6日目
ドライブ50kmぐらい
登山 5km
目覚まし無しで5時40分起床。(カーテンが開いていたので、外の明かりをかぎ取ったらしい)
内心曇りかと思っていましたが、なんと本日も晴れるみたいです。ラッキー!!
皆さんまだ寝ているのでこっそり部屋を抜け出し、ユースホステルの外に出てみます。

空、真っ赤です。
すぐにダイハツ シャローン号に乗り込み、マウントクックが観れることで有名なハーミテッジホテルに移動します。

神々しく赤く照らし出されております。
が、ちょいと手前の山が邪魔。
どうせ車があるのだから、昨日走ってきた道を戻り、山全体が見えたところまで行くことにします。
ユースホステルの近くに、昨日入り口を開けてくれた日本人の若者がポツンと立っていました。
ここからではアオラキ/マウントクックは見れない場所ですし、見える方に向かって歩いたたとしても、たぶん30分以上は歩かないと山は見えないと思います。
昨日ドアを開けてもらったお礼もあるので、声をかけてみたところ、「是非」という返事だったので、車に乗せてあげます。
連れの女性は起きなかったとのこと。(もったいない)
10分ほど車を走らせて、山全体が見えるところで撮影します。

あと10分早く出ていれば、真っ赤だったんですけど、黄色になっちゃいましたね。

にしてもすばらしい景色です。
今回の旅ではできるかぎり日本人に近づかない(自分専用)ルールだったのですが、せっかく知り合えたのでいろいろ聞いてみます。
予想通りワーホリでニュージーランドに来ているらしく、実は同じく世界中から集まった英語学校の生徒33名の団体旅行だとのこと。(引率は教師) なるほど、それで皆たどたどしい(私でも十分聞き取れる)英語で話していたわけね。それと、昨日キッチンを占拠していた団体はこのグループだったわけです。
2週間かけてマイクロバスで南北全部まわるのだそうです。本当は運転手が起きてくるはずだったのに寝坊したので、途方にくれながら歩いていたとのこと。
彼は現在26歳(若い! フレッシュ!!) で、とある都市の信用金庫で働いていたのですが、あまりに仕事が自分に向いていなかったので、一旦仕事をやめて、1年間のワーホリでニュージーランドに来ているとのこと。「ワーホリ仲間とは仲良くなったけど、現地の人とまだ仲良くなってないんですよねぇ」、と言ってました。お連れの方は日本人ではなく韓国の女性でした。
このマイクロバスでの旅行の後、居住地を北島のオークランドから南島の観光都市クイーンズタウンに移し、そこのバックパッカーズハウス(安宿)の受付を住み込みでやるのだとか。労働条件は半日働いて飯代と宿代はタダになり、仕事は一日おきなんだそうです。皆さん、どうですか? そんな生活?
(ただ、これだとお金は溜まらないで、過ごすだけになってしまいますね)
日本に帰ってから社会復帰できるのか、おじさんはちょっと心配になっちゃいましたが(笑)、本人もそれは自覚しているみたいでした。
まぁ、古い言葉で言えばモラトリアム期間ですな。
まずは朝飯を食べるために、ハーミテッジホテルのカフェに行き、テイクアウトをお願いしてパンと珈琲を仕入れます。これをホテルのカフェ(テラスから少し見れる)よりも景色のいい場所で食べる腹積もりです。

カモ注意の看板のところに、本当にカモの親子が居てびっくりしました。

さすが一流ホテル、珈琲もパンもおいしいです。景色も相まってうまさ倍増!

本日はマウントクック向かいの山に登り、ミューラーハット(山小屋)に泊まるつもりだったので、DOCに顔を出します。
まずは係員に説明してもらいながら登山届けの提出と天候確認を行います。

なんか小屋付近の標高2000mは「風速時速50km」(日本風に言うと風速14mぐらい?) と書いてあるんですが、登山計画書を記入している時も特に何も注意されなかったので、大丈夫なのでしょう。
(写真はユースホステルで見た昨日の新聞。移動性の高気圧が東へ50ノットで去っていくイメージです)
ちなみに、ニュージーランドでトランピング(トレッキング)するのは、すべて「オウンリスク=自己責任」ってことになってます。ただ、登山計画書のシステムは日本のそれよりしっかりしていて、出発する駐車場も指定させられますし、下山時にちゃんとDOCに届け出ないと自動的に捜索隊が出発してしまいます。個人的には遭難することよりも、下山届けを間違えたり忘れたりして、捜索隊が自動的に出発する方が心配だったりしました(笑) 私はやりませんでしたが、捜索隊の出発日時も指定できますし、たいていの小屋には無線機がついていて、安否確認や悪天候時の下山日時の変更ができるようになっているみたいです。
DOCのスタッフはフレンドリーかつ丁寧に対応してくれるので安心です。ガスコンロが必要かどうか尋ねると、小屋にガスコンロはあるので必要ないとのこと。これで(ちょっと値段の高い)ガスカートリッジを現地購入せずに済んだのでラッキーでした。
あと、地図を入手したかったので頼むと、1$のパンフレットを渡されました。

たしかにガイドブック的に詳しく色々書かれているんですが、肝心の地図はかなり適当です(笑)
これは私のオーダーの仕方がまずかったのですが、ちゃんとした地図は別にあります(20$前後)
小屋までの道は、最初 (2)ウォーキングトラックからスタートして、急勾配の(5)トランピングトラック、最終区間は危険度ランクマックスの「(6) ルート」となります。
アオラキ/マウントクックそのものに登るわけではなく、ちょっと離れた山に登り、アオラキ/マウントクックを見渡すイメージです。もっと近くで登るのかと思っていたのですが、意外に遠い感じです。
ミューラーハットは夏の間はガスコンロ装備でボランティアワーデン(管理人)が居てくれる、「グレートウォーク並」ランクの小屋です。(人気があるからでしょう)
小屋は事前予約が不可で、ベット数28、当日早い者勝ちでチケット販売となるので、前日無理してマウントクック村に入り、朝一で顔を出したというわけです。
ちなみに、本日は1月2日ですが、DOCのオープンと同時にドアを張りきってくぐったのは私一人でした(笑)。(あまりの人気っぷりに小屋の収容人数を増やしたらしいのですが、そんなもんなんですね。世界遺産ど真ん中なのに)
さて、予約は済ませたし、今すぐに登ってもコースタイムは3〜4時間ぐらいなので、昼ぐらいには着いちゃいます。日没は21時過ぎなので、ちょいと暇になってしまいます。
なので、その辺で遊ぶことにします。
この旅初めての自由時間です!!
(本当のことを言うと、アオラキ/マウントクックで晴れなかったときのために、ミューラーハット含めて2泊の時間を割き、晴れるのを待つ作戦だったのです)
ロンリープラネットのガイドブックを開き物色。
乗馬にでもチャレンジしようかと電話をすると、なんと「今日は正月休み」だとのこと。
おいおい観光産業がこんな時に休むなよ〜(笑)
カヤックはもう乗ったし、自力で登る前にヘリとかセスナで上に上がるってのも何か違うので、どうしようか悩みます。
ドライブしてもいいのですが、明日も8号線に戻るときに、この道(80号線はマウントクック村でどん詰まりになっています)を走るんですよね。
一応天気予報では明日も晴れることになっているんですが、山の天気予報ほどあてにならないものは無いですからね。今の内に写真も撮っておくことに決定し、とりあえずドライブすることにします。
チェックアウトするために荷物を取りにユースホステルに戻ると、白髪のおばあちゃんがちょうど出発するところでした。なんと自転車用のヘルメットを手に持ってます。
話を聞いてみると、ドイツから来て一人旅をしており、自転車で旅をしているのだとか。
すっげ〜〜〜!

あまりにかっこよかったので出発の時に写真を撮らせてもらいました。
(照れてました)
自転車はレンタルじゃなく自前の折り畳み式のものです。
(これもかっこいい)
元気な老後を私も迎えたいと心から思うのでした。
では、私も近場にドライブに行きますか。

何度走ってもいいですね!

「アオラキ」、マオリ族の言葉で雲を貫くものという意味です。

すんません、何度も似たような景色で。
さて、ひとしきり遊んだところで燃料補給(昼飯)してから、登り始めますか!
その前に貴重品をユースホステルのコインロッカー(2$)に預けます。

ホステル前にウサギがおりました。
DOC横のカフェに出向き、ハンバーガーとコーラを注文します。

びっくりドンキーの300gハンバーグ(草履サイズ)がはさまった、その名もマウンテンバーガー。十分すぎる燃料補給です。
コーラは全部飲まずにザックに入れ、パンズも途中の燃料補給用にスーパーで買った乾燥マンゴのチャック付ビニールに入れてウェストポーチにしまいます。
さて、行きますよ。

駐車場までは砂利道を走って行きます。
日本では舗装道路でもなかなかお目にかかれない制限速度60kmです。(それでスリップ注意の看板がついてるんだからすごい世界です)
実際に60km出すと車が宇宙遊泳みたいになるので、控えめにしておきました。
駐車場に車を起き、ザックを背負っていよいよ出発です。

まずはウォーキングトラック区間です。勾配もほとんどなく、本当に気分のよい散歩道です。
そう言えば英語学校の団体さんも、今日はこの辺を軽く歩いてから次の目的地に行くと言ってました。

登山に慣れてない方はここを歩くだけでも十分満足できるのではないでしょうか。

急勾配の登り坂が始まります。トランピングトラック扱いなので、多少岩場もあったりします。

三角の印がちゃんとついてます。

登山靴は履いておいて方がいいかんじですね。

振り返ってフッカー氷河が作り出した谷を見下ろします。80号線はここを走っているわけです。
中央右にハーミテッジホテルをはじめとするマウントクック村が写ってます。

さらに足元を下を見下ろすと先ほどすれ違った人が。勾配が伝わるかと思います。

花もけっこう咲いてます。

実際には90%以上の区間はちゃんとした階段になっていて、非常に快適です。
斜度が緩ければの話ですが。

正面がアオラキ/マウントクックの中腹になってきました。
これで一気に標高500mぐらい上がったことになります。(日本の低山ぐらいは経験しておいた方がよろしいかと思います)

セアリーターンズを通過しました。小さな黒っぽい湖が写っているあたりです。

そしてここから先はいわゆる「ルート」扱いになります。雪崩警告の看板です。

かなり身構えていましたが、ちゃんとポールでマークはされてますし、踏み分け後(石が見える部分)もしっかりしているのでよっぽど悪天候にならない限り迷うことは無いと思います。
写真中央に小さく下山中の方が写ってます。見ての通り、踏み分け後は浮き石地帯なので、下山時注意ですね。

キク科の植物がたくさん咲いておりました。ヒナギク(デイジー)の仲間でしょうか。

稜線が近づくに連れ、例の風速50km/h状態になってきます。まぁ風速14mなら大丈夫かと思っていたのですが、実際に突風が吹くと体がよろめくぐらいの勢いです。
(ちなみに写真中央左に登山者が写ってます)

雪渓が見えてきました。

だいぶん高度が上がってきました。標高1500mってところでしょうか。

やはり、ここを歩くのは多少なりとも日本の標高の高い山を経験してから入った方が良いと思います。

ちょうど稜線に出たところで下山してきたパーティーとすれ違ったのですが(写真左)
「あと50m行ったら、(翻訳できず) 安全だから!」
と強風の中で叫んでくれたので、てっきり50m行ったら山小屋が有るのかと歩き始めるも、姿も形もありません。
一応ポールでマーキングはされているので、それに従い岩場を越えて行きます。

しっかし向かいのマウント・セフトン(マウントクックはこの右奥)の氷壁がすごい迫力で眼前に迫ってきます。サイズ比較になる人間がいなかったので、自分でタイマー撮影しました。へっぴり腰なのは目の前が崖で、突風が吹いているからです(笑)
しばらくここで呆然と立ち尽くしていました。

そして、50mならぬ500m歩いたところでようやく小屋が見えてきました。(聞き間違えたか?)

やはり日本の山小屋とはデザインセンスが違います。
重いレバーを押し上げドアを明けると、中から背の低いおじいさんが
「ウェールカーム!!」
と笑顔で迎えてくれました。
ワーデン(管理人)のマークおじさんです。
小屋の使い方から、裏に山があって簡単に頂上まで登れることまで親切に教えてくれます。
荷物を置いて寝場所を確保します。
小屋にはすでに5名ほど来ており、最終的に10名ぐらいになりました。
まだ16時前です。21時の日没まで5時間はあるので、裏山に登ることにします。
標高差200mなので体力的には大変では無いのですが、道がありません。それに強風が気になります。
必要最低限の荷物を持ち、ゴロタ岩の山に登りはじめます。

踏み分け後やマークはいっさい無いので、自分の勘で登っていくことになります。
風が強くなければなんでも無いのですが、この時は強風で立っているのもやっとです。
あっちに進路を変え、こっちに進路を変えながらなんとか頂上にたどり着きました。

すんごい絶景です。
ここに私しか居ません。足元にポツンと小屋があるだけです。

振り返ればミューラー氷河が山々を削り取っている様子が手に取るようにわかります。
言葉に出来ないほど感動しました。登って良かったです。
帰りも慎重に足場を選びながら降りていきます。(どちらかというと風で転ばないようにという感じなのですが)
小屋に戻ると、マークが
「風が強いし心配したよ〜」
と声をかけてくれました。(さっき登るの簡単って言ってなかったっけ? きっと今日はやめておいたほうがいいけどって付け加えてくれていたのでしょう)

そして、強風のおかげで雲が芸術的な形になっております。
あまりにも綺麗だったので、1時間おきぐらいに写した写真をアップします。

その1

その2

その3

その4

その5

その6

記念に撮らせてもらいました。(やはり照れてました)
マウントクックの天候について尋ねてみたら
「毎日天気は違うよ。クリスマスの後は(真夏なのに)大雪だったし。こうやって晴れているのに強風が吹くのも珍しい。何回も言うけど君は本当にラッキーだ」
とのことでした。
おなかが空いてきたので、持って上がってきた食材、インスタントラーメンと角切りステーキで男の料理を作ります。
聞いていたとおり、コンロや鍋などが置いて有りました。雪解け水も飲める小屋なので、食材だけ持って上がればなんとかなります。

これを料理というのかどうかはわかりませんが、もちろんおいしかったです。

晴れていれば星降る夜になるのでしょうが・・・・

夕方になると無線でDOCと定時連絡を取ります。(無人小屋に一人で泊まってる場合は自分で応答しないといけないのかもしれませんが、今回はマークが宿泊者の名前などをDOCに知らせています)
そして知らされた天気予報をホワイトボードに書いていきます。
どれどれ

げ! 雨で風速70km!(風速20m)
それって嵐って意味か?
岩場はしがみつけばいいけど、雪渓下り大丈夫か? (もちろん踏ん張れないので大丈夫じゃない)
うーむ、明日は朝一に下山して500km先(と言っても直線距離では数十キロ、すなわちマウントクック挟んで反対側 今回のブログの冒頭の写真の上の方にその地名が読み取れると思います)のフランツジョセフまでとっとと移動したかったんだよなぁ。。。
まぁ、悪天候だけはしょうがないか。
そして、こんなところまでノートPCを持ち込んでいたので、夜の暇な時間を利用して旅の記録を書いたり画像データのバックアップを取ったりします。(この時に初日に会った人の名前からどんどん忘れていることに気付き、パソコンにちゃんとメモを取るようにしました)
この時小屋に居たのは二家族。ひと家族は私と同じでミューラーハット目的、もうひと家族はロープやピッケル装備で、この先の道無き雪渓地帯に突入するという本格的山家族でした。息子さん二人は高校生ぐらいでしょうか。個人は私とあと二人。家族連れの子どもたちは家族を越えて仲良くなったらしく、さっそくトランプで盛り上がっています。
23時頃、外のトイレまで風によろめきながら行きます。トイレは日本の山小屋と同レベルの臭いです。つまり生物分解か何かをやっているらしく、たいしたことは無いです。
小と大を分けて入れる便座になってました。
明日はどうなってしまうのか気になりますが、考えても仕方がないので、とりあえず寝袋に潜り込みました。
分厚いマットレスがあるので、とりあえず快適です。
強風が奏でる音と、揺れる小屋から大自然のエネルギーを感じつつ眠りに就きました。
つづく
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