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前回のつづき
カーナビが使えないのは、時間の限られた今回のドライブでは致命的。(というか、レンタカーにはナビがあると思っていたので、ろくな地図も持っていない状態)
仕方がないので、一旦受付まで戻ります。
例の女性スタッフが対応してくれたので、事情を説明します。
やはり、ここでもうまく状況を伝えられず、最後には完全に笑顔の消えた彼女がポーチを手に持つと、駐車場に向かって歩き始めたので、私もその後を付いていきます。
「BMWだったんですね」
と、話しかけてみると
「えぇ」
と、予想通り無表情に答える彼女。
車に到着すると、彼女が助手席に乗りこんだので、私は運転席に乗り込み、エンジンをスタートさせて画面を指さします。
すると、なぜか急に笑顔になった彼女はポーチを私に手渡し、
「これを使って」
と言って、さっさと車から降りていきました。
そして、DVDが入っているのかと思ったそのポーチには、

小型のナビが入っていました。
シガーライターに入れると、フランス語のメニューがスタートしますが、工具のマークを選択し、言語設定らしきものを探すと、なんと英語以外にも日本語モードがあるじゃないですか!!

やった〜、これは助かる!!
すぐに目的地を入力。
しかし、ナビの操作に慣れておらず、これにもけっこう手間取りました、日本語モードですらこの体たらくですから、英語、ましてやフランス語モードだったらと考えると、ぞっとします。
なんとか市街地をよけてパリを抜けるルートを作成し、予定より1時間以上遅れて出発しました。
出発したはいいけれど、いきなり出口を間違えて、関係ない他の駐車場に潜り込んでしまい、そこに居たスタッフに脱出方法を教えてもらうはめに・・・
こういう時はジェスチャーで何とかなるもんです。
気を取り直して、まずはフリーウェイに乗ります。

フランス名物の夕日を眺めながらフリーウェイを走ります

iDriveを適当に弄ってみますが、全然何がなんだかわかりません。
ちょうど、吸盤で貼り付けたカーナビが、けっこうな頻度で外れて落ちていたので

ここに入れることにしました。
う〜ん、完璧!!

そしてパリの郊外に逃げてはいるのですが、それでもかなりの渋滞。これでも土日はマシなのだとか。
明日、スムーズに車を返却して飛行機に乗れるかどうかが気がかりです。
1時間ほど走ってパリ郊外を離れると、ようやく流れ始めました
東京の首都高と同じぐらい右へ左へ分岐するので、カーナビが無ければ百パーセント迷うところでした。
(看板の上にA60とか道路のナンバーが表示されているので、それを追いかけると良いと思います)

お、NC!
(4日間で見かけたロードスターは2台。両方ともNCでした)

ちょっと緊張していたのですが、だんだん慣れてきました。
盛り上がってきましたよ〜!
改めてメーターをよく見てみると、燃料計のところにDieselと書かれています。
ここでようやく自分がディーゼルエンジンの車に乗っていることに気がつきました。
さすがヨーロッパ。
ディーゼルエンジンはトルクが太くて楽ですね〜。そして、新しいだけあって静かで滑らかです。
車の外に立ってエンジン音を聞かないとディーゼルだと気付かないと思います。

フランスの高速には日本の高速と良く似たガソリンスタンド付のサービスエリアがあります。
こんな感じの食堂もついてます。

サービスエリアでフランス料理!!
って、思っていたら、なんと、すべて不味かった・・・・・・(いわゆる、大量生産、冷凍系の味)
しかも、2000円ちかくするんですよ。
フランスでは何を食っても旨いのかと思ってました。(笑)
パンは食べずにとっておき、明日の朝用にサンドイッチを購入した売店で紙袋をもらってその中に入れておきました。
あと、ジュースの種類が少ない! 果汁百パーセントジュースとかあればそれにしようと思ったのですが、なんか健康に悪そうな色をしたジュースと水ぐらいしか売ってません。
日本ってつくづく便利でいろいろな物が揃っている国なんだなぁと思いました。
しばらく高速を走っていると、カーナビが高速を降りるように指示を出します。
目的地は遥かかなた、不思議に思いながら降りていくと

料金所が待っていました。
事前にパリ郊外の高速は有料だと聞いていたのですが、本当にお金取られるんですね。
(持ってきた現金、足りるだろうか・・・)
なんだかよくわからないまま、下道を走ります。
カーナビの縮尺を広域にしてみると、しばらく走って再び高速に戻るようです。なるほど。
市街地を抜けて畑の真ん中を走り始めたので、試しに車を停めて外に出てみました。

ま、マジ・・・・
360度ほぼ地平線、そして天球には北アルプスの山頂で見るのと寸分たがわない天の川と無数の星々。
まだ、パリからそんなに走っていないと思うのですが、これには本当に驚きました。
すっげ〜、フランス!!
どうやら、ヨーロッパの認識(女性が行く観光地)を改めなければならないようです。
再び高速に戻ります。
入り口でチケットをもらいましたが、しばらく走ると料金所が登場し、またお金を取られます。(15ユーロぐらい)

パリからな離れると、車の量もずいぶん減りますね。
制限速度も130kmなので、かなり快適に走れます。
途中、たくさんオービスのような無人撮影装置があるのですが、すべてカーナビに登録されているらしく、事前に知らせてくれます。
(と言っても、スピードオーバーせずに走っているので、関係ないんですけど、下り坂とか急に制限速度が変わったときなどに助かります)
しかし、先ほどからカーナビの到着予定時刻が午前2時になっているのが気になります。(目的地までの残りの距離数が表示されないのです。やり方はあるのだと思いますが、あえてしませんでした)
時速130kmで走っているのに、なんでそんなにかかるんだろうと、不思議に思いながら、カーナビの縮尺を広域にしてみます。
やはり、全行程の数分の1しか移動していないことがわかります。
ということはですね、目的地が私が思っているより遠いんじゃないでしょうか・・・
ちょっと見てみましょう。

実は目的地に近づくまで気付いていなかったのですが、軽く600km弱の道のりを24時間で往復する計画を知らず知らずのうちに立てていたのでした。東京北部から青森南部ぐらいまでの距離があります。(自宅から青森だと600kmオーバー)
なぜ、こんな無謀な計画を立ててしまっているのか・・・
理由は3つ。
一つは天気予報で南に行けば行くほど晴れ間に当たる確率が高いと出ていたから。
二つ目はリモージュという都市まで400km弱、高速を130km平均で走れれば、三時間の距離。目的地はリモージュのちょいと先に有るので、すぐに着くだろうと思っていたから。(実際には目的地はリモージュの100km以上先で、さらに下道をかなり走ったところに目的地はあります。地図を都合よく見てしまっていたようです。Googleで検索してみたら577kmでした)

3つ目はフランス南部に広がる山岳道路を走ってみたかったから。
(本当は右下にあるスイスとの国境付近に広がるアルプスの峠道を走ってみたかったのです。ただ、さすがに24時間で往復するのは無理だろうと思って端から諦めていたのですが、良く見たら、それに匹敵するぐらい走ろうとしてますね)
ちなみに、目的地の右側に広がる薄い茶色で示されている山々は火山地帯です。夜中のうちに目的に着いておいて、右の山脈を通ってからパリに戻り、夕方の便に飛び乗る計画でした。
さて、実際の私はそんな無謀な計画であることも知らず、なんか遠いなぁと思いながら高速道路をひたすら南下していきます。
ただ、行きにかかった時間はちゃんとカウントしていました。逆に言えば、帰りにも渋滞込みで同じ時間が必要になるわけで、目的地付近を出発すべき時間はそこから逆算できるはずです。
もし、目的地に午前2時に着くぐらい時間がかかるのだとすると、12時頃には高速に乗って北上を開始していないと、間に合わない計算です。
太陽は8時過ぎに昇ってくるので、実質現地で楽しめるのは4時間弱といったところ。ちょっと往復に時間をかけすぎちゃっている感じです。
そして、リモージュやその先にある高速の降り口までの距離が表示されて
そんなことを考えながらも南へ南へと走り、途中1時間ほどサービスエリアで仮眠を取ってから、午前2時前に高速道路を降りました。
どうやら、カーナビの目的地までの所要時間計算は正確なようです。
そして、高速の出口には料金所が見当たらず、ここでようやく数百キロ走った分が無料だったことが判明し一安心。
念のためガソリンスタンドでガソリンを入れておこうと思ったのですが、深夜に開いていた無人のセルフスタンドでは、手持ちのカードでは受け付けてもらえませんでした。こんなときはVISAなどのカードを複数持っていた方が安心ですね。(私のカードはマスターカードでした)

人の気配のない街を抜け

広大な畑のど真ん中を走っているらしいのですが、街灯がないので、まったく周囲の状況がわかりません。
そして、空にはあいかわらずの天の川。
寂しい道をカーナビに誘導されて、南へ南へとどんどん進んでいきます。

お、綺麗な街ですな

途中からえらい細い道に誘導されます。
ほんまかいなと思いつつしばらく走っていると、結局元走っていた道に戻ってきました。
どうやら、このカーナビは距離最優先モードになっているらしく、ちょっとでも短い抜け道があると積極的にそちらを使うように設定されているらしいです。

走っている車ともほとんどすれ違わない田舎にも、夜中にえらいにぎわっているところがあったので、ちょいと立ち寄ってみました。
こんな時間に軽く百台以上車が駐車場に停まっています。

いわゆるクラブでした。
よそ者が気軽に立ち寄る雰囲気ではなかったので、早々に退散しました。

この細い道を15分ほど走ったところに目的地があるのですが、この先に駐車スペースがあるかどうかわからなかったので、事前にチェックしておいた付近にある公園に戻ります。

ベンチと便所ぐらいしかない小さな公園ですが、ここなら車を停めておけるので、ここで仮眠を取ることにします。
すでに3時をまわっていますが、日の出は8時過ぎなので、ゆっくり寝れそうです。
トランクから登山で使うダウンベストを取り出し着込みます。

緯度で言うと、ちょうど今、北海道の最北端、稚内に着いたぐらいです。
車に着いている温度計によると、現在の気温は2度。
エンジンを切ったら一気に冷え込みそうです。
サービスエリアで買ったパンを噛りながら、Les plus beaux villages de Franceを開き、明日の行程を考えつつ眠気に襲われるのを待ちます。
そして、革張りのシートを倒せるところまで倒し(ほぼ水平にならんばかりの勢い)、目を瞑りました。
おやすみなさい。
朝6時過ぎに目が覚めました。
外は真っ暗です。
そして、天の川が見えないどころか、周囲は深い霧に包まれ、30m先も見えない状態です。日の出とともに晴れてくれれば良いのですが・・・
カーナビの時計が何故か勝手に1時間ずれていたので、設定モードで直しておきます。
しばらくガイドブックを眺めたりして時間を過ごしていたのですが、とりあえず目的地まで出かけてみることにします。

ISO1600で撮影しちゃったのでわかりにくいかもしれませんが、断崖絶壁が迫る村に到着しました。
ちゃんとライトアップされてますね。

う〜む、これは霧が晴れてくれないと全貌を見渡せないな〜。
というか、早く太陽昇ってくれないかなぁ。

お、ちゃんとガイドブックと同じマークの看板があるじゃないですか。

さて、今回購入したこのガイドブック。写真を見ているだけでもワクワクするような美しい村がたくさん紹介されています。
(本屋で開いてみて、その写真にノックアウトされて即購入したのです)
そして、そのほとんどがフランスの南部に集中しています。
現地で本を購入した時はただ単に美しい村を紹介するガイドブックぐらいの認識で居たのですが、看板がちゃんと有るとおり、これがかなり
オフィシャルな扱いを受けているものであることがわかってきました。
美しい村を巡る旅、フランスっぽくて良いですよね。
日本に帰国して
Wikiぺディアで調べてみたところ、その選定基準もかなり厳密に運用されていることがわかりました。
日本百名山みたいなもんですかね。(あれは一人で勝手に決めてしまってますが)
目の前を川が流れているので、ちょいと反対側にまわってみることにします。
2kmほど先に橋がかかっていたので、そこから反対側に渡り、再び川に向かって伸びる道に入っていきます。

フランスまで来て砂利道を走ることになるとは思いませんでした。
(自分の意思で喜んで走っているわけですが)
ただ、このBMW520D、恐ろしいほどのバネとサスの働きにより、砂利道を走っている振動をまったくドライバーに伝えてきません。これには心底感心しました。

結局、地図もカーナビもあてにならない分岐がいくつかあって、川にたどり着くことが出来ませんでした。霧が晴れていれば根性で進んだのですが、進んだところで・・・という感じなので、一旦引き返します。
そんなことをしているうちに、大分明るくなってきました。

村に戻ってきました。

ガスっていますが、雰囲気満点です。
ちなみに、
La Roque-Gageacという村です。
近くに他にも紹介されている村があるので、そちらに移動してみます。(こちらが本命)

こちらにも看板が着いていたので、オフィシャルであることを確信しました。

お〜、こちらも雰囲気満点!!

ただ、ここも本当は川の反対側から見下ろす感じで写した写真が本で紹介されていて、霧が晴れていればな〜という感じではあります。
(
Beynac-et-Cazenac村)
またいつか機会があったら、紹介したいですね。(晴れていたらどんなんか見てみたい人はこちらの
サイトをどうぞ、最初に訪れた村は
こちら)
(あと、ひと村、最低数時間散策しないともったいない感じです)
さて、この霧、どう考えたら良いのでしょう。
カーナビの試算が正しいと仮定すると、私に残された時間はあと3時間を切っています。
粘ったあげくに霧が晴れなかったら目も当てられません。
風もまったく吹いておらず、気温がぐんぐん上がって来ないと、霧は取れない感じがします。
ならば、山岳ドライブという手もあるのですが、ようやく地図のスケールの読み間違いをしていることに気がついたので、それは時間的に無理そうです。
近くにラスコー洞窟の壁画(見学可能なのはレプリカ)があって、人類史が大好物の私としては是非行きたいところなのですが、こちらも見学にけっこうな時間が必要とのこと。
パリと現在地の中心からちょいと離れたところに、是非訪れてみたいガイドブックで紹介されている村があるのですが、カーナビで検索してみると、時間的に足りないみたいで、こちらもムリ。
とにかく霧の中に居続けてもしょうがないので、まずはパリに向かって下道を走りつつ、適当ドライブをすることにします。

平野部に戻れば、天気予報通り快晴が広がっているのでしょう! (と信じたい)

霧の中ではありますが、日本では見られない景色に大喜びです。

普通の街ですら絵になりますね〜
カーナビには高速の入り口までのナビを設定して有るのですが、例によって細いショートカット(?)ルートに誘導されていきます。
明確な目的も無く勝手気ままに走っているので、そのまま細い道に入っていくと、ショートカットルートは丘を駆け上がっていくようです。

この道、大正解。 だんだん霧が薄くなってきました。
そして、カーブを抜けたところで目の前が急に明るくなり、霧の向こうに突然太陽が姿を表しました。

お〜、これは神秘的!
今日は日の出を楽しめないかなぁと思っていたので、感激もひとしおです。

そこからしばらく走っていくと、だんだん霧が取れてきました。
もしかしたら、さっきの村に戻った方がいいかも、、、と思っていたのですが、

どうやら、自分が霧の上に上がってきただけのようです。
相変わらず低いところは霧の海の中です。
これで、諦めがつきました。
また、いつかドライブしに来ましょう!
そして、霧は霧で良いこともあります。

神秘的な光景が四方八方に広がっているのです。
ついつい車を降りては撮影しながら走っていきます。

道は丘を超えて、再び霧の中へと降りていくようです。

カーナビが指定した道幅の狭いショートカットルート、なかなかドラマチックな展開を見せてくれます

カーブを超えるたびに広がる景色に感動しながら走っていきます

本格的に、霧の範囲外に出てきました。
昨日の夜は、たぶんこんな所を走っていたのでしょうね。

ん? まだ少しガスってますかね?
いずれにしろ雰囲気抜群です。

いやぁ、フランスって美しい国ですね。
ここまで走ってきて良かったです。
パリにしか居なかったら、この良さには気付かなかったと思います。

お、ロバの親子ですな。

そら、おいしい草だよ!
って、食べないのかい。
(下に置いたら、すぐに食べてました。警戒されていたようです。粘れば手から食べてもらえたと思うのですが、、、)

目の前にはこんな景色が続いております。
しかし、ぶらぶらしていられる時間は残り2時間を切りました。
さてさて、どうしますかね。
つづく