週末雑記 北ア登山 上高地 南岳 大キレット 涸沢 (前編)

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先週末(10月4日〜6日)、久しぶりに(お盆以来)山へ行ってきました。


というのもお盆の縦走の時にご一緒させていただいたNさんからお誘いを受け、お盆以降こんなに諸々忙しくなるとは予想していなかったので、2つ返事で行くことを決めていたのでした。(しかも月曜有給休暇を取得しつつ夕方出社するというスケジュール)


行き先は北アルプスの槍ヶ岳と穂高の間にある大キレット。


まだ登山を始めたばかりだった頃の私が登山雑誌で写真を見て、岩山のあまりの迫力に衝撃を受けた、まさにその場所でした。

いつかは行こうと心に決めてはいたのですが、技術が足りるのかどうか自分では判断がつかず、今年とりあえず不帰(かえらず)の剣と剱岳を経験したので、そろそろ次はと思っていたところへのお誘いでした。


金曜日は思ったよりも出発が遅れてしまい、23時にロードスターに飛び乗ります。


Nさんは神戸からすでに松本駅に到着しているのでホテルで寝てもらうことにして、自分は中央高速道路をひた走りながら長野県を目指します。


夜中の1時半に松本インター手前のサービスエリアに到着。4時半に待ち合わせとのことでしたので、2時間ほど仮眠を取ってからホテルに向かうことにします。



土曜日



4時半にホテルに到着し、Nさんを乗せて沢渡(さわんど)駐車場に向かいます。
(スーパーホテルという安眠に特化したビジネスホテルだったらしく、すっごいよく眠れたそうです。うらやましい!)






途中でコンビニに立ち寄り、本日の朝昼晩の食料を調達。今回はNさんがテント係で私は食料係です。(ほとんどの食料は事前に購入済みです)








やはり紅葉の上高地、こんな早朝から沢渡に向けて走る車もそこそこおり、快走というわけにはいかないようです。



駐車場に到着すると始発のシャトルバス(5時30分出発)はすでに出発した後でした。



あわててパッキングを済ませてバス停に向かうと、タクシーの運転手が手招きをし、うまいこと4人相乗りで上高地に向けて待ち時間無しで出発することが出来ました。








ここで山用の靴下を車に忘れたことに気づいたのですが、すでに後の祭り。今回は通常の靴下2枚重ねで行くしかなさそうです。







上高地に着くと、猿がお出迎え。




「あらら、猿が出ちゃったか、明日は雨かもね」




と、タクシーの運転手が不吉なことを言います。






さすが観光地の猿だけあって、えらい人慣れしてます。







さっきの「雨かも」という話が無ければ、微笑ましく眺めていたのでしょうが、そう聞いてしまうと不幸の使者にしか見えなくなってしまうから不思議です。

ただ、実際天気予報は明日から天気が崩れることを予想しており、猿の登場がそれを決定付けたと言えばそんなところだと思います。


基本的に私は天気が悪そうなら山には入らない主義なのですが、やはり人と約束している場合にはそういうわけにもいかないです。



天気予報は所詮天気予報、これが吉と出るか凶と出るか・・・




というか、サル、登場しないでくれよ。






まぁ、正面穂高の山の向こう側、大キレット(岩場)で雨が降らなければ大丈夫でしょう!(6:30)






上高地から続く、平坦で歩きやすい道、いわゆる登山者にとっては刺激の少ないハイキングコースをNさんとお話ししながら歩いていきます。


登山歴20年のNさんは山に対しての知識も豊富で、いろいろ解説してくれながら、歩いてくれます。

プライベートガイド状態です。





普段は何気なく見過ごす明神岳ですが、Nさんの話を聞いていたら急に登ってみたくなってきました。


「いつ着くのか」と思いながら歩くと長く感じるこの道も話しながらだと、あっと言う間に次の目的地に到着します。





徳沢園(小説氷壁の舞台)です。


Nさんがオーナーに挨拶をするというので立ち寄ります。


オーナーは外出中でしたが、女将さんが出てきてNさんと仲良く話をしています。


ここはJTBなどが客を集めてくるようになってから、今ではえらい人気の宿になっているらしく、全然予約が取れないのだとか。(今年も個室はほぼすべて予約で埋まっているとのこと)

こんなことがあってもお客さんはだれもキャンセルしなかったのだとか。



話の終わりに女将さんがリンゴをくれました。道中の燃料補給になりそうです。


いつか、(というか明日)泊まりたいなぁと思いつつ、徳沢園を出発します。






2人のザック比較です。Nさんは前回の山歩きで私のあまりにも軽量な装備に驚き、今回ザックを新調して一回り小さいものを持ってきたのですが、それでもまだ私より二周りほどでかいです(60リットル、私が45リットル)。

重量は私が2人3日分の食料を満載して10kgそこそこであるのに対して、Nさんのそれは15kgオーバーです。(それでも前回より7kg軽くなっているのだとか)






明神の横に前穂が見えているというのに本日気がつきました。Nさんに教えてもらわなかったら、しばらく気がつかなかったと思います。






そして、あっと言う間に横尾山荘に到着。








私は今までここから涸沢方面にしか歩いたことが無かったのですが、本日初めて槍ヶ岳方面に向かって歩きます。






美しい槍沢に沿って、樹林帯の道が続いています。









ほとんどの人が涸沢方面に向かってしまったので、こちらの道はかなり空いていて快適です。








上高地を出発して4時間強、槍沢の小屋に到着しました。ガイドブック的には本日のコースは終了となるのですが、私たちにとっては折り返し地点にも到着していないことになります。(本日のコースタイム、約10時間)






すでに腹ぺこだったので、カレーを注文。


というか、Nさんがうどんを頼んだことに衝撃を受ける私。
残りの行程、うどんで足りるのかと尋ねると、まったく問題ないとの返事。


どうやら、私の燃費が異常に悪いようです・・・
(お腹が鳴ってから2〜3時間は登れるのだとか。私は鳴った瞬間から足が上がらなくなってきます)



明日の天気を確認すると、午前中は晴れるかもしれないとのこと。





Nさんと二人して大喜びします。天気予報も「運ちゃんサル予報」も外れたようです!!


ちなみに私は月曜日に会社に出なければならない関係上、明日は途中で下山して、どこかの山荘に泊まり、明後日(月曜日)はとっとと会社に向かう予定を立てております。Nさんは、そのまま奥穂へと進み、月曜日は新穂高へ下るのだとか。



あいかわらず雲一つない晴天なのですが、すでに10時をまわっており、ガスが上がるかもしれないので、とりあえず出発することにします。






途中槍ヶ岳が顔を出したりして、二人で写真を撮りながら、急いでいるつもりの割りには、結果ゆっくりと登っていきます。
(Nさんはフィルムの一眼レフに単焦点というかなりマニアックなカメラをお持ちです)


槍沢小屋を越えてからようやく標高が上がり始めました。本日は上高地の1560mから南岳の3033mまで、1500mほど登るのですが、そのほとんどはここから一気に立ち上がる登り坂ということになります。





ただ、標高が上がりはじめると、すぐに紅葉地帯に突入し、むしろ気分が盛り上がってきます。








ほんと、この一瞬だけの景色ですね。






テン場を通過。ここも気持ちよさそうな場所ですね。涸沢に比べて空いてそうですし。







その後もカールを眺めながらの快適な歩き。大自然を感じたかったので、Nさんと離れて歩きます。(右の方に小さく写ってます)








ここが最後の水場だと言うので、喉を潤し、水筒2リットルを満タンにします。







いやぁ、しっかし、ダイナミックな景色ですね!!






標高が上がるにつれ、どんどん秋色になっていきます。







上を見上げると、さらに紅葉が進んでいるのがよくわかります。









振り返ったところです。本当にすばらしい景色で、これはお気に入りのコースになりそうです。








ちっとした急登を上がったところで、槍ヶ岳方面と南岳方面への分岐に到着。ここで少し休んでから、我々は南岳方面へと足を進めます。ただでさえ人が少ないコースなのに、さらにマイナーな方向に進み始めたので、余計人が居なくなります。(というか、我々以外ほとんど誰も歩いていない状態)







おぉぉぉ、槍ヶ岳ですよ!







ちょいとアップ







さらにアップ!(笑)






どう写しても絵になる山です。



少し進むと「天狗原」なる場所に到着しました。(天狗なんとかと地名が着くところは、たいてい灌木帯の中に巨石がゴロゴロ転がっているパターンが多いです)






本日のハイライト、天狗池です。
(これだけだと、水たまりにしか見えないですよね)



どうハイライトかと言うと、、、











回り込むと、こうなるわけです。(逆さ槍)







なかなか風が収まらなかったので、徳沢園の女将さんにもらったリンゴをぱくつきながら、気長に待ち、撮影にいそしみます。

流れ込む川が無いなぁと思っていると、どうやら底から水が湧き出しているようです。


さすがに標高が上がってきたことも有り、一気に体が冷えてきたので、本日の目的地、南岳山荘のテン場に向かうことにします。






槍ヶ岳、さらばじゃ! (しつこくてスミマセン)







標高2500mを超えてくると、一気に北アルプスの山々が見渡せるようになりました。すばらしい景観で疲れも吹き飛びます。








巨石が転がる場所に出てきました。







氷河公園という場所です。

昔ここは氷河で、それが削り取った石が転がっているのでしょう。







さて、ここから南岳まではひたすら登るだけなのですが、なぜか、というより、燃費の悪い私は当然のごとくシャリバテ状態に陥ります。


ウエストポーチに菓子パンが入っていたのを思いだし、Nさんの後ろをくっついて登りながら、菓子パンをぱくつきます。



しかし、歩きながら食べたのがまずかった。



菓子パンは喉の通りが悪く、呼吸まで苦しくなる始末。あわてて小屋で買ったポカリを飲んで息を整えます。
登りながら食べるのは半分で諦め、あとはドライマンゴを噛りながら、糖分も補給します。


ご飯は食べるとすぐに力が沸いてくるのですが、パンはやや時間がかかります。(私の場合)






しばらくシャリバテ状態で(Nさんには気付かれないように)ヒイこら言いながら登ります。
(本日歩いた明神、前穂方面を見渡していますが、頭の中は夕飯の事でいっぱいです)





ようやく稜線が見えてきた頃に(見えてきたからか)足が動くようになってきました。

しかし、菓子パン半分では空腹感は取れないままです。








岩場の登りは空腹にこたえます







Nさんはこの道は初めて登るらしく、雄大な眺めに感動の声をあげながら歩いていますが、私にとっては、シャリバテ&菓子パン喉つまりの道になってしまいました。



いつか、天気がよく、お腹が満たされた日にまた登ってみたいものです。








最後は空腹ハシゴやら








空腹鎖場を超えて








空腹稜線に到着しました。




さすがに時間も時間なので(16時前)、かなりガスってます。




ちょうど槍ヶ岳から歩いてきたというご夫婦が休憩中で、Nさんが声をかけて話し始めたので、私はすぐに残りのパンを腹に放り込みます。









晴れたりガスったりする中、すぐ側にある南岳の山頂に向かって歩いていきます。







南岳山頂です。






そこからちょいと下れば南岳小屋。(16:30)



幸い風もたいしたことは無いので、さっさとテントを張り、トイレを済ませて食事の準備を。。。



その前に、大キレットの様子が気になるので、カメラを持って展望のきく場所に歩きます。





さて、どんな感じでしょう、大キレット。











あれ?







ガスが取れるまで、待つことしばし












お、顔を出し始めましたよ!! (北穂の山頂付近)










おぉぉぉぉ、だんだんガスが取れてきた!









あらららら、またガスの中へ、、、











おぉぉぉぉ、今度こそ!









すっげぇぇぇ、かっちょいぃぃ!




ちなみに写真中央、北穂の手前にこちらに向かって伸びているそそり立った岩場が明日歩く大キレットです。









私以外にもNさんはじめ、何人かの登山者が狭い岩場に立って、この雄大な景色を眺めています。
(写真は日没後に撮影)



そんな場所で、ガスが取れたりかかったりするのを一喜一憂しながら写真を撮っていると、




「スミマセン、スミマセン、写真を撮らせてください、スミマセン、スミマセン」



と頭を下げながら、中学生ぐらいの子が歩いてきて、写真を撮っている私の前に立ちます。


言い方は実に丁寧なのですが、やってることがむちゃくちゃです。


まぁ、一枚撮るぐらいなら、と、大人の余裕を見せていると、どうやらそこに陣取って、しばらく撮る気構えのようです。


大人の余裕を見せてしまった手前、中学生の子に文句を言うわけにもいかず、わたしはガスが急に取れないか気にしながら、別の立つ場所に移動します。(Nさんに少し場所を開けてもらいました)



すると、小屋のあるじが出てきて、



「そろそろ夕飯の時間ですので、小屋に御戻りください」



と叫んでいます。


ちょうど雲がとれかかってきたタイミングだったので、最初は誰一人動かなかったのですが、小屋のあるじが何度も呼ぶので、一人、また一人と小屋に戻っていき、最後は「スミマセン中学生」とおばちゃん一人が1分ほど粘り、最後はぶつくさ言いながら、戻っていきました。

私はそれを大人の余裕(テント泊なので関係ない)で微笑みながら見送ります。








というか、お腹はぺこぺこで、夕飯という言葉に反応しまくりだったのですが、この景色を目の前にしてますからね。














そして、小屋泊組が小屋に戻ってから10分後、ようやく一瞬だけガスが切れました。



ちなみに、呼びに来ていた小屋のあるじも我々の後ろに立ってHP用の写真を撮っており、当然のことながら激写中の私が小屋のブログで大公開されております。





すっかり陽が傾いてきました。








最後は夕日まできっちり堪能してからテントに戻ります。







Nさんのテントです。
2.5人用なので、2人には十分な広さがあり、すごく快適です。








暗くなって寒くなってしまったので、テントの中でヘッドランプの明かりで料理をこさえます。


自分一人だったら絶対にやらないような、(山では)精一杯凝った料理を準備してきました。


(それでレトルトかよ! って突っ込みは無しでお願いします)


「じゃがりこ」のお湯戻しマッシュポテトウインナー和えとか、魚肉ソーセージハンバーグを焼いてみたり、おにぎりとシーチキンでチャーハンを作ってみたり、普通の料理(カレー)に三品ほど加えてNさんに腹一杯食べてもらいました。


ちなみに私は軽量化のため写真のレトルト中華丼だけです。



ここでひとつ気付いたのですが、山でする料理って意外と楽しいんですよね。軽量化と味の工夫、コッヘル一つで進める料理の手順とか、、、

いつもは面倒くさがってインスタントラーメンとかα化米とかで済ませてしまうのですが、もうちょっと考えてみようと思うきっかけになりました。

(ちなみに下山後にさっそく近くのスーパーで調味料を少し買ってきました)


まぁ、今回は料理担当だったので強制的にいろいろ持って上がりましたが、次回から一人だったら、また前の食事に戻ってしまうかもしれません(笑)




すっかり体を温め直してから、最後に小屋で買ったビールで乾杯して、その後シュラフに潜り込みました。



目覚ましをセットしているのですが、何やら見かけないデザインです。

尋ねてみると、なんとNさんはキッチンタイマーを目覚ましに使っていました。(起きる時間から残り時間を計算して入力しています。計算するときに「何時間寝れるかわかるからいいよ!」と言ってましたが、正直私は計算間違えしてえらいことになりそうなので真似はしないと思います(笑))



ここで、Nさんのザックがでかくて重い最大の原因が判明しました。



ようは、テントとシュラフが古くてでかくて重いのです。シュラフはオートキャンプなんかで使うサイズです。


これを最新の物にするだけで、たぶんもう一回りザックを小さく軽くできると、二人で話をしました。


ちなみに、ベテラン登山者のNさんが私の装備を見て、来年までに購入したいと言っていたのは、ストック、エアマット、テント、シュラフでしょうか。



標高3000m付近のテン場、気温は0度近いと思うのですが、風もそれほど吹いておらず、羽毛ダウンと羽毛シュラフだけでも十分温かったです。

レーシックの手術を受けたばかりのNさんは夜空を見上げて、「裸眼でこんなに見えるなんて!」と感激しております。


私もレーシック手術に興味を持ち、いろいろ話を聞きながら眠りに就きました。(21:00)



後編につづく