。
続いてソマリダチョウです。
入園直後に会ったのと同じ個体かもしれません。
遠くで草を食むグラントガゼル。
そういえば周囲の地形に目を向けていませんでしたが、近くや遠くにある山容もなかなか見応えがあるものでした。
お、サファリカーが2台止まってますね。
これは珍しい動物の予感!
しかし、目線の先には象たちが草を食んでます。
いや、象はこれまでにいくらでも居たし、まさかこのタイミング(夕方)になって象を見るためにわざわざ停まってるってのも考えにくいし・・・
というわけでドライバーさんに挨拶しつつ車を寄せて停めて「何を見てるんですか?」と半分期待を込めて質問してみます。
返ってきた答えは一言。
「エレファント」
ですよね。
というわけで、私も1枚記念撮影。
後ろの座席で立って撮影していた白人のお兄さんに「今日は何を見ましたか?」と、質問してみると、
「キリン、象、キリン、象、キリン、象・・・」
と、いう答えが返ってきてちょっと笑ってしまいました。
たぶんガイド兼運転手さんがそれしか見せてあげなかったんでしょうね。
皆さんに挨拶してその場を後にします。
草原を並んで歩いているのはゲレヌクですね。
他人のサファリカー体験記を読んでると、小型の草食動物は見飽きちゃうお客さんが多くてパスされる可能性が高いらしいので(だから象とキリンばかりになるんだと思います)、小型のレイヨウも心ゆくまで眺めたい私はそういう意味でもセルフドライブが好きなんです。
お、ゲレヌクの親子です!
警戒心が強く、常にこちらを注視している個体が多いです。
あ! 立ち上がって食べてるシーン発見。
これを見たかったんです!
いや、しっかし、すごい筋肉ですね〜。
うーむ、インパラですらまだ木陰に居るってことは、ハンティングの時間はまだまだ先ですね。
最初は出会うたびに喜んでいたディクディクですが、意外にたくさん居ました。
写真では1匹だけ写ってますが、ペアで居ることが多かったです。
フサホロホロチョウです。(Vulturine Guineafowl (Acryllium vulturinum))
ボゴリア湖国立保護区で地面を駆けまわっていたホロホロチョウの親戚ですね。
こちらは道路にたくさん居たシロクロゲリ。(Blacksmith Plover (Vanellus armatus))
ようやく写真に収められたアラゲジリス。(Unstriped Ground Squirrel (Xerus rutilus))
これがまた予想外に臆病で、近種のケープアラゲジリスと違って、逃げること逃げること。(カラハリTNPでは人を全然恐れずおじさんくさい生態を見せてくれていたので、今回も再会を楽しみにして
いたのですが・・・)
地元の人々が狩猟対象にしてるんですかね?
ここはキャンプサイトに居たおじさんがヒョウによく出会えるよと教えてくれたポイントなのですが、インパラが水を飲みに来ていました。
だからこそヒョウの狩場になってるのでしょうが、彼らのリラックスぶりを見ているとヒョウが近くにいる気はしなかったので、少し見物してから移動を開始し
ました。
すると、水を飲み終えたインパラ達がこちらに歩いてきて、目の前の道路を渡り始めます。
車の前を渡るのは勇気がいるらしく、一番度胸のある固体が1頭駆け抜けた後、それに続いて次々に駆けていきます。
これは別の群れですが、メスと子どもの大きなコロニーに立派なツノを持つオスが一匹(左)。
随分頭数の多い立派な群れで見応え充分でした。
というわけで、もうそろそろサンブルロッジに戻らないとまずい時間になってしまいました。
まだまだ明るいしようやく動物の動きが活性化してきたので日没まで探検していた気分ですが、そういうルールなのでサンブルロッジに向けて車を走らせます。
サンブルロッジに到着すると、売店がまだオープンしていなかったのですが、近くに居たスタッフに事情を話すと特別に入り口を開けてくれ中に置いてあった地図をようやく買うことができました。
450KShなり。
これで明日は地図を参考にあちこち探検できそうです。
って、中を開いてみてみてびっくり。
メインロードと主だったサブ道路がちょろっと(しかも手書きでかなり適当に)書かれているだけで、地図としてはほとんど役に立たないシロモノです。
まぁ、旅の記念品と思えばいいやと返品はせずにそのまま持ち帰ることにしました。
サンブルロッジからキャンプサイトに移動する途中、道路脇にいくつか大型のテントが並んでいるのを発見。
どうやらマック君たちはここで暮らしているようです。
キャンプサイトに戻るとマック君含めて3人ぐらいでテントを見張ってくれていました。(18:10)
大きな地図で見る
本日の走行ログです。
私が到着すると同時に焚き火を起こしてくれます。
奥にもう一箇所同じように薪が置いてあるので、もしかしたら私以外の宿泊客が居るのかもしれません。
右がマック君、左がヒョウの居場所を教えてくれたおじさん。
せっかく地図を入手したので、これを使って2人に改めて動物たちの居場所を教えてもらったのですが、マック君いわくこの地図はロッジの記載場所すら間違ってるとか。
まったく使えない地図で笑ってしまいました。
そういう意味では、日本から持ってきたガイドブックの地図も酷いもんでしたし、期待してなかったロンプラの地図が(細かい間違いはいろいろあるものの)一番まともでした。
それはともかく、おおよそ草食動物やそれを狙うネコ科の動物が多いエリアがわかったので良かったです。
あと、すぐ側を流れるエワソニイロ川にはワニが居るので近づき過ぎないようにと注意を受けました。
日本ではありえないワイルドなキャンプサイトです。
さて、暗くなる前に夕飯の支度をしますか。
って、タイミングでもう一台四駆がキャンプサイトに入って来ました。
なるほど、それで薪が2箇所準備されてたんですね。
中から若い白人男性が2名降りていて、彼らもテントを張ったり夕食の準備を開始したのでこちらから声をかけてどこから来たのか訪ねてみると、ロシアから来たとの
こと。
旅先でロシア人と会ったのはこれが初めてです。
ちょっと興味が湧いたのでなぜケニアを選んだのかと質問してみたところ、「飛行機のチケットが安かったから」とのことで、それは私とまったく一緒の理由で
した。
まぁ、皆さんそんなもんなんでしょう。
そうそう、暗くなる前に夕食の準備をせねば・・・
周囲には昼間に見かけたヒヒではなくサファリモンキーがうろちょろしています。
まぁ、このサイズなら人間を襲うなんてことはないだろうと思っていたのですが、、、
そこはお仕事、マック君が近づいてくるサファリモンキーをパチンコで追い払ってくれます。
マック君曰くサルたちはこの辺の大きなアカシアの木の上で寝るらしく、彼らが一度上に登ってしまえば後は問題ないとのこと。
なので、近寄ってくる猿だけ追い払ってもらい、しばらくすると周囲には一匹も見当たらなくなりました。
それぞれにどこかの木の上に登ったのでしょう。
個人的にはそこまで大仰にしなくてもいいんじゃないかと思いました。
カレーが出来上がったので美味しく頂きます。
ケニアのキャンプサイトで焚き火にあたりながらカレーを食べるなんて想像だにしてませんでした。
なかなか良い雰囲気です。
猿だけでなく食べ物のおこぼれを狙ってか鳥達も集まってきていました。
人馴れしているらしくまったく逃げていきません。(行動パターンとしては都会に暮らすカラスみたいな感じ)
これも今日走ってる時によく見かけた鳥ですが名前がわからなかったのでマック君に名前を教えてもらったところ「ホーンビル」とのこと。(セグロコサイチョウ Von
derDecken's Hornbill (Tockus deckeni))
私がカレーを食べ終わると、マック君たちは「おやすみ〜」と言い残して、自分の寝場所へと帰って行ってしまいました。
てっきり彼らが焚き火に木をくべながら象の襲来から守ってくれるもんだとばっかり思っていたので、ちょっと拍子抜けすると共に、まぁキャンプサイトでは静かに落ち着い
て過ごしたかったので「ま、いっか」と思いました。
ということは焚き火の管理は自分でしないとダメなんですね。
準備してくれた薪は焚き火用に切りそろえられたものではなくその辺りで拾ってきた生の長い木なので、くべ方に工夫が必要です。(それがまた楽しかったりするわけですが)
蚊が飛び始めたのでスコーロンのジャンバーを着て蚊取り線香も炊いて風上に置いておきます。
なんだかんだでスコーロンのジャンバーを着てると妙に安心します。(効果の程はわかりませんが、今のところ一発も刺されてません)
暗くなる前に地図を取り出し、ロシア人の二人に今日見た動物と場所を尋ねてみました。彼らは遠くにヒョウを見たらしいのですが、保護区内をかなり適当に走っていたの
で見た場所はよくわからないとのことでした。
(さらに見せた地図の記載が適当すぎて明らかに混乱してました)
もし、ロシア人の二人組が居なかったら本当にここで一人っきりでキャンプすることになったんですね〜。
手前が私の焚き火、奥がロシア人二人の焚き火。彼ら
のくべ方は体格通りなかなか豪快でした。
私はパズルを楽しむようにあれこれ工夫しながら燃やしてました。
一人っきりになれなくてちょっと残念といえば残念、安心といえば安心という感じです。
マック君たちはまったく顔を見せなくなりましたが、代わりにレンジャーさんが巡回に来てくれました。(30分〜1時間に一回ぐらい)
彼らはちゃんと自己紹介までしてくれ、動物の居場所もあれこれ教えてくれ、なぜか明日の出発時間まで確認されたので、その時間に巡回に来てくれるか何かだ
ろうと 思って6時に出発しますと答えておきました。
レンジャーさんから「君はナイロビから来たの?」と質問され、「いえ、日本からです」と答えたら驚かれました。
やはり、日本人でこんなところにレンタカーで
来てキャンプする人は珍しいみたいです。(ナイロビ駐在の人だと日本人でもたまに来るらしいですが、普通はロッジに泊まるのでしょう)
ロシア人の二人組は20mほど離れたところで机を置いて椅子に腰掛け酒を飲みながら何やら話し続けています。
なので、まったく静かって
わけじゃないんですが、焚き火のすぐ横に大きな石を置いてその上に座り、焚き火のパチパチと鳴る音を聞きながら炎のゆらめきを眺め、風向きによっては煙にまかれつつまったりと時間を過ごします。
焚き火の明るさで本も読めるので、明日以降の行動計画を立てたり本を読んだりして時間を過ごします。
こういうのも良いもんですね〜。
周囲を少し歩いて星空を眺めてみたんですが、月明かりが明るすぎて満天の星空って感じではありませんでした。
22時頃になってロシア人の二人組も寝てしまったので、いよいよ音のしない世界になりました。
動物たちも寝てるんですかね?
しばらくすると、突然、
「ア”オ”ーーーーーーーーン!」
と、象の鳴き声がすぐ近くから鳴り響きます。
えっと、この鳴き声の大きさからしてそんなに距離が離れていない気がするんですが(せいぜい30mほど?)、まさかこっちに来ないですよね?
マック君たちにお金を払ったのは何のためだったんだと内心で思いつつ、焚き火の火勢を気持ち大きくしました。
(帰国後に調べたら焚き火は効果無いらしいです)
サンブル国立保護区は南アフリカで体験してきた国立公園等と比べて大らかと言うかなんというか、雰囲気がぜんぜん違います。網目のように伸びる未整備な脇道含めて「むき出しの自然」にガン
ガン飛び込んでいけるのが魅力ですし、一方で柵すら無いキャンプサイトで何か間違いがあったらどうするんだろうという不安もあります。
お国柄の違いでしょうか。
数分後にレンジャーさんが巡回に来たので、「今、すぐそこから象の鳴き声がしたんですけど!」と興奮気味に報告すると、
「ア”オ”ーーーーーーンって感じ?」
と、笑いながら象の鳴き声を真似してくれたんですが、なかなかお上手でした。
その話っぷりからして、そんなことはたいした問題じゃないし、それがここの日常なのだと言われてるようで安心しました。
その後もしばらく本を読み、眠たくなった所で寝ることにしました。
テントの中はそれなりに暖かくて、寝袋は必要ない感じです。(気温19度)
寝袋は布団代わりにして軽く体にかけて寝ました。
今日は楽しい一日でした。
おやすみなさい。
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