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燃料補給にこの旅では1つ目となるコモパンを頂きます。



食べ終わるとすぐにおばさんに挨拶し、気合を入れて出発です。

レンジャーステーション脇にシレーナへと続くトレイルの入り口がありました。(8:20)



お〜、これは快適。



足元も硬いし道は整備されてるし木陰だし、、、これなら時速4kmペースで歩けそうです。(おばさん情報では後2回砂浜歩きがあるらしいのですが)




調子よく10分ほど歩いた所で、「そういえば最初の川まで何分だっけ?」とズボンの前ポケットから地図を取り出そうとしたら、なぜか入ってません。「ウエストポーチだっけ?」と思いながらそちらを探したのですが、そちらにも入ってません。



まさかと思いつつザックを漁ってみますがそこにも入ってません。



再びウエストポーチを取り上げて探そうとした所、ウエストポーチの中に入れていたハンバーガーの肉汁が漏れていたのと、ウエストポーチのベルトにつけていたカメラのレンズ(ケースごと)が地面に転がり落ちて軽くパニックになりかけた所で、



「グッドモーニング!」



と、突然声をかけられたので見上げると、白人の20代ぐらいの男性がニコニコしながらトレッキングコースを向こうから歩いてくるところでした。


こちらは地図が無いわ、肉汁こぼれたわ、デジイチのレンズが地面に落ちたわでそれどころではないので、愛想笑いしつつ「グッドモーニング」と返事を返して、まずはレンズ拾いから始めようとしたところ、彼は私の脇を素通りして抜けていくことはせずに私の正面に立ち、


「僕はオランダから来たんだけど、君はどちらから?」


と、多くの旅人がする定形の質問を投げかけてきました。


「私は日本からです」


「日本のどちらの都市?」


「東京です」


「ワオ、東京ですか!それはすごい!」


と、ここで定形会話が終わるかとおもいきや


「東京からコスタリカまでどのぐらい時間がかかるんですか?」


から始まり、


「僕はピューマを探してるんですが、見つからないんですよね」


と、私のちょっと無愛想だったかもしれない返事にもかかわらず、話題がどんどん次へ次へと移って行きます。

私の方も返事をしながらレンズを地面から大きな岩の上にひとまず移し、肉汁をティッシュで拭きとり、もう一度もらった地図を探してポケット、ウエストポーチ、ザックの中をまさぐりながら、内心では「再奥に位置するシレーナでもピューマなんて滅多に見られないのに、こんな国立公園入口のところに居るわけ無いんじゃない?」と思いつつ、



「それは残念でしたね。私は今地図を無くしてしまって、今まさに探しているところなんです」



と、強引に話題を変えて自分の状況を説明してみたのですが、そのことには特に反応はなく、彼のお連れさん(すなわち彼女)が朝のトレッキングについてきてくれなかくて残念だった話に話題が移ったので、こりゃぁ「天然さん」だと諦めて、会話に付き合いながら地図を探してました。


そして、ついに


「じゃぁ、僕はそろそろ行きますね」


と、天然さんは会話を切り上げてレンジャーステーションの方へと歩いて行きました。




そして、私も彼が立ち去った直後に、せっかくもらった地図をレンジャーステーションに忘れてきたのだと結論を下し、彼を追いかけるようにレンジャーステーションの方へと歩き始めました。

財布などの貴重品を除くほとんどの荷物を先ほどの場所に置きっぱなしにしたので、空荷で体が跳ねるように軽くなり、早足から徐々にペースを上げてジョギングぐらいのペースで進んでいきます。



すぐにオランダから来た天然さんに追いつきました。


追い抜かすときに、


「ほら、白いキノコがあるよ」


と、話しかけてきたので、さすが天然さん!と思いつつ


「本当だ、白いですね!」


と、答えつつ足を止めずに追い抜かしました。



オランダには白いキノコは無いのですかね?



その後も軽いジョギングペースで走っていったのですが、「こんなに長く歩いたんだっけ?」と心配になってきたところで、ようやくレンジャーステーションに到着しました。



何事?という顔をしているおばさんに挨拶して、忘れたとしたらここしかないという場所を探してみたのですが、そこにもありません。


おばさんに地図を置き忘れていなかったかどうか確認したのですが、見てないよとのこと。


そんなはずは無いと思いながら、再びポケットに手を突っ込んだら、あっさりとポケットから地図が出てきました。


見つかったことで思い出したのですが、私のトレッキング用ズボンの前ポケットは中が2重になっていて、どうやら地図は手前側のポケットに入っていたようです。(走ったことでポケットの奥から浮き上がってきたのでしょうか?)


見つけた喜びよりも「自分は何やってるんだ」という気持ちのほうが大きく、おばさんに「地図、ありました!」と、一方的に状況を伝えて出発しようとした所、


「そうそう、このノートに名前を書いていってくれる?」


と、言われたので、受付に置いてあった大学ノートに名前や住所、人数や宿泊場所を記入しました。


ついでに自分の前に書いている人の状況をざっと眺めてみたところ、クリスマスから正月間近という繁忙期であるにもかかわらず、昨日は1人、一昨日が2人、多い日で5人ぐらい、数日誰も通過していない日もあるぐらいで、どうやらシレーナまで続く道は人気の無いトレッキングコースだということが改めてよくわかりました。本日はもちろん私がトップバッターです。






再びトレッキングコースをジョギングで走り、オランダ人の天然さんに地図があったことを一方的に報告しながらすれ違い、肌色の猿が木の枝から枝へ飛び移っていったり、ペリカンの編隊が空を飛んでいたのですが写真を撮る余裕もなく、、、

ようやく放置していた荷物のところまで戻って来ました。(8:40)





ひっくり返した荷物をパッキングしなおし、気を取り直して出発です。



そして、荷物を回収してから20分少々歩いた所で最初の川に出ました。



ここも靴を脱いで渡渉が必要な規模の川だったはずです。



上流方面。



こちらは川幅も広いですし、たしかにワニが居そうなので、あちらに回りこむという選択肢は無いです。



ぱっと見、細い川なので楽勝かと思っていたのですが、近づいてみてみると案外流れが速いので、足を取られてすっ転ばないようにしなければなりません。



まずは靴を脱いで裸足になって、靴下と靴は手に持ったまま、慎重に川に入りました。



やはり流れが速いうえに膝下ぐらいまでの深さがあるので、そう安々と渡らせてはくれません。



なんとか慎重に進み、転ばないで渡りきりました。



再び靴を履きジャングルの中に作られたトレイルの中へと入っていきます。



これは、もしやお墓でしょうか? (すぐ近くにもう1つありました)


どういう理由で亡くなられたのかわかりませんが、トレイル脇にいきなりお墓があるというのはちょっと気になります。
(日本の山でも事故で亡くなられた方の慰霊碑的なものは見かけますが)



二股が合流したところで振り返って撮影。



一本道と聞いていましたが、枝分かれもあるみたいですね。帰りに間違えないようにしないと。



そして、帰宅後に看板に書かれている文字から先ほどの墓を含めて状況がわかりました。


「Cementerio el Madrigal」、すなわち「マドリガル墓地」です。


1930年代前半に本日の目的地であるシレーナレンジャーステーション近くのClaro川やここマドリガル海岸一帯で「金」が見つかり、ゴールドラッシュがあったみたいです。

アメリカの採掘会社が乗り出してきたり(アクセスの困難さと環境の劣悪さで撤退したみたいですが)、一攫千金を夢見た鉱夫たちで溢れかえったことがもあったみたいですが、最終的には(1986年)政府が環境保護とエコツーリズムを目的として国立公園化し人々を立ち退かせたようです。

先ほどの墓地はその名残ということだと思います。


昨日の夜に会った上半身裸の老人ももしかしたら潜りの鉱夫の方かな・・・、って思ってしまいました。
地図に記載されていた他の川は今のところ石伝いに渡れるものばかりです。



お! ここからついに海岸歩きか!?


みたいな、まっすぐ進んだら砂浜に出ちゃいそうな場所が数カ所ありましたが、いずれもよく見たらジャングルの中へUターンするようにして続くトレイルがちゃんとありました。



だいぶん陽が照って来ました。

トレイルがジャングルの中に続いてくれて本当に良かったです。



あ、白いキノコだ。

天然さんのことを思い出して、ついつい撮影してしまいました。

歩き続けて気分が落ち着いたこともあるのですが、あんなパニック状態の時に出会わなければ、もっと楽しく会話できただろうにと思うと、ちょっと残念にも思いました。


あの岬っぽく突き出している部分が今回のコースの折り返し地点になるところのはずです。



レンジャーステーションのおばさんの説明のとおりなら、その手前から一度海岸に出るはずです。



トレイルは基本的には歩きやすい区間の方が多いのですが、たまにこんな草むらっぽい場所や、、、



ぬかるみを伴った小さな川をいくつか越えさせられます。



頭上の木がなくなると一気に暑くなります。



今のところ周囲から動物の気配はほとんど感じないのですが、足元にはたくさんのヤドカリが居て、私の足音に驚いたヤドカリはすべて貝殻の中に引っ込むので、常に足元で貝殻があちらこちらにたくさんコロコロと転がっている中を進んでいく感じになります。

(これが見ていて飽きないんですよね)


あと、たまにツノゼミなんかも探してみたのですが、全然見つかりませんでした。

そして、いよいよここから海岸線に出るみたいです。

トレッカーの足あとも砂浜に続いていますし、Uターンしてジャングルの中へと続く道もありません。



砂浜歩きでは馬力が必要なのと太陽を遮るものがなくなるので、ここで昨日の夜にスーパーで買っておいたハンバーガーを2つ食べて燃料補給をしておきます。(10:10)



さ〜て、行きますか!



ちょっと写真じゃわかりにくいですが、タイドプールには小魚がたくさん居ました。
おぉ! これは不思議な石ですね〜。直径2mを超えるものから小さな石ころまで、全部こんな感じの縞模様になってました。



断崖絶壁のところもジャングルに覆われています。

あそこにトレッキングルートを作れなかったので、砂浜歩きになってるんでしょうね。



これは川として流れてきた水が目の前で砂浜に吸い込まれていくところです。
見ていて飽きない不思議な光景でした。



上に生えている木の大きさと比べていただければわかるとおり、すごい迫力の岩肌です。



かなり暑かったので、この天然シャワーを浴びたい衝動に駆られました。



倒木トンネルをくぐって振り返ったところです。
(人間を一緒に写さないとスケールがわからないですね。これもけっこう大きな倒木です)



この周辺には波で削られた倒木のかけらが散乱していて、まるで木の墓場のような光景になっていました。



砂浜とゴロタ石地帯の中間みたいなところを進んでいきます。



あ! 対向者だ!



やはり、ここを歩いて移動する人は居るんですね〜。

挨拶しつつすれ違います。



どうやら砂浜歩きはあそこで一旦終了して、右のジャングルへ入るようです。

ジャングルに入るとすぐに道はゆるやかな上り坂になってます。


左の黄色いポリ容器は道が始まる箇所の目印なのでしょう。



ううう、意外に登るなぁ。


荷物が重いだけに全力の砂浜歩きで疲れた足に堪えます。





その後、岬の反対側に向かって下って行き、、、、


再び砂浜歩きです。



砂が靴に入るのが不快だったのと、この行程の最後に大きな川渡りがあるので、クロックスサンダルに切り替えてみました。



しかし、これが大失敗で、確かにサンダルに入り込んだ砂は足を振れば落とせますが、歩くときに砂をうまく蹴れないのでそれほど快適ではないんだとよくわかりました。



えーっと、帰りはあそこが入口になるのか・・・


特に特徴がなくて、なんか見逃しそうだなぁ〜。

時々空を優雅に飛んで行くペリカンの編隊、やっと撮影出来ました。



いや、しっかし、あとどのぐらい続くんだろう、この砂浜歩き・・・
本日のすれ違い2グループ目。



岩場地帯に突入しました。


ちょうどすれ違いの人もここを歩いてきたのを見ていたので、ジャングル側に入る道を見逃したわけではないようです。



これまたザック背負ってクロックスサンダルだと歩きにくい事この上ないのですが、なんとか根性で越えて行きました。



たしか、満潮時はここか先ほどの岬辺りが超えられないと誰かのページで読んだ気がします。



再びジャングル側に入る道に導かれて中へと入っていきます。


踏み固められた普通のルートになって、ようやく歩きやすくなりました。


う〜む、まだ渡るべき大きな川が見えないので、少なくともあの岬を超えないとダメなんでしょうね。



この植生はこの砂浜歩きで初めて見た気がします。


そろそろ足元で転がるヤドカリ以外の動物が出てくるんじゃないかという気もしてきました。



と、思ったところでさっそくトカゲ君が登場。

(トカゲ自体はここまでにたくさん居たのですが、この個体は顎の下に黄色い美しい膜を張っていたんですよ。写真を撮る前に閉じられてしまいました・・・・)



駐車場を出発してから早5時間。


トカゲの膜の写真を撮り損ねはしましたが見た目に珍しい動物に出会えたことで急にテンションが上り、これまではただ前進することのみに意識を集中していたのですが、ラ・セルバでヘイナ君がナマケモノを次々と見つけた時の衝撃を思い出しつつ注意深く周囲を見ながら進むモードに切り替えました。(12:20)



さて、シレーナ周辺ではどんな動物に出会えるのでしょうか?
お〜、早速ハナグマ発見!(ハナジロハナグマ  white-nosed coati (Nasuanarica))



イグアスの滝に居たハナグマは人馴れしていて、下手したら人間の食べ物を横取りするぐらいの勢いでしたが、ここのハナグマは撮影しようと近づいたら、すぐに逃げてしまいました。これぞ野生生物。



周囲の植物は「木」ではなくて見た目に「草」なので自分が小さくなったかのような錯覚を受けます。



お〜、でっかい鳥だなぁ〜。ハゲノドトラフサギ Bare-throated Tiger Heron(Tigrisoma mexicanum



あ、コアリクイだ! lesser anteater (Tamanduatetradactyla)



とまぁ、さすがシレーナ近辺、いろいろ動物や鳥類を見つけて喜んでいたのは良かったのですが、油断からぬかるみに足を突っ込んでしまい、クロックスサンダルだから濡れても関係ないかと思ったら然にあらず、足の裏とクロックスの間に泥が入り込んでしまい、これが滑るのなんの。


泥地帯を抜けた後も、足の裏の泥が乾ききるまで延々とサンダルと足が滑りまくって死ぬほど歩きにくかったです。



これなら、軽トレッキングシューズを履き続けていたほうが数倍ましでした。




動物と出会い始めると同時に、シレーナ滞在中であろう観光客+ガイドグループともちょくちょく出会うようになりました。


「あと、30分でシレーナに着くよ」


と、教えてくれるカップルやら


「あなた、このバッテリー落とさなかった?」


と、どこかで拾ったであろうソニー製デジカメ用バッテリーの持ち主を探してらっしゃる方やら、ガイドの説明に熱心に聞き耳を立てている人たちなど、3グループぐらいとすれ違いました。


そして、いよいよ問題のCLARO川に到着しました。(13:05)



う〜む、さすがに広いですね。


でも、ほぼ干潮時間に到着できたので川は浅そうなのと、ここを渡ったであろう人達とたくさんすれ違ってきたので、そこまで警戒することはなさそうです。



って、思いながら川に入っていって、巨大な石についていた苔でおもいっきり滑って危うく尻餅をつくところでした!



巨大な石はどれも滑りそうだったので、いったん岸まで慎重に引き返してからルートを選びなおして、滑るの前提で少しずつ進みました。



中央部はそれなりに深さもあって、膝までたくし上げていたズボンも濡れてしまいました。



一応ワニとかサメも探してみましたが、当然のことながら見当たりませんでした。





ふぅ、なんとか転ばずに渡りきりました。




ワニやサメに襲われるなんて微塵も思いませんでしたが、転ぶのだけは怖かったです。
さて、シレーナまで後少しです。


(アジア人カップルとガイドさんグループ。なんとなくなんですが日本人のような予感がして話しかけませんでした)
せっかく川でサンダルの泥が綺麗に流されたのに、再び泥に足を突っ込んでしまい、またもや滑りまくりながら最後の行程を進んでいきます。



川を渡ったらすぐに靴に履き替えるべきでした・・・


お〜、空港!!


そして、セスナにレンジャーステーションらしき建物。



着いた!(13:35)



ラ・レオナから6時間はかかりませんでしたが、それでも5時間以上かかりました。



明日、この行程をもう一度歩くのかと思うと正直気が滅入ります。
ん?


センデロ シレーナ?


センデロってこれまでの経験からすると「方面」って意味だったような・・・・



今空港の先に見えている建物がシレーナレンジャーステーションだとすれば、この道は明らかにあさっての方向に続いているのですが、地図で確認するとレンジャーステーションの前に川があるみたいですから、あれは違うのかもしれません。

いや、やっぱりあれがレンジャーステーションのような気がするのですが、もしかしたら滑走路を歩かずにここを進めばレンジャーステーション、もしくはレンジャーステーションの受付建物にでも出るのかと思い、わざわざ「シレーナ方面」と表示が出ているのでそちらに進むことにしました。



お、こっちはぬかるみ地帯に丸太が敷いてあって、快適に歩けますね。
シレーナレンジャーステーションにセスナで飛んできちゃうような人向けでしょうか?


えーっと、何だ? この看板・・・



シレーナ川? グアナカステ方面?


地図でシレーナ川を確認すると、自分が明らかに行き過ぎていることが判明しました。。。


(ちなみに、帰国後に調べてみたら、SENDEROは「方面」という意味ではなく、「トレイル」という意味でした。つまり、私はシレーナトレイルという道に進んだだけなのでした。そして地図では川っぽく表示されていたのは滑走路でした)


半分やけくそ、後は「災い転じて・・・」みたいなことも期待してシレーナ川の辺まで歩いてみました。



ふむ、何も居ないですね。



一応、大型のサギだけ確認。

災は災のまま終わったのでした。





では、こんどこそレンジャーステーションに向かいますか・・・・(13:55)



シレーナ川から20分ほど歩いてようやく到着しました。。。(14:15)



しょっぱなの地図無くした騒ぎと、最後の道間違えた騒動のおかげで、結局6時間近くかかったことになります。


哀しいかな、ラ・レオナのおばちゃんの言ったとおりでした・・・



つづく