週末雑記 宮城(伊豆沼、蕪栗沼)、岩手ツーリング 前編
i
忙しいかと思っていた週末も、意外にも平日だけでも何とかなりそうな感じになったので、木曜の夜に早速計画を立て始めます。
どうやら太平洋側を中心に2日間とも晴天が続きそうな感じ。
それならば、今しか行けない場所に行っておこうと思い、会社を出てすぐに東北道を北に向かいます。
目指すは宮城県北部の伊豆沼。野鳥観察で有名な場所で、今回はマガンの飛び立ちの瞬間に立ち会うのが目的です。
いつもなら、どこかのサービスエリアで一晩を過ごすのですが、今回は軽く休憩だけにして、一気に伊豆沼まで駆け抜けます。
夜1時過ぎに高速を降りました。
天の川が見えるってほどではないですが、満天の星空です。
伊豆沼にはすぐに着きました。
どこが撮影ポイントか、そしてどこに駐車しておけば良いのかがよくわからず、適当に検討をつけ、田んぼのあぜ道へと下る坂の脇に車を登り状態にして停め、車ごとリクライニングした状態で寝ることにします。
今回は寒い夜を越えることを想定していたため、山用の股引をはいてダウンジャケットを着込み、さらにはシュラフを肩までかぶって就寝します。
おやすみなさい。(2:30am)
土曜日
横に車のエンジンが聞こえ目を覚まします。(5:30am)
どうやら、空が少しずつ明るくなり、カメラマンが集まってきたようです。
撮影ポイントはここであっているらしく、すでに沼と平行に三脚が2本ほど並んでいます。
私もすぐに車から飛び出します。
(写真は他の車のライトに照らされる坂に停めたロードスター)
すでに並んでいる2つの三脚から撮影アングルを想像し、持参の安い三脚をとりあえず設置します。くコンパクトカメラ用に使う1000円ぐらいの丸いカチカチっと3段ぐらい伸びるやつで、去年、NZに行くときに買ったものですが、今まで一回も使わずじまいだったものです。
そこにコンデジをつけてビデオ撮影用にします。
少し空が茜色に色に染まってきました。
気温はたぶん0度前後。(この日は例年に比べ、少し暖かかったと思います)
山用のダウンジャケットに股引、船に乗るときに買った耳当て、sutakoさんにいただいた赤い手袋を装着して、伊豆沼沿いの土手に立ちます。
たぶん、沼の中央に見える黒いつぶつぶがマガンなのでしょう。さすがにまだ飛び立ってはいないようです。
ショータイムが始まる日の出まではまだ30分以上あるので、これまた持参した湯沸かしセットでお湯を沸かし、寒天スープをいただくことにします。
んが、しかし、昨日の朝、出社前にあわててパッキングしたせいで、持ってきたのは夏用のガスボンベ。
この気温ではガス圧が上がらず、1分も経たないうちに火が消えてしまいます。これは完全に大失敗。
あきらめて撮影に集中することにします。
どんどんカメラマンが集まってきて、すでに大砲がずら〜っと並んでいる状態。
安物の三脚にコンデジ、手には古いデジイチを持っているのは私ぐらいなもんです。
とりあえず、前知識が無い上に飛び立ちは一発勝負なので、隣で大砲を構えているおじさんに話を聞いてみることにします。
ラッキーなことにおじさんは会社への出勤前に毎日ここに通われている常連さんなのだとか。
しかも、親切にいろいろ教えてくれます。
通常、日の出前後に飛び立ちが始まり、だいたい3グループぐらいに分かれて飛び立つのだそうです。
ちなみに、おじさんのカメラ(先ほどの写真で手前に写っているカメラ)はフィルム一眼レフにニーニッパ(200mmF2.8)のレンズ、さらに2倍テレコン装着で400mm相当になっているそうです。
私は77mm(実質115mm)の単焦点をつけているので、私のより4倍望遠ということになります。
日の出とセットの時は手持ちでは一番焦点距離が長い(望遠の)77mm単焦点、その次の飛び立ちでワイドレンズに付け替える予定です。
日の出まであと15分、にわかに空が騒がしくなってきました。
おじさんによると、どうやら蕪栗沼(かぶくりぬま)やら内沼などほかの沼を先に飛び立ったグループが飛んできているのだとか。
綺麗に並んで飛ぶもんだなぁと眺めていると、突然、それに釣られたのか一部のグループの飛び立ちが始まりました。
右奥、いよいよ第一弾です。
すると、突然マガンの騒々しい鳴き声に混じって、「ブワ!」という音が聞こえたかと思うと、黒い点の固まりが横一線に宙に浮かび上がります。
あれ?
全部飛び上がってるんじゃない?これ。
うわ、コンデジのビデオ録画スタートさせるの忘れてた!!
あわてて電源を入れて録画ボタンを押したものだから、三脚が一本短くなってしまい、傾いて地面を向いているは、露出が昼にあわされて明るくなっちゃってるは(編集ソフトで多少補正しました) で何ですが、何も記録しないよりはマシと思って撮影した動画は以下の通り。
動画の通り、思っていた以上にスピードが速いですし、こちらに向かってまっすぐ飛んできます。
広角レンズに交換するとか、そんなことを考える前に頭の上を数万匹のマガンが飛び越えて行きます。
空を見上げるとすべて同じ方向に飛ぶマガンで視界が埋め尽くされます。
昔、
オムニ
マックスシアター
という全天周型の映像が科学館とかで流行ったことがありましたが、まさにあんなかんじです。鳥が飛んでいるのか、自分が鳥と反対方向に進んでいるのかわからなくなるぐらいの量です。
いやぁ、すごい!
感動しました。
マガンが飛び去り、しばしの沈黙の後、おじさんがぼそっと一言
「こんなことは珍しいよ」
と、つぶやきます。
なんでも、普通は最初に聞いていたとおり3グループぐらいに分かれることがほとんどで、これだけ一斉に飛ぶのはおじさん自身も初めて見たのだとか。
日の出とセットで見れなかったのは残念でしたが、迫力の面ではすばらしかったですし、わざわざここまで来たかいがあるってもんです。
それでも、まだほんの少しマガンが残っているようでしたので、
こんな写真(白鳥の飛び立ち)
あんな写真(少しだけ残っていたマガン)を撮りながら、おじさんと、お話をしつつ時間をすごします。
さて、朝のショータイムが終わってしまったので、東北ツーリングに出かけるとしますか。
なんせ、東北のど真ん中まで来てますからね。
と、言いつつ本日のメインイベントはまだあります。というのも、朝の飛び立ちの逆で、夕方日の入り後にマガンの「ねぐら入り」というイベントがあるのです。
朝は伊豆沼で飛びたちを見たので、夕方は蕪栗沼でねぐら入り見ようと思っていたのですが、有名な景勝地である伊豆沼と違って、蕪栗沼の方はカーナビで探しても、まずは沼自体を見つけるのに苦労し、さらにアプローチの道がはっきりしない様子。
蕪栗沼自体はここから近くにあることですし、本番直前に道に迷って間に合わないなんてこが無いよう、実際に行ってみることにします。
(私にしては、用意周到)
このあたりは大田園地帯が続いていて、スケールのでかい景色になっています。
遠くに栗駒岳が見えています。(私がこの歳になって登山を始めるにあたり最初に登った山であり、先般の地震で被害の大きかった地域です)
蕪栗沼の案内も控えめに出てはいるのですが、どの道をさしているのか、いまいちよくわかりません。
カーナビではすでに田んぼの上を走っていることになっています。
結局、途中で道がよくわからなくなってしまったので、適当に田んぼのあぜ道を走り始めます。
あちらこちらで、マガンの群れが田んぼでお食事中らしく、ロードスターが近づくと、「ブワ」っと音を立てて一斉に飛び立ちます。これがまた、大迫力。
マガンは鴨ぐらいのサイズの鳥かと思っていたのですが、二回りほど大きいんですよね。
ちなみに後で知ったのですが国の特別天然記念物なんだそうです。
さて、その後、土手の道をしばらく走って、ようやく蕪栗沼の駐車場を発見しました。
案内看板によると、観察ポイントまではここから歩いて30分。道迷い分も含めて、先に場所を確認しておいてよかったです。
さて、場所も確認しましたし、夕方まではフリータイムです。
では、早速ドライブに出かけるとしますかね。
まずは、適当に県道や農道をつなぎながら岩手方面を目指します。
途中通過した町のコンビニでメキシカンなファーストフードを購入し、朝飯にします。
県道表記が190号線というナンバーではなく
「県道石森永井線」
と漢字表記になってます。
ちなみに、伊豆沼のすぐ近くに石森町という町があるのですが、そこが石ノ森章太郎の出生地だったりするみたいです。
(
石ノ森章太郎ふるさと記念館
というのがあって気がつきました)
しばらく走っていると、カーナビに牧場の文字が見えたので、そちらの方へと進んでいきます。
まったく気がついていなかったのですが、すでに岩手県に入ったようです。
そう、岩手と言えば柿
じゃなくて、牧場巡りなんですよね!(下のフッター画像も岩手の牧場です)
さらに、他の牧場を遠くに発見し、そちらへと続く藤沢町の広域農道を走っていきます。
再び栗駒山です。(舘ヶ森)
セイタカアワダチソウの向こうに、牛舎が見えてきました。
というわけで、当然牛君がいるわけです。(中央やや上、黒いの)
一匹だけかと思ったら、たくさん出てきました。
さらに、私に興味を示して寄ってきました。
正確に言うと
私が手に持っている草に興味があるわけです。
時々立ち止まりつつ、こちらに近づいてきます
興味津々ですな。
はいよ〜、新鮮な草だよ〜
さぁ、お食べ〜
って、なぜに君は横を向く?
臭いはかぐものの、口には入れてくれません。
なんだかんだ、けっこう警戒されているみたいです。
いったん離れて草の量を増やし
再度、勇気のありそうな牛に草を差し出してみると
ようやく食べてくれました。
(誰ですか? 牛タン! とか言ってる人は)
それでは、もうちょい北へ進みますか。
道ばたで休む牛に癒されつつ(県道21号線)
信号も無ければ対向車も居ない県道を堪能し(農免農業用道路 藤沢川崎線)
縄張りか雌を巡って車のすぐ上で激しく争うトンビを興味深く眺め
栗駒岳(左)から岩手山(右)まで連なる山々を愛でつつ、
ひたすら岩手県の山中を北へ北へと向かいます。
そして、貎鼻渓(げいびけい)なる場所に到着しました。
船に乗って観光するらしいのですが、ここでのんびりするつもりもなかったので、早々に退散します。(船に乗っているのはすべて中国の方々です。船の後ろに小さく写っているのは船を追いかけるカモ)
ちょうど観光地らしく、岩手の観光地図看板があったので、それを眺めながら次の目的地を決めます。そこに行くと、帰りが厳しくなってしまうのですが、高速道路で戻れば大丈夫でしょう。
というわけで、レッツゴー!
基本的に時間が足りない気味になってしまったので、朝飯に引き続き昼飯もコンビニですませます。
(国道456号線)
若い女性の店員さん(東京では珍しい)に
「おにぎり温めますか?」
って尋ねられると、東北に来たんだなぁと実感します。
気持ちよい快走路を走りつつ、さらに北へ北へと向かいます
途中で目的地(左奥)が見えてきたのですが、なにやら白っぽいものが・・・
あれ、雪ですよね? やっぱり。
(県道104号線から県道10号線へ)
今日は気温も高いし、今のところ雪がありそうな気配も無いし、大丈夫そう
ってことは、まったくありませんでした!
日向なら大丈夫ですけど、日陰はやばい!!
県道のみならず、国道もけっこう残ってました。
(国道と言っても397号線ですが)
こりゃぁ、夕方以降は夏タイヤじゃ無理ですね。
ここから、県道水沢人首住田線に入っていきます。
当然、雪は残っているのですが、まだアスファルトが出ているので大丈夫です。
慎重に慎重に進んでいきます。
やがて、視界が開けていき、目的地である 種山高原が見えてきました。
お〜、ここはなかなか爽快な場所です。
背後もこんな感じで広々とした景色が広がっております。さすが岩手!
前方に山頂らしき場所と気象観測所みたいな施設が見えているので、近寄ってみます。
車を停めると、前方に山頂らしき標識が見えています。
すでに足跡がついていて、雪も浅そうなので歩いてみます。
物見山山頂です。(一等三角点がありました)
早池峰山方面。晴れていれば東北の山々が見渡せるのだとか
仙台方面。(左にロードスターが小さく写ってます)
さて、では、もうちょっと先に行ってみますか。
って、さすがにこれ以上は無理なようです。。。
いったん国道まで戻って、他の道にもチャレンジしてみましたが
こちらも、スノーシェッドである程度は守られているものの
最後はやはり雪地帯になってしまい、あえなく撤退
木陰はこんな感じなので、歩くようなスピードでゆっくり下ります。
では、そろそろ高速に乗って蕪栗沼に戻りますか! (国道397号線)
一気にワープ!
良いペースで戻ってこれたので、まだ時間に少し余裕があります。
ですので、適当に寄り道をしながら蕪栗沼を目指します。
蕪栗沼の駐車場に着きました。
こちらはマイナーなためか、私以外に車が停まっていません。
間違えたかと思い、ちょっと心配になりかけたところに、他の車が市大は行ってきたので、少し安心しました。
ガイド図に従い、沼の周囲に延びる道を歩いていきます。
歩いても、歩いても沼らしきものが見えてこないので、いいかげん不安になってきたころで
遠くにカメラマンたちと蕪栗沼が見えてきました。
(反対側にもう一つ駐車場があって、皆さんそちらに停められているようでした)
まさに、日が雲に沈もうとしています。
遠くからぼちぼちとマガンが集まってきているようですが、まだ聞いていたような大迫力の光景にはほど遠い感じです。
太陽は残念ながら完全に雲の中に沈んでしまいました。
例によって、隣のおじさんに声をかけてみると、このおじさんは本日2回目の雁行(と呼びます)なのだとか。
ただ、鳥に関しての知識は豊富なようで、マガモの生態などを教えてくれます。(マガモの飛び方を「品がない」と評したのには笑ってしまいましたが、実際2回りほど小さいだけあって、せわしない飛び方をしますが、やはり群れが頭上を飛び抜けるときは「ブン!」という音がして迫力があります。
さて、そうこうしているうちに四方八方からマガンの群れが集まってきました。
しかし、蕪栗沼に着水する様子は無く、気のせいか背後の別の沼に集結しているような気がします。
時折、後ろから鳴き声とともに「ブワ!」と一斉に飛び立つ音が聞こえるのですが、こちらに来る様子はありません。
そして、そのまま待つこと30分。目の前の蕪栗沼にはほとんどマガンの姿が見あたりません。
すっかり暗くなった中、周りの人は三脚をたたみ始めています。
おじさんも、「なんだよ〜、後ろの沼に降りちゃったよ〜」とブツブツ言いながら帰り支度をしています。
少し離れたところで最後までカメラを構えていた玄人っぽいおじさんのところに行き
「すみません、私初めてここに来たんですけど、今日ってこれで終わりなんですか?」
と訪ねてみると
「う〜ん、そうみたい。」
という返事。
後で調べてみたところ、飛んできたマガンはいったん背後の沼に集結し、最後に蕪栗沼に一斉に移動するらしいのですが、今日はその最後の儀式が行われなかった様子。
う〜ん、残念、また来年! ってところなのでしょうか。
ちなみに、先ほどのおじさんがネイチャーセンターの人に聞いたところによると、すべてがパーフェクトに揃う条件の良い日は、年に1〜2回あるか無いかの世界で、そんな1度や2度見に来たぐらいで、朝日と一斉飛びたちのような絶好条件にあえるとは思わない方が良いのだとか。
(あと、土日は蕪栗沼などのマガンを撮影になれていない人が近づいて早朝からとばしてしまう可能性が高いので(伊豆沼もそれにつられて飛んでしまう)、平日の快晴の日がおすすめなのだとか。(まぁ、当たり前ですね)
早朝の一斉飛びたちほどの迫力は無かったですが、これはこれですばらしい体験でした。
たぶん、背後の沼がよく見える場所に立っていれば、すばらしい光景にあえたのでしょう。
さて、私も帰るとしますか。
って、私の方向に歩いていく人は誰一人いませんし、すでに真っ暗です。
幸い、私はポケットにいつも単三一本でむちゃくちゃ明るい光を照射するLEDライトを忍ばせているので、それを握りしめて歩いていきます。(握っては居ますが、ぎりぎり夜目が効くので点けてはいません)
真っ暗な道を歩くこと30分、駐車場に戻ってきました。
幸い携帯がつながる場所だったので、まずは明日の天気予報を確認します。
太平洋側は晴れるようですが、それ以外は曇りか雨、最悪雪になるようです。
伊豆沼のあたりのメッシュ予報では、朝3時から6時まで「雨」、そしてその後晴れという予報になっていますが、日の出が6時30分ぐらいであることを考えるとかなりきわどいです。(メッシュ予報はそこまで正確じゃないでしょうし)
う〜む、どうしたもんか。
まぁ、悩んでもしょうがないので、いったん伊豆沼がある栗原市に宿をおさえて、明日は朝の天気次第で行動を決めることにしましょう。
さっそく携帯で安ホテルを探して予約を入れ、近場の温泉情報を仕入れ、車を走らせます。
適度に混んでいる焼肉屋を発見
岩手では「牛はかわいい」と言っていたのに、宮城では気持ちを切り替え「牛タンおいしい!」とご飯をいただきます。(適当に入った店ですが、地元民が入っているだけあって、おいしかったです)
さらに、お風呂で冷え切った体を温め直し (
金成延年閣
)
こちらの宿で一泊いたしました。
ここから伊豆沼まで5kmほどで、車で走って10分以内。
ネットがつながるホテルなので、自宅と変わらぬ夜を過ごし、ホテルの目覚ましは表示が壊れていたので、携帯の目覚ましをセットし、夜1時すぎに布団に潜り込みました。
つづく