8月13日(土)

朝、3時半に起床。
スパゲティ、ココア、プロテインという、いつもの朝食を手早く食べてからパッキングを済ませ、ツェルトをたたんで出発します。(4:40)

ん?
塩見岳、こんな早朝から山頂付近にガスがかかってますね。
この時点でピンと来ました。
これ、一昨日赤石岳に向かった日(ガスガス三山)と同じパターンなのです。
もし同じパターンだったとすると、山頂が晴れる可能性があるのは9時前後ということになります。
昨日、隣のテントのおじさんに聞いた話では塩見岳まで軽装装備で片道4時間切れるぐらい。(コースタイムは5時間)
私も筋肉痛時期を通り越して大分「山足」が出来上がってきたこともあり、今ならこの装備でも4時間、遅くとも4時間半ぐらいで山頂に到着できそうな気がします。
ということは、バッチリ晴天タイムに塩見岳の山頂に立てる計算です。
余裕を見て、バテない程度に少しでも急いで行こうと決めました。

なんて一人で勝手に天気予報を立てて歩いていますが、変わりやすい山の自分天気予想がそう簡単に当たるのかどうか・・・
少し見晴らしの良い場所にでかいカメラ(シノゴ)をゴツイ三脚にセットして撮影されていたおじさんが居たので、「ドラマチックな朝ですね」と声をかけたらは、「いやぁ、こんな朝日じゃどうにもならないよ」と残念がっていました。
写真目的の人はなかなか要求が厳しいようです。

お、富士山。

塩見岳山頂付近のガスを常に気にしつつ、アップテンポで歩いて行きます。

本谷山の山頂です。
特に展望も無いので素通りです。

お!やはり、ガスが取れてきました。
間違い無いです、一昨日と同じパターンの天気です!

狙った時間に山頂に到着できるようにペースを落とさずに歩き続けます。
初日や2日目ぐらいだと考えられなかったペースで歩けています。
(ザックが食料分少し軽くなったのもありますかね?)

塩見岳のガスのかかり具合に一喜一憂させられますが、きっと晴れるのだと信じて歩き続けます。

いよいよ塩見岳へと続く尾根(稜線)に取り付きました。

ちょうど反対側から下って来た年配の男性の方に「塩見小屋までもう少しだよ、頑張って!」と、声をかけられたのですが、特に膀胱タンクに液体が貯まっている気配もないし、水は足りているので、今のところ塩見小屋は素通りの予定です。

お! 塩見岳が間近に見えてきました!
って、山が2つある上に、なんかえらい急な斜面なんですね〜。
こりゃぁ、けっこうキツそうです。

塩見小屋です。
値段が高いと聞いていましたが、入り口に掲げられていた看板に表示されていた水800円のプライスに改めて驚きつつ、予定通り素通りします。(ヘリ代と営業可能期間の短さを考えれば妥当な値段ですが)

さ〜て、山頂もバッチリ晴れてきましたし、ガンガン登りますよ〜!
(予想より早く晴れて内心ちょっと焦ってます)

う〜む、今回も逆光かぁ・・・・
逆光対策に北上コースで果たしてあっていたのかどうか・・・

手前の山は途中から山腹を巻くようにして越え、いよいよ塩見岳本体に取り付きます。
この晴れ間を狙って塩見小屋からピストンしていたのであろう大量の軽装登山者が次々に降りてくるのですれ違いは難儀でしたが、私が到着する頃にはタイミングよく山頂が空くんじゃないかとちょっと期待。

地図をちゃんと確認してなかったので気がつかなかったのですが、塩見岳への登りには「危険」マーク区間があるのですね。(付いていたのは知っていましたが向こう側への下りについていたかと勘違いしてました)
私は登りで通過したのでどうってことはなかったですが、下りだとけっこう気を使いそうな岩場です。(勘違いしていたので、どんな下りなんだろうと想像が膨らみまくってました)

おおお、山頂が見えてきました!
ここは手前の西峰です。
かれこれ30人近くとすれ違いましたが、山頂、予想通りほとんど人が居ません。ラッキー!

計画通り三伏峠から3時間15分、7時55分に到着!!
ちょいと急いだだけあって、なんとか晴れているうちに間に合いました。
我ながらパーフェクト!(自画自賛モード)
塩見岳が今回の縦走の中間地点ぐらいなので記念に恒例の写真を撮ってもらったわけですが、こうやって見てみるとザックはぜんぜん小さくなってません。
ちなみにザックが斜めになっているのはパッキングが下手くそだからです。
(軽量ペラペラのフレームレスザックなので、昔のキスリングみたいにパッキングの上手い下手がそのまま重心の位置に現れます。大学生の時(卒論用のサンプリングで北海道の大雪山系に連れていかれていた)ワンゲル出身の助教授に褒められるぐらいもっと上手くパッキングしてたんですけどね〜)

さすが100名山、山頂からはすばらしい展望が360度広がってます。
(写真は中央アルプス方面)

三伏峠を出発前に予めお湯を入れておいたカルボナーラで昼食タイム。
これ、今回はじめて山に持ってきたのですが、けっこう美味しいです。
(縦走中に食べるにはカロリーが少ないのが惜しい!)
ちょうどこの時、反対方向から登って来たTABさんそっくりなルックス(しかも43歳だから同い歳?)の方と、もう一人三伏峠方向から軽装(ピストン)装備でやって来た「山小屋の水マニア」な30代ぐらいの方と3人で話が盛り上がりました。
この時、「鳳凰三山の南御室小屋の水はボルビックみたいな味で南アルプスで一番旨い!」という話をマニアの方から聞かされたことと、TABさん似の方に鳳凰三山まで歩くと説明したら「じゃぁ、夜叉神に降りるんですか?」と言われたことがきっかけとなり、最終日付近の予定を変更し、温泉付きの青木鉱泉に降りるのをやめて、夜叉神登山口に下ることに決めました。
というのも、「今回は鳳凰三山まで行きます!」と自分が歩くコースを説明すると、TAB似さんの人に限らず十中八九の人が「では、夜叉神に下るんですか?」と、返答されるので、それを繰り返すうちに、「鳳凰三山に行ったら(温泉無いけど)夜叉神に下るもんなんだ」という気分になって来ていたところに、ボルビック(夜叉神に下るコース上にあります)の話が加わり、TAB似さんの方の「夜叉神に下るんですか?」という質問が最後のトリガーとなって、「えぇ、夜叉神に下ることを今決めました」と答えたら、キョトンとされたので、事情を説明しました。
夜叉神には温泉が無いはずなので、バスを芦安あたりで途中下車して温泉に浸かってから甲府に向かう必要がありそうです。
その後もTAB似さんの方と30分ほどしゃべっていたところ、「バスの時間がありますので、そろそろ行きますね」と彼が立ち上がったタイミングでガスも上がり始めたので、私もぼちぼち腰を上げます。

登ってきた稜線を見てみると三伏峠組が続々と山頂に上がってくるのが見えたので、ちょうど良いタイミングでした。(8:50)
さて、行きますか!と、下りはじめた次の瞬間、一気にガスが吹き上がってきて展望がなくなってしまったので、もし山頂への到着が1時間遅かったら、展望がまったく望めないところでした。
アップテンポで歩いてよかったです。
(逆に言うと、三伏峠組で晴れ間に間に合ったのは私と水マニアな方とあと数名ぐらいでしょうか)
さ〜て、行きますか!

塩見岳から北へ向かう下りは浮石だらけの「ザレザレ」で、かなり気を遣わされました。(写真は振り返ったところ)

地図には「この周辺から眺める塩見岳がすばらしい」と記載されていたのですが、ちょっと山頂でのんびりしすぎました。

楽しい稜線歩きになるはずの区間ですが、こちらも残念ながらガスってきてしまいました。一昨日と同じパターンだとすると、本日は夕方まで回復しないんじゃないかと思います。

あ! これ、地図に載っていた水場のサインじゃないですかね?

踏み分け後もしっかりしているので、今後の参考としてザックを置いて確認しに行ってみることにしました。

あ〜、やっぱり、この先にあるみたいです。

登山道から200mほど下った林の中に地図には記載されていないテントサイトがありました。
トイレはありませんが、整備状況からして今でもけっこう使っている人が居るみたいです。

テントサイトの先、さらに谷へと下ったところに塩見岳中腹から流れてくる沢がありました。
これだけ長いこと流れてくる沢の水を飲むのも勇気がいる話ですが(鹿とか猿とか熊の糞尿が混じってる可能性が高いので)、試しに飲んでみました。
少なくとも三伏峠の水よりは冷たくて美味しかったので、そのまま水筒の水を入れ替え、本日はこの水を飲むことにしました。
※しかし、この後、下痢はしないまでも少しだけお腹が緩くなったので、煮沸するなりフィルター通すなりしたほうが良いと思います。あと、登山道から往復で40分ぐらいかかりましたので、ここに頼るメリットは少ないと思います。

テン場で出会ったおじさんが大嫌いだと言っていたマルバダケブキがこの区間でもたくさん咲いてました。

あの斜面に見えているのもすべてそうです。

花びらが大きくて、だらんと垂れているのが嫌われる原因なのでしょうか?

私は「夏の花」って感じで好きなんですけどね〜。

こんなところに小屋があったんだっけ?と、思ったのですが、たぶん昔キャンプ指定地だったらしいので、その管理小屋だと思います。

小屋からちょっと先、崩壊しつつある稜線のピークに到着しました。(北荒川岳)
先客が3人ほど昼寝しています。

3人を起こさないように一人静かにコモパンをいただきます。(11:10)
正面に見えるはずの塩見岳は下山開始してから一度も姿を現さず仕舞いでした。
私が居る気配を察知されたからか3人が起きてしまったので、軽く謝りつつ出発の準備をします。
男性2人に女性1人、私と同じ年ぐらいでしょうか?(カップルプラスワン?どんな組み合わせなのでしょう?)
3人は「勝手に寝ていただけですから」と、私に起こされたことを意に介していない様子でした。

さて、まだまだ先は長いので、ガンガン歩きますよ〜。

ガスの中とかそんなレベルじゃないぐらい湧いてますね。
天気が良くないと言えばそうなのですが、これまでの天気を振り返ってみると初日の雷雨と茶臼岳周辺で雨にパラつかれたぐらいしか雨を食らってないことと、中岳避難小屋のYさんに下山予定日まで天気が持つといわれたことを思い出し、天候的にえらいラッキーな日程になったなぁとしみじみと感じます。
(まだ、残り全日程晴れると決まったわけではないですが)
今日もメインイベントの塩見岳までは持ちましたし、本当に良い感じです。

マルバダケブキ、再び。

そして、樹林帯。
南アルプス縦走の定番の景色ですね〜。

まだあと2時間。(実生活でも2時間先の目的地に向かって歩くってことは普通無いですよね。たかが2時間、されど2時間です)
う〜ん、しかし腹減った!
(コモパンはすでに消化済み。行動食では腹が満たされないです)

お! 農鳥岳ですね!!(新蛇抜山付近)
白根三山が目の前だとすると、なんかすごい北部まで歩いて来たというイメージなのですが、行程的にはまだ半分ちょいなんですよね〜。

�Eが中間地点の塩見岳で、今ちょうど�Fの左横のあたりに居ます。
明日は主稜線から外れて�F(農鳥岳)と�G(北岳)の白根三山を往復して、明後日から再び主稜線に戻って�H(仙丈ケ岳)から�K(ここへ降りると今日決めた夜叉神峠)へと向かう計画です。

写真の岩場地帯で適当に腰掛けて休んでいたら、後方から昼寝していた3人組が歩いてきました。
どうやら同じ方向だったようです。(後で確認したら塩見小屋スタートであそこでひたすら寝ていたそうです)
彼らもここで休むようだったので、私は邪魔にならないように先に進むことにします。

農鳥岳(西農鳥岳)ってカールになってたんだ。
知りませんでした。

登山道から30秒ほど外れたところにある、安倍荒倉岳の頂上。
たった1分で往復できる山頂を逸れて登山道が敷かれているのが不思議だったのですが、納得の景色。
ほとんど展望がありません。(三角点がありますから、周囲からは目印になる場所なんでしょうね)
山頂標識だけ確認するとすぐに先に進みます。

山頂よりもよっぽど登山道のほうが視界が開けているのでした。
右が西農鳥、左が間ノ岳です。

本日もゴールの山小屋に到着する寸前はシャリバテでふらふらになってしまいました。

やっと熊ノ平小屋が見えた! (13:50)
はぁ〜、今日も長かった!
「熊ノ平小屋は水が美味しい!」という評判を何度も聞いてすごく楽しみにして来たのですが、まずは先に幕営の申し込みを済ませます。
小屋の側にテントサイトが見えなかったので、受付のおじさんにテントサイトの場所を確認します。
さらに、「テントサイトで良いロケーションって、どのあたりですかね?」と、追加で質問してみたところ、懇切丁寧に西農鳥岳が良く見えるテントサイトのポジションを教えてくれた後に、
「じゃぁ、紹介料でプラス300円ね」
と、付け加えてきたので、納得したふりをして財布を取り出してお金を払う動作に入りつつ、
「じゃぁ、その場所まで道案内してもらえますか?」
と、笑顔で返したところで、
「君、ノリがいいねぇ」
と、嬉しそうな顔をして返され、良い歳したおじさん二人の掛け合いが終了しました。
おじさんに教えてもらった「良い場所」は残念ながらすでに先客がテントを張っていました。
そのテントの横に頑張ればもう一張りは張れそうなスペースが空いていたので、そこに張っても良いかテントの主(おじさん)に確認した所、「問題ないよ」とのこと。
そのまま張らせてもらおうと思ったのですが、その奥にも展望的には大差ないスペースが空いてるように見えたので、そちらを確認してみたところ展望もバッチリだったのでこちらに決めました。

というわけで、西農鳥岳を真正面に見る絶好のポジションにツェルトを張りました。
さて、楽しみにしていた水を飲みに行きますか!
って、ここのテントサイトが素晴らしいのは、メインの水場(私の張った場所から歩いて3分)まで行かなくても、散り散りに散らばった各テントサイトまでホースで冷たい水が引き回されているのでした。
ですが、私は豪快に体を洗いたかったので、水筒とタオルを持ってメインの水場に向かいます。
水場に到着すると女性が一人居て、その方は服を持ち上げつつタオルで体を拭いてました。

水場はけっこうな広さがあるので、自分も離れた場所で体を拭きたい旨を伝えようと彼女に声をかけたところで、お互い「あ!」と、声があがります。
先ほど昼寝していた3人組の女性の方でした。
「先程はどうも!」
と、声をかけつつ、まぁ、気にする歳でも無いでしょうと踏んで(失礼)、「私も体を拭きたいんですけど、あっち向いてやりますね」と、彼女に背を向けてシャツを脱いでタオルを水で濡らしていたところ、
「背中、拭きましょうか?」
と、思わぬ提案が背後から返ってきたので、
「じゃぁ、よろしくお願い致します」
と、気軽に頼んでみました。
「首、すごいことになってますね」
と、背中から声が聞こえた後、冷たいタオル(彼女のタオルです)が背中を上下します。
まさか、こんなところで見知らぬ女性に背中を拭いてもらえるとは思いませんでした。
彼女にお礼を言ってから頭を洗い、彼女と今回の縦走の話なんかをしながら今晩必要な分を水筒に汲みます。
もちろんすぐに飲みましたが、水は本当に冷たくて美味しかったです。
自分のツェルトに戻る途中で、先程隣に張っても良いと言ってくれたおじさんと少し話をしました。
なんとこのおじさん、本日塩見岳直下の水場の手前にあった隠れテントサイトで一泊してきたとのこと。ついでに、明日もバリエーションルートの途中でビバーク予定だとか。
なんでも、農鳥の先(広河内岳の先)の笹山から奈良田に下る新ルートが最近作られて、2011年度版旺文社のマップについに掲載されてしまったので、混雑する前に歩いておこうと慌てて来たのだとか。
そりゃぁ、いいことを聞きました。いつか北岳に向かうルートの一つとして使わせてもらおうと思います。
あと、私が明日歩くコースについてあれこれ尋ねていたところ、良い抜け道を教えてくれました。(三峰岳(みぶだけ)から間ノ岳に抜けるルートの手前を並行に農鳥小屋方面に向かう巻き道コース)
たしかに旺文社の地図で確認すると、こちらのほうが効率良く行けそうです。
いいことを聞きました。

ツェルトに戻って本を読みながら時間を過ごした後、いつもの晩御飯を作って夕食を済ませます。
向こうに写っている黄色いテントの前に居る方が先ほど背中を拭いてくれた人妻さんです。(3人の会話が聞こえてきて、彼女が結婚していることがわかりました。旦那さんと子どもは自宅待機、男性2名は山友達ってところでしょうか)
熊ノ平はマイナー区間にある小屋なので比較的空いていると聞いていたのですが、さすがにお盆の土曜の夜というだけあって、夕方になっても次々と到着する登山者が絶えず、ついにテントサイトが溢れかえりました。
最後は小屋番のスタッフの方が、遅く到着したお客さんのために開いてるスペースを探すのに奔走してました。
昨今の若者山ブームの特徴として(安いからというのもあると思いますが)テン泊が人気みたいなんですよね。
山小屋が布団1枚に3人で寝かされているときに、こちらはテントで悠々と過ごせるというのが重いテント一式を担ぐ理由でもあったのですが、それが薄れつつあるのは(個人的に)残念なことです。
本当に最後に到着した人は、水溜りの上にテントを張り、暗くなってから料理を作ってました。
奔走していたスタッフさんが去り際に、
「この辺、夜は鹿の通り道になるので気をつけてくださいね」
と、言われたのですが、まぁ、鹿とトラブルになることも無いでしょう。

熊ノ平のテン場から夕日は見えないのですが、この空を見た時、タイミング合わせて近くの稜線まで登っておけばよかったと少しだけ後悔しました。
もう暗くなりはじめてから到着したおじさん3人グループのテント(すぐ隣)からの話し声がなかなか途切れなかったので、本を読みながら時間を過ごし、いつもより遅めの20時頃就寝しました。
おやすみなさい。

登り累計 1720m
下り累計 1720m
移動距離 16km(最長距離)
つづく