初日
最終準備をすませ、朝9時頃ぼちぼちと家を出発。
ラジオからは東京から脱出するあらゆる高速道路が渋滞していることを伝えてくる。
ならばということで、下道で相模湖あたりまで抜けることを計画するが、これが完全に裏目に出る。
←逃げ場のない峠道で動かなくなってしまった。
恐るべし民族大移動週間。
やっとの思いで高速に乗り、松本を目指してひた走る。
松本インター降りてすぐのところに1日300円で車を預かってくれる駐車場がある
ので(ただし登山用のバス利用者のみ)
そこに車を置いて、いったん松本駅へ移動。

そこから大糸線に乗って大町まで電車の、のんびり旅。
ここまで来たらすでに夜18時だった。たかだか長野に来るぐらいで9時間もかかるとは思わなかった。
駅前で相乗りタクシーを申し込み、民宿の紹介を受け(あやうく民宿も満杯で路頭に迷うところだった。予約しておけよ俺)、なんとか今晩の宿を確保。
コンビニでおにぎりを購入し、本日は早めに就寝。(夜11時)
2日目
翌朝は4時30分起床。5時に大町駅集合。
そこで相乗り相手と一緒にタクシーに乗り込み30分山道を走って登山口まで移動。

朝6時、ガスる北アルプスの山々を眺めながら、いよいよ登山スタート。
ここは北アルプス三大急登に数えられるところで、標高差1200mを標準タイム5時間かけて一気に登る道。
コンビニで買っておいたおにぎりをエネルギーにして、息を切らしながら登る。

死ねる〜

やっとの思いで標高2500mの稜線に出る。
山小屋でジュースを買って一気に飲み干して生き返る。
さて、行くか!
ここからは楽しい稜線歩き。

花畑を楽しんだり、雪解け水で喉を潤したり、楽しい時間がすぎる。

野口五郎岳小屋に到着したのが昼の3時。(この山の名前は、例の歌手に由来してつけられたのではなく、野口集落そばにある、石がゴロゴロした山だからです。今wikipediaを見たら、例の歌手は岐阜県出身で、飛騨山脈のこの山から芸名とったそうです。
今回はこれと良く似た名前の黒部五郎岳にも行きますが、名前の由来は同じです。で、例の歌手の芸名の候補に挙がっていたそうです(笑))
ここは風が強く幕営(テント)禁止になってしまったので、強制的に小屋泊まり。

鳥海山とちがって、ちゃんとした夕食ですよ!!
布団もひとり一枚で(お盆で混むときは、布団一枚に2人おしこまれたりするのが山小屋です)
助かった。
夜9時、就寝。
3日目
朝4時起床。

小屋の朝食は朝4時半。おいしくいただき、水を1リットル200円で分けてもらい朝
5時前に出発。
おいかけるように朝日が昇ってくる。

野口五郎岳の山頂で朝日を拝む。360度すばらしい景色で感動。

朝日と反対側の山々にも陽が当たりはじめる。今日も快晴!

水晶岳を目指して歩き始める。(この名前にピンと来た人いますでしょうか?
今年の4月に作業用のヘリが墜落した山です)
昨日の登りで使った筋肉が早速悲鳴をあげはじめる。
途中水晶小屋で水を補給し、パンを購入して軽く燃料補給。

そこから一登りしてようやく2986mの山頂に到着。ここも360度の眺望で、気持ちのよい時間を過ごす。
景色を堪能した後、さらに先に進む。

遠くに黒部ダムが作り出した湖を望む。
さて、ここからショートカットコースで一気に標高2070mまで一気に下って高天原
へ向かう。
これが、ここまで悪路だとは予想してなかった。。。

ガレガレ(小石が浮く)痩せ尾根を谷底目指してどこまでも下って行く。滑って転ばないようにするために、余分な筋肉を使うはめになる。(というか、一回盛大に転んだ)
途中で弁当を平らげて、やっとの思いで河原に到着。
しかし、この悪路はここで終わりではなかった。

地図上では今度はどうやらこの河原を下って行くことになる。登山道らしくものは見当たらない。(このショートカットコースは標準の登山道では無いのです)
ぐらぐら石が転がる岩の上を延々と下って行く。何回も川をわたりながら。。。
そして、ヘトヘトに疲れた頃にようやく目的の温泉が見えてきた。
そう、高天原はどのルートでも2日間は山を歩かないと到達できないことから、「日本一遠い温泉」と呼ばれるマニア垂涎の温泉なのだ。(ほかのルートを使えばここまで辛くはないけど、疲れることは確か)
しかし、お盆に高天原でというのは登山者なら誰でも考えること。
日本一遠い温泉というわりには混んでいる。
仕方ないので、ただでさえ暑いのに、一番熱い人気のない湯船につかることにする。

日焼けが痛て〜、けど気持ちいい!
横を流れる冷たい川で体を冷やしたり、温泉であったまったり。
これで空いていれば(自分一人だけなら)最高なんだけどなぁ。
道悪のショートカットルートで相当疲れたので、温泉から歩いて20分の小屋で今晩は泊まることにする。
燃料切れ(空腹)も手伝って、小屋までの移動で息が上がる始末。おととい急登で登りの筋肉を使い今日は下りで専用の筋肉を使いきって満身創痍。
ところがやっとの思いで高天原山荘に到着すると、すごい混みっぷり。聞くと布団1枚2人体制。
赤の他人(しかもお互い汗臭い)と肌をよせあって寝るなんて無理。(俺も相当汗臭いし)
しばらく考えて、ここを去ることに決定。
インスタントラーメンを作って腹に放り込むと、よぼよぼと雲ノ平のテントサイト目指して歩き始める。
すでに15時前で、標準コースタイムが4時間なので、下手すると日没に間に合わないかもしれない。
しかも登り標高差500m。

半ば決死の覚悟で歩き始める。(当初の計画では雲ノ平まで歩くつもりだったのではあるが)

景色がきれいで、多少疲れを癒してくれる。元気なときに見たかったなぁ。

雲ノ平と言うだけあって、雲がいいかんじ。

疲れた体にはきっつい登りを3回ほど繰り返して、ようやくテントサイトにたどりついたのは18時30分。
テントサイトも満杯だが、やさしいおばちゃんが見るからによれよれの私のためにテントを張れる場所を指さしてくれる。

あわててテントを張り、シュラフに潜り込んだらそのまま寝てしまった。
そして、夜中の0時頃目が覚める。
ペルセウス流星群の極大日のはずなので、テントから顔だけ出して夜空を見上げる。
天の川がはっきり見える満点の星空。
山のテン幕はこれだからたまらない。
が、どうも流れ星がペルセウス座の方角から飛ばない。
10分ほど粘って、明るい流れ星を確認したあと寝てしまった。(実際は日本の昼間だったらしい)
4日目
来た。
筋肉痛が。。。
足がまともに動かんぞ〜
ここのテントサイトは雪渓の真下にあり、冷たい雪解け水がドバドバ流れ込むよい場所である。
トイレもバイオ分解完備で臭くない。
あらためて、よい場所に泊まったことがわかった。

昨日は小屋に幕営料(500円)を払わずに来てしまったので、いったん雲ノ平山荘に向かう。
チングルマ満開の美しい台地である。高天原同様北アルプス最奥に位置し、日本最後の秘境と
まで呼ばれる場所である。
雲ノ平山荘は野口五郎小屋同様、雨水で運営されているので、飲み水は歩いて30分の私が泊まったテン場まで行かなければならないとのこと。テン泊で良かったぁ。

雲ノ平を囲む山々も大迫力
雲ノ平を作ったのが祖父岳(じいだけ)火山。
その祖父岳を登る。

登りは筋肉痛と関係なくけっこう楽だ。

最終日に行く槍ヶ岳を頂上から眺める。
しかし、下りが辛い。うーむ、やはりあのショートカットコースのせいか。。。

中島みゆきが紅白で歌詞を吹っ飛ばした黒部川(前置き長すぎ)の源流を下る。

源流の水でうどんを作っていただく。(煮汁を捨てるのを嫌って少ないお湯で煮たら、生煮えになってしまい、おいしく出来なかった。高所で乾麺は鬼門かも)
源流の水はもちろん冷たく澄んでおいしかった。そして、源流で冷やしたみかんの缶詰めも一気にお腹に放り込まれた。
クヮッ、クヮッという鳴き声に振り向いてみると、雷鳥の親子がそこに居た。

写真には幼鳥は1匹しか写っていないが、実際は5匹ぐらい居てかわいかった。

花咲く黒部源流を楽しく下るはずが、なぜか息が上がる(笑)。

いやぁ、下りが辛いぞ〜

下りきったところは、川幅も広がり豪快な流れとなっている。
ここで喉を潤す。

そして、三股蓮華山荘まで登り返す。

昨日よりは大分早い時間にガスってきた。

ガスるとせっかくの花畑も台無し
そこから急坂を下って(このころには筋肉痛はだいぶん収まっていて、ほいほいと下れた)黒部五郎山荘に到着。
今日は疲れを取りきるために小屋泊まり。

おいしいご飯をいただき、布団でぐっすり寝て疲れを取ることにした。
5日目
朝食をいただくとザックを背負わずに黒部五郎カールを目指す。(カールは氷河が山を削り取った地形。ちょうどアイスをスプーンで削り取ったみたいな感じの場所。もちろん大きさはむちゃくちゃでかいです)

遠くにカールの頭だけ光り輝いて見えている。
北アルプス自体は非常に広いエリアで、どこの登山口から入って、どこに下りるか非常に悩む。
しかし、本当にここにだけはどうしてもガスる前の時間に来たくて、それを中心にして今回のコースをセッティングしているほどである。

そして、どっか〜んと見えるこの景色。見覚えあります?
そう、このブログの上のヘッダーに使ってる景色なんです。

日本にこんな景色のところがあるんですね〜。ここも独り占めですよ。お盆なのに。(たま〜に人が歩く程度です)

おいしい雪解け水を飲みながら幸せな時間を過ごす。
30分ほどぼけーっとした後、小屋に逆戻り。本当にここは通過地点ではなく見るためだけに立ち寄ったのだ。

花畑を眺めながら小屋へと戻る。

そして小屋でザックを回収。
小屋のまわりは湿原になっていて霜の降りた花が風に揺れている。
さて、いよいよ出発。
昨日降りた急坂を今度は登って行く。
お! どうやら山足が出来上がったようである。(筋肉痛を越えた)

振り返れば黒部五郎岳。

昨日と同じ花畑。晴れているとこんなに景色が違うのです。

そして、10時をまわると雲があがってきた。どうやら、昨日あたりから大気の様子が変わったようである。ガスる時間が早くなってきている。

三俣蓮華岳の山頂でガスのかかる黒部五郎岳を眺めながらお弁当。

雲を眺めるだけでも飽きない。

ここは富山、長野、岐阜の県境。

ガスる尾根を下り

双六岳へと登り返す

ガスっていて空ぐらいしか見えません。

そこから下りきったところが本日の目的地。
昨日、一昨日と違って、えらく早く目的地にたどり着いてしまったが、予定は
変更せずに、すぐにテントを張って、ザックに入れておいた本を読んで時間をつぶす。
(14:00)
夕方に山小屋のカレーをいただき、テントの中でシュラフに潜り込み、ラジオで下界が猛暑であることを聞いていたらいつの間にか眠ってしまった。
6日目
いつも通り4時に起床。いつのまにか携帯の電源が入りっぱなしになっていたらしく勝手にバッテリー切れになっていた。(サムソン製なので、日本で売っている充電器類が一切使えないので、これで家に買えるまで携帯が使えないことが決定)
本日はあちらこちらから、その尖った頂上を見せていた槍ヶ岳を目指して歩いてゆく。
4時30分には出発するつもりがテントのパッキングに(夜露でぬれていたこともあり)思いのほか手間取ってしまい、いつも通り5時前の出発となってしまう。

小屋前にはたくさんの人たちがご来光を待っていたが、とりあえず槍ヶ岳を目指して急いで歩き始める。

朝日が本日の尾根ルートを照らす。

今日も調子が良く、予定の時間よりも早くチェックポイントをどんどん通過してゆける。

途中の花もきれいで、気分の良い尾根歩き。

途中、こんなところもあるけど

最後は急坂をえっちらおっちらと登る

振り返れば今来た道もはるかかなた下

もう一息。空しか見えない。
予定より1時間早く槍の肩まで到着。

軍手をはめて気合い十分
早速岩登りにとりかかる。

梯子やら鎖やら

杭がたくさんあるので、よっぽど高所恐怖症でなければ、ひょいひょいと登って行けます

怖い人は下を見るのはやめましょう

あこがれの槍ヶ岳に到着。ガスる前に着けた!! (これで一日前倒しで下山可能となった)(9:30)

360度の大展望。すばらし〜〜〜

軍手に穴あいた!

肩にある小屋(ここでも標高3000m越え)に帰還

山頂を眺めながら鳥南蛮丼をいただき、今日中におもいきって麓まで下山することを決意。(11:00)

いよいよガスがあがって来たしね

飛騨乗越。日本で一番高い峠道です。(もちろん車では走れませんよ、皆さん)

高気圧が作り出す豪快な雲を眺めながら、アップテンポで下る。

なんせ、今日中に標高差2000m、距離にして14kmを一気に下るので、急がなければならない。
いいかげん疲れたころに何やら看板が、、、、

標高2700m!?
なに〜!
300m(全体の1/7)しか下ってないじゃないか〜〜〜
一瞬、途中の山小屋に目的地を変更仕様としかけたが、麓の温泉で体を洗って
冷房の効いた部屋でぐっすり眠る自分を想像し、あくまでも下山することに決定。
急げばロードスターが置いてある松本行きのバスにも間に合いそうだが、それだと汗だくのまま愛車に乗って市内のホテルを探すことになるので、それはやめておくことにする。

その後も歩きにくい道に悩まされながらも、どんどん下って行く。
途中でえらい歩きの遅いおばちゃん3人組を追い抜く。
あんな速度で今日中に下山できるのか他人事ながら心配になる。

そして、頭の中は温泉でいっぱいになる。
下るに連れ温度はどんどん上がり(日本最高気温を記録した日です)、汗もだらだら。
足はフラフラ。
しかし、何が何でも温泉に入るのだ!!

やがて、道は車も走れるような砂利道になる。
歩きやすいけど、足の裏が痛い。(文句が多い)
工事中200m先の看板を見て
「200m先って、どんなけ先だよ」
と悪態をつく。
カーブを回ると、そこに小屋を発見し
「かき氷食うぞ!」
と意気込むと、なんと先ほど看板を見た工事中の場所のプレハブ小屋であることがわかり、かなりがっかり。(余裕無さすぎ)
しばらく歩いて、ようやく最後の山小屋に到着し、かき氷をいただく。

さぁ、もう一踏ん張りだ!!
砂利道を歩いていると、工事現場からトラックが砂煙をあげながら追い抜いて行く。
荷台に工事現場の車に似つかわしくないカラフルな物体が乗っているのに気づく。
よく見ると、先ほどのおばちゃん3人組が目立たないように体を低くしながら、荷台に乗っているではないか。
しかも、余裕の笑顔でこちらに手を振っている。
ずるいぞ、おばちゃん!!
2日分の行程を一気に駆け抜け、17:30に麓の温泉街にフラフラになりながらも到着。

やった〜! 下山したぞ〜! 温泉だぞ〜! クーラーだぞ〜! 布団だぞ〜!
おばちゃん達は間に合っただろうが、俺の方は最終のバスには間に合わなかった。
まぁ、温泉に泊まるからいいけど。
すぐに、観光案内所に駆け込む。
案内所を閉めようとしていた係員が一言
「今日は民宿も含めていっぱいですよ。なんせ
8月16日ですからね。
隣の平湯温泉も一杯で、こちらに人が流れ来んで来てるんですよ。」
なに〜〜〜!!!
どうする俺!
つづく