
つづき
どうしたら良いのか、良いアイデアも浮かばず、呆然とする。
そこへ、状況を察したのかタクシーの運転手がニコニコしながら近づいてくる。
「どうしたの?」
「かくかくしかじかで・・・・」
「だったら平湯まで飛ばせば、松本行きのバスに間に合うよ」
「え!?、本当ですか? いくらぐらいかかるんですか?(頼む2000円以内)
「6000円って言いたいところだけど、お兄ちゃん困ってるみたいだから5000円で
いいや」
「え・・・・」
「どうする? 早く決めないとバス行っちゃうよ?」
「・・・わかりました、お願いします」
「じゃ、早く荷物積んで」
というわけで、タクシーにザックを放り込み、エアコンの効いたシートに腰を
下ろすのであった。
運転手さんは、バスに間に合わせるべく、アップテンポで平湯温泉に向かってくれる。
松本に行ってからビジネスホテルを探すのかぁと思いながら窓の外を眺めているとなにやら「空室あり」の看板が・・・・
運転手さんに
「あの、今空室ありって看板が見えたんですけど」
と言ってみると、
「わかった、確認しに行くか」
とすぐにUターンさせ、その民宿まで戻ってくれた。
入り口で空室状況を確認すると、おかみさんが申し訳なさそうな顔で出てくる
「すみません、満室なんですよ」
素早く頭を下げてすぐにタクシーに乗り込む。
ややこしいことするなよなぁ。
そしてしばらく走っていくと、「飛騨牛」の文字が。
くぅぅぅぅ、肉食いてぇ。。。飛騨牛食いてぇ。。。
という願いは運転手には届かず(そりゃ、バスに間に合わせるために急いでますから)あっさりとレストランの前を全速力で通りすぎて行く。
しばらく走ると、またもや「空室あります」の看板。
一応運転手さんに止まってもらい、確認しに行くことにする。
若女将が出てきた。
「空室ありますか?」
「4畳半、素泊まりでよければありますよ」
「本当ですか!」
急いでタクシーに戻り、ここで泊まることを告げる。
「ちょっと高いけど、5000円でいいよね」
「はい!」
って気持ちよく返事してから、損したことに気付いたが、まぁいいや。泊まれるんだし。

受付に行くと若女将が何やら他のスタッフと相談
「素泊まりで8400円ですけどいいですか?」
たっけ〜〜〜!
でも、タクシーも居ないしバス間に合わないし選択肢無し。
「いいですよ」
と答えるしかない。
「今から部屋準備しますから、そちらに座ってお待ちください」
と、ソファーを指さす。
崩れ落ちるようにソファーに沈む体。はぁ、良かった。
しばらく座って待っていると、腹が鳴り始めた。
受付に行くと、おじいちゃん従業員が居たので
「この辺で夕飯食べられるところ無いですか?」
と尋ねてみると
「
こ〜の〜へ〜ん〜に〜は〜、な〜い〜なぁ〜」
とゆっくりした返事が返ってきて和む。
いや、和んでいる場合じゃない。
「食堂とかある街は無いんですか?」
と聞き直してみると
「
あ〜る〜い〜て〜行〜け〜ば〜、あ〜る〜」
との返事。
「歩いてどのぐらいですか?」
と尋ねると
「
じゅ〜う〜ご〜ふ〜ん〜じゃぁ〜」
との返事。今日はすでに12時間近く歩いている。いまさら往復30分増えたところで
どうってことはない。
「
行〜き〜は〜下〜り〜じゃ〜が〜、帰〜え〜り〜は〜登〜ぼ〜り〜じゃ〜」
と、ありがたいんだか、当たり前なんだかよくわからないアドバイスをくれるおじいさん。
でも、親切にありがとう。
ソファーに戻って待っていると、おじいちゃんが話しかけてきた
「
ク〜ラ〜が〜、あ〜る〜部〜屋〜と〜、無〜い〜部〜屋〜、ど〜ち〜ら〜
が〜良〜い〜か〜の〜?」
「え? それはぜひクーラーのある方で!」
「
ト〜イ〜レ〜が〜、つ〜い〜て〜お〜ら〜ん〜が〜、そ〜れ〜で〜も〜
良〜い〜か〜?」
「いいです!、いいです!」
「
そぉ〜かぁ〜、え〜え〜の〜か〜」
「はい・・・」
なんか、間違えたか? 俺・・・
なんでもトイレが部屋についていないと嫌という女性客がいたらしく、部屋を変わって欲しとのこと。
しかし、危うく、クーラーの無い部屋に案内されるところだった。
その後しばらくして、女将が戻ってきて、おじいちゃんと何やら相談。
なんかもめている様子だが、部屋をクーラー付きの方に買えてもらうこととなり、いよいよご案内。
長い廊下を歩きながら、飯屋のことを尋ねると
「無理無理、歩いていける距離じゃないですよ」
との返事
「え、おじいさん、15分で着くって言ってましたよ」
「あのおじいちゃん、
いいかげんだから」
と一刀両断。
いや、きっと俺のたくましい足を見て(長ズボン履いてたけど)、無理な距離でも15分で着くと思ってくれたに違いない。
「他のお客さんが食べたあとでもよければ、厨房にまだ大丈夫か聞いてあげま
しょうか?」
「はい!、ぜひお願いします!」
なんだよ、頼めるんなら最初から素泊まりオンリーって言うなよ〜
「ちなみにおいくらですか?」
「食事は2食で5000円です」
「飛騨牛ついてるんですよね?」
「ネギ味噌ほお葉焼きですけどついてますよ」
やったぁ、飛騨牛だぁ!
「ぜひお願いします」
「じゃぁ、確認してあとで連絡しますね」
女将、ありがと〜〜〜
そして、部屋で連絡を待つこと15分。
腹は鳴るのに連絡が来る気配がないので、こちらからフロントに電話すると、女将が出た
「あの〜、夕飯の件なんですが・・・」
「あ、やっぱり駄目でした。もうしわけありません。(ガチャ)」
ええええええええ!!!
このまま飢え死にするわけにもいかないので(一瞬ザックからコンロとインスタント食品を出して駐車場で料理しようと思ったが、さすがにそれはやめておいた)、フロントへヨタヨタと歩いてゆく。
他の団体さんがクーラーの有る無しで女将ともめていた。そら、温泉入ってクーラー無かったら暑いだろう。
もめ事が終わったようなので
「どこか食べる場所無いですかね? 少しぐらい歩けますから・・・」
と訴えてみると、しばらく悩んだ女将が観光案内を取り出してきた。
「ここから30分はかかると思うけど、ここならやってますよ」
と地図に赤丸をつける。
「ありがとうございます」
と礼を言い、地図を受け取る。

まぁ、30分は言いすぎでしょ。地図でもカーブ2つですぐ着きそうな
雰囲気だし、おじいちゃんは15分って言ってたし、20分ぐらいで着くかな。
そして、最初のカーブを目指す。

女将、あんたが正解! 最初のヘアピンカーブすらむちゃくちゃ遠い!
そして空腹の中、下り道を延々と下ること25分。ようやく食堂に着きました。

なんか値段高そうだなぁ。
ま、いいや、飛騨牛、飛騨牛!
中に入ると何やら芸能人のサインがいっぱい
メニューを見ると
「カレー、カツ丼、そば、ラーメン」
飛騨牛は!?
よく見ると、飛騨牛ホルモンなるメニューを発見
従業員に聞くと、テッチャンなる料理がある。あとラーメンも人気なのだとか。
テッチャンにご飯が最高の組み合わせらしいが、テッチャンにラーメンの組み合わせで注文。
ま、ホルモンで我慢するか。
と思ったら、全然我慢どころじゃなかった。

さすが、サインが並ぶ店。むちゃくちゃうまいです!!! (しかも安い)

ラーメンは昔ながらの味。私はこういうの大好きです。
女将、良い店紹介してくれてありがとーーーーーー!!!!
奈賀勢というお店です。岐阜にお越しの際はどうぞ〜
さて、真っ暗な国道を歩いて(しかも登り)帰りますか。
って、歩道が無いとむちゃくちゃ怖え〜〜〜。(車もふらふら歩いてる俺が怖いだろうけど)
すぐ脇をトラックやらバンやらがビュンビュン飛ばして行きます。
歩くこと25分(ちょっと無理して頑張った。温泉待ってるからね)、なんとか宿に戻ってきました。
フロントに女将がいたので、お礼を言おうと近づくと
「本当に行ってきたの?」
と呆れ顔
「まぁ、25分ぐらいでしたよ。それより、テッチャンおいしかったですよ!」
「あ〜・・・、そう〜・・・・」
「え? テッチャンの店を紹介してくれたんじゃないんですか?」
「お客さんが何を注文するかなんて、私わからないわよ」
そ、そうだったのか・・・・。
さて、早速温泉(一部循環)に入って、キンキンに冷やした部屋の布団でシーツにスリスリ。
し・あ・わ・せ〜
テレビを見ていたら、日本で最高気温を記録したニュースを繰り返し放送していた。
(しかも岐阜県多治見市)
久しぶりに大の字になって寝た。
7日目
朝7時に起きて、朝風呂を堪能。
チェックアウトしてバス停に移動。

ほぼ時間通りに平湯温泉行きのバスが来る。

平湯温泉のバスターミナルで飛騨牛コロッケを購入し、頬張りながら松本行きのバスに乗る。

バスにゆられること1時間強。朝10時に松本インターに到着。

さて、ここからはロードスターでの旅である。(みんカラ読者の皆さん、お待たせしました)

天気はあんまり良くない。特にアルプス方面はガスがかかっているようである。

(10時越えているから当然といえば当然なのだが)

長閑な県道を選んで走りながら白馬を目指す。

しっかし、下界は暑いねぇ。。。

途中の道の駅で巣からおっこちた燕の子を発見
触るわけにはいかないので、いったん中に牛乳を買いに行く

牛乳を買って戻ってくると、無事に他の仲間と囀んでいた。良かった良かった。

ここからさらに山道を走ること30分。白馬蓮華温泉に到着。
ここで知り合いがバイトしているので、顔を出したのだ。
車で行けるとは言え、ここは山小屋。部屋は相部屋で9時消灯、5時起きなのは変わらないけど
そういう体のリズムになっているので問題なし。
晴れていれば、小屋から歩いて15分の露天風呂まで行くのだが、あいにくのガス。
夕飯の後片付けが終わった知り合いの子と夜遅くまで(食堂で)しゃべってから、布団に潜り
こんだ。
(晴れてれば「天の川風呂」が体験できるところなんですけどね〜、残念)
8日目
朝4時に起床。
ほかの人をおこなさないようにそーっと出発。
朝なら晴れているかと思ったけど、あいにくのガス。
それでも露天風呂に入らないとここまで来た価値が半減してしまうので、とりあえず山道を
懐中電灯片手に登る。
5時に近づくに連れ明るくなってきた。

まぁ、これはこれで雰囲気良いね。

ちなみに晴れてれば、こんな感じです。

車に乗り込み、適当ドライブ開始。今日中に東京に戻ることだけ決定。
携帯すら使えないので、どこが晴れているのか皆目検討がつかない。

地図で目星をつけた雨飾山山麓の林道に入っていく。
ロードスターで山歩き! って、道悪すぎ!
土砂災害のため、通行不可の案内が出ているがかまわず入って行く。

あいにくの雨模様の中、お腹を擦りながら、ガンガン入って行く。というか、すでに砂利道を
30分近く走っているので引くに引けない状況。
ようやく小谷温泉に到着。

雰囲気の良いところである。今度泊まりに来てみたいな。

そこから、さらに山道を入っていく。

県境のトンネルを抜けて、新潟県妙高に抜けられる。

新潟側が路面状況が悪くて驚いた。(田中角栄の街だから、もうちょっと整備されているかと
思ったけど、田中康夫の方がよかった)

だんだん雰囲気のよい道に

雨あがりの美しい牧場を通過。

ここは空気もおいしいし、いいところですね。穴場っぽいのでおすすめです

空気と景色はきれいだけど、車はこんな状況

ガススタンドで洗車をお願いしたら、高圧ホースで汚れを落としてから洗車機に入れてくれた。
カーナビに野尻湖の文字を発見。
野尻湖は小学生の時から行きたかった場所。実際に友達と行く計画を立てるも、誰かの親が学校に密告し(うちの親はオッケーを出していたのだが)、校長先生自ら直接電話がかかってきて中止を勧告されて以来、来る機会の無かった場所である。
なんで、あの時、あそこまで行きたかったのか今となってはよくわからないのだが。

実際に行ってみて、その寂れっぷりに驚いた

なんだろう、この昭和の雰囲気

これ、アイスじゃないだろ〜 (コーンと分離してるし)

暖簾が破れて汚れてるし・・・

なんだ、この意味不明な手書きPOP(アイスこちら)は・・・
周回コースはと言えば、一向に湖のそばを走らないし・・・

湖を見下ろすレストランでスパゲティを食べながら、これが野尻湖だと自分に言い聞かせる。
なんか、これが長年夢見てきた野尻湖だとすると、夢壊されるなぁ。
最後に「ナウマン象博物館」なる場所に寄ってみる。

興味深い展示(生物、地質、石器時代大好き)を食い入るように見ながら、小さな博物館を1時間以上かけてゆっくり堪能。
そして、野尻湖発掘の歴史のコーナーで衝撃を受けた。

そっか、俺が小学生の時が野尻湖発掘のブームの時だったんだ!! (しかも、小学生が発掘に参加していた) どうりで行きたかったわけだ。(すっかり忘れていた)
発掘ブームが去り、ブラックバスに荒らされて漁業も成り立たなくなった野尻湖は、その時代のまま取り残されていたのだった。

子ども達が石器時代の生活体験をするのを微笑ましく眺める(ちょっとだけ参加したかったのだが・・・)

急に野尻湖がいとおしくなってきた。

あいかわらず、道路からはチラっとしか見えない野尻湖に別れを告げ、新潟を目指す。

しばらく新潟の内陸部を県道やら

国道を使って移動。山間部、海方面、どちらを見ても曇っているので、どうにもならない。

魚沼スカイラインの文字を発見し、ハンドルを切る。

なんだろう、こんな米所の平野にスカイラインがあるんだ。

雨上がりで神秘的な景色が広がる

海が近いからか雲が近い。

これは得した気分

うわぁ、なんか雰囲気満点。

道が狭いので、駆け抜ける道ではないけど、なんか楽しい!

どうですか? こんな景色

他には無い独特の雰囲気ですよ

この時は雲が多かったのが、また良かったです

ほいじゃ、陽も沈んだし帰るか〜!!

土曜の夜だったので、渋滞もたいしたこと無さそう
というわけで、夜11時頃帰宅しました。
長文お付き合い、ありがとうございました!!