ケニアドライブ旅行記
その23
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1月3日(木)(7日目)





朝、5時半に起床し朝食の準備を開始します。



昨日の夜は北の空にカシオペア座が見えていましたが、今は180度近く回転して同じ場所に北斗七星が登ってました。


マック君には起床時間を伝えてあったのですが、バブーン追い払いのためにやって来る様子はありません。というか、そもそもバブーンもまだ活動を開始してい ないので必要ないのですが。








朝食が終わって空が明るくなってきた頃にレンジャーさんがやって来ました。昨日、自己紹介の時に「ジョンです」と名乗ってくれ、象の鳴き声をしてくれた方です。


「準備できた? 出発しようか」



と、声をかけられ、最初は聞き間違いかと思ったのですが、どうやら昨日の夕方の会話でしっかりと聞き取れないまま生返事していたので、どうやらジョンさんがガイド役を申し出てくれて、私はそれをオーダーしたことになってたみたいです。(それで出 発時間を確認されてたんですね)


セルフドライブが好きな私ですが、もう今さら断れませんし、それはそれでレンジャーさんが案内してくれたらどんな展開になるのか興味があったので、「ちょっと待ってて下さい」と言いつつ大急ぎで助手席の荷物を後部座席に放り込みます。


普段はカメラや交換レンズを助手席に並べて置いておいてすぐに取り出せるようにしているのですが、それらも後部座席に移動させ、一応体を後ろに向ければ取り出せるように配 置します。








そんなことをしているうちにマック君到着。


とっくに6時は過ぎているのですが、私の表情から何かを感じたのか、「すみません、寝てました・・・」とのこと。


正直でよろしい(笑)


マック君は焚き火を起こしてくれましたが、こちらはもう出発準備完了です。










というわけで、ジョンさんに助手席に乗ってもらい、ゲームドライブに出発です。(6:20)


ライフルを持った人が助手席に座ってるのが日本人の私には違和感ありまくりなのですが、まぁこれはお守りみたいなもんで、実際にライフルを使う シーンは無いだろうとも思いました。
カカメガフォレストでもライフル持ったレンジャーさんに乗ってもらいましたが、あの時は夜中だったのと後部座席に 座ってもらったのでライフルが目に入りにくかったんですよね。

帰国後に調べてみたら手に持っていたライフルはケニア軍採用のH&K_G3A3のようです。



さて、思いがけずジョンさんがガイド役をしてくれることになりましたが、これで動物たちに会える確率も随分上がるだろうと期待しつつ車を走らせます。



走り始めるとジョンさんが指で右、左、と分岐の度に指示を出してくれるので、それに従い車を進めていきます。









ジョンさんいわく、これはライオンの足跡だそうです。

これをトレースすれば逢えるかもということで、「なるほど!」と思いながら足跡を見失わないように車を走らせていたのですが、新旧含めて意外にたくさん あってあちこちに延びてるので、ふと気を抜くと見失うこともしばしば。


というか、ちょっと気になってライオンのテリトリーの広さを尋ねてみると2kmぐらいかなとのこと。(半径か直径かは聞きませんでしたが)

なんかテントサイトがここから2km以内にある気がするのは気のせいでしょうか?


まぁ、ジョンさんも巡回中にライオンやヒョウは良く見かけるとの事だったので、そんなもんなんでしょう。



日本だって北海道だとヒグマの生息地でテント張りますしね。(ロシアでこんな写真もありました)


ヒョウやライオンを特別視する必要は無いんですよ、きっと!(笑)








そうこうしているうちに朝日が昇って来ました。











行き先の指示を出しながら動物を探してくれているジョンさん。





というわけで、さっそく発見してくれました、、、








サンブル5の中でも出会う数が少なかったグレビーシマウマです。


昨日はお尻しか見せてくれませんでしたが、本日はちゃんとお顔を拝見出来ました。


幸先順調です。



そこからしばらく走った所で、「その岩でライオンがよく獲物を探してるんだけど今日は居ないね〜」という説明を聞き、さすがによくポイントを知ってるなぁと感心しつつ走っていきます。








食事中の若象が道を塞いでます。

人間で言えば中学生ぐらいの体格でしょうか。

ジョンさんから、


「ゆっくり進んで」


という指示が出たので、徐々に距離を詰めていくと、



「ブーーーア”ーーーーーーー!」






と、文句を言いつつも器用にバックして行きます。




そして、最後には道を空けてくれました。



「ごめんねー」と声をかけつつ横を通過。



次の分岐を過ぎた所が深い轍の水たまりになっていて、


「戻ろう」


と、ジョンさんから早めの指示が出ます。


もし私一人だったら悩みながらも強行突破を計ってスタックしたかもしれない状況だったので、ジョンさんの早めの指示に感謝しつつ先ほどの分岐まで一旦バックし、別の方向へ走り始めます。



すると、先ほど退いてくれた若象が再び道路に居たので、先ほどと同じようにゆっくりと距離を詰めていきます。



再びゆっくりとバックする若象。








すると、若象が突然前足を折りたたんだので、どうしたんだろう?と思った次の瞬間、ジョンさんが


「気をつけて!」


と、強い調子で声を上げます。


「何を?」という感じだったのですが、








若象が文句を言いつつ一度下がった後になんと怒りの声を上げながらこちらに向けて歩き始めたじゃないですか!



どうやら、堪忍袋の緒が切れたみたいです。





ジョンさんは窓から手を出して、車のAピラーをバンバン手で叩きながら「シッ!、シッ!」と大声で象を追い返そうとします。












しかし、若象は怯むこと無くどんどん距離を詰めてきます。



私はといえばどうしたらいいのかわからず、とりあえずギアに手をかけて指示が出たらすぐにバックできるようにして固唾を飲んで成り行きを見守ります。


しかし、バックで下がると言っても、既に象の群れ(ファミリー)に囲まれていて、全頭が怒り始めたらただじゃ済みそうもありません。

(車なんか簡単に転がされるのと、その後の攻撃で命を落とす人も居るとか)



若象だと思って軽く見てましたが、いやはや、一人っきりだったら半泣きになってるシーンです。




いよいよ目の前まで詰められた所で、ジョンさんの音による威嚇が効いたからか、象は左に回り込みつつ威嚇し続けてきます。









ついにジョンさんは銃を取り出し、コッキング(弾を装填する動作)をして若象を威嚇します。

この若象は銃を知らないからか、それともジョンさんが撃つ気が無いとわかっているからか、それでも怯む様子は無かったのですが、数十秒ぐらいのにらみ合い の後、ようやく引き下がってくれました。



いやぁ、さすがに緊張しました!



その後、ジョンさんが銃の弾倉を外した所で実弾がボロっと転がり落ちてきたのを見て、あぁ本物の銃なんだなぁと改めて思いました。



少し走った所で、「いやぁ〜、驚いたね〜」と二人で盛り上がります。








アカシアに混ざってたまに生えているソーセージツリーKigelia africana


ジョンさんいわくサンブルの人々はこの実でお酒を作るんだそうな。


あと、ヒョウのねぐらに調度良いらしく、よくこの木で寝てるんだそうです。



というわけで、ヒョウ生息エリアに入って来ました。


昨日、バタフライキャンプサイトのおじさんに聞いて探していたエリアでもあります。




ジョンさんが「ここ、右」と指さしたところが私なら絶対に見落としそうな脇道だったので、「こんなところに入れるんだ」と思いつつ急坂を下って入って行くと、




「居た!!止まって!」



と、ジョンさんが小声で叫びます。



条件反射的にブレーキを踏んで車を止め、ジョンさんが指差す方向(ほぼ真正面)を見ると、








ヒョウが居たぁぁぁぁぁぁ!!  leopard (Panthera pardus)



ジョンさんが手を上げたので車内でハイタッチします。


夜行性ということも有りカラハリやマサイ・マラのような猫科の動物がたくさん居る国立保護区でもなかなか出会えない動物です。

(ここ、サンブルではいくつかのロッジが餌付けしてるらしいので、そういうロッジに泊まれば夜に餌を食べに来るのを見られるらしいのですが、それじゃぁ動 物園で見るのと変わりがありません、というのが私の意見です)



「ビューーーーティフル!」



と、大喜びしたのは私ではなくジョンさん。

というか、しょっちゅう見てるはずなのにジョンさんが大興奮で大はしゃぎしているのがちょっと意外で可笑しかったです。


いや、私も嬉しいのですが、ここで軽くパニック。


車を停めたところからヒョウが居るソーセージツリーまでけっこう距離が離れているのですが(30mぐらい)、この時カメラに付けていたのは標準ズームレンズ。なんとなくそろそろ出会いそうだなという予感があって望遠 ズームに交換しようと思っていた矢先に出会ってしまったので、まったく準備ができてませんでした。(上の写真は標準ズームの望遠側で撮った写真をトリミングしたものです)



ちょっと悩んで望遠ズームではなく超望遠を後部座席から取り出した所で、


「ベイビィ!、ベイビィ!」


と、ジョンさんが叫ぶので、ソーセージツリーの方を見ると、ちょうど子どものヒョウが木に登ろうとしているところでした。


そのシーンを視界の片隅に入れつつレンズ交換をしていると、我々がここに居るのを嫌がったからか、ヒョウのお母さんはヒョイッと木を降りてしまいました。


マズイ! 見えないところに行っちゃう!


しかし、まだレンズ交換は終わってません。

すぐに子どももそれを追いかけて木から飛び降り、草むらを連れ立って奥の方へと歩いて行ってしまいます。




ようやくここでレンズ交換完了。




しかし、ヒョウは草むらの中を歩いており、超望遠だとフレームの中に収めるのに悪戦苦闘し、やっと入っても今度はまったくピントが合いません!











もうなんでもいいやと記録用に撮影したのがこの写真。(子どもは草むらの中)



まぁ、写真は残念でしたが、それでもヒョウに出会えたことのほうがはるかに嬉しく、ジョンさんと再びハイタッチ。


すぐにジョンさんは仲間に電話をかけ、この場所でヒョウの親子に出会えたことを報告したようでした。

(他のレンジャーさんもサファリカーに同乗してガイドをしてるみたいで、お互いに情報交換をする約束になってるんだとか。さらにサファリカー同士は長 いアンテナを付けた無線機でリアルタイムに情報をやり取りしており、それが一匹のライオンに10数台のサファリカーが群がるという現象を引き起こすわけで すが、サンブルはそこまでサファリカーが居ないので、まだマシかなという気はします)









その後、念のためヒョウの親子が歩いて行った方向を少しだけ探してみましたが、車からは見えないところに移動してしまったようです。 (写真は探している時に見かけたフサホロホロチョウの群れ。このぐらいの数になると全然どいてくれません)



じゃぁ、次はライオンを見せてあげるよという話になり、ライオンがよく寝ているという川沿いのブッシュ地帯を中心に走っていきます。


それからしばらくぐるぐると走った所で、


「ここ、どこだかわかる?」


と、質問されて、すぐには答えられなかったのですが、ちらっとスマホで現在地を確認してわかりました。


先ほどヒョウの親子に出会った場所です。

反対方向から走ってきたので全然わかりませんでした。

ジョンさん、さすがでございます。



再びわかりにくい脇道にそーっと入っていき、30mほど先にあるソーセージツリーを見てみます。




「居た!!!!」




「どこどこ?」




「右の枝の所!」




この会話、見つけたのは私で場所を尋ねたのはジョンさんです(笑)



お気に入りの場所らしく、ちゃんと戻ってきてくれていました。









ヒョウに限らず動物たちの光学的擬態は見事としか言いようがありません。

ちょうど、つい最近「眼の誕生-- カンブリア紀大進化の謎を解く」を読んだばかりだったので、草食動物達含めて、そんな点でも多 いに感心させられます。



先ほど見かけた子どもも探したのですが、どこか安全な場所に隠れているからか木の上には居ないようです。







今回はヒョウが居ることを想定して予め望遠ズームを取り付けてあったので、ちゃんと落ち着いて撮影出来ました。

フロントガラス越しなのでちょっと滲んじゃってますが、まぁ細かいことはいいんです。


デジイチが望遠鏡代わりになるのですが、ジョンさんが言うとおり本当に美しい動物です。


ジョンさんも我慢しきれなくなったのかコンソールボックスに置いてあった双眼鏡を取り出し、覗いてはしゃいでます。








ん? 立ち上がりましたね。

やはり、子育て中だからか近くに人間が居ることをナーバスに感じているようです。











枝の上をしなやかに歩き、木から降りて行きました。











そこに駆け寄る子どものヒョウ。やはり居ました!

(ジョンさん曰く、子どもは2匹居たらしいです)




そして、再びブッシュの中へと消えて行きました。




再びジョンさんと握手。



マサイ・マラから計画変更でサンブルになり、成行きでジョンさんに乗ってもらったんですが結果大正解だったなぁと喜びを噛み締めていた所、、、










先ほど左奥方向へ消えていったヒョウの親子が、何食わぬ顔で右側に向かって移動して行きました。


左奥だと道が無いので先ほど同様追跡のしようも無いのですが、右方向には先程まで走っていた道が走っていて周囲には開けたエリアもあります。


すぐにそちらに移動しようという話になり、一旦分岐までバックしてその道に入ります。




二人で目を皿のようにして探しながら、そろりそろりと車を進めていきます。




「居た!!!!!」



「どこ!?」



「そこ!」




またもや先に見つけたのは私でした(超自慢)(笑)



私にとっても意外だったのですが、ヒョウは歩く速度から逆算してもそれほど遠くに移動せず、道路も渡らずに足を止めて待機していたみたいです。










いやぁ、微笑ましい光景ですね〜。


(ヒョウの親子を左前方に見つけた瞬間にブ レーキを踏んで車を止めてしまったのですが、さすがにこのポジションだとフロントガラスの歪みの影響を盛大に受けちゃってます。しかし親子までの距離が近 かったので、これ以上車を動かして驚かすわけにも行かず、そのままフロントガラスを斜めに挟んだ状態で見てました)









お母さんが子どもの耳を噛んで、さらに腕で優しく倒してお腹を舐め始めました。


もう最高のシーンなので私は動画を撮影しながら自分の声が入らないように心の中で「かわいいー!」って叫んでましたが、ジョンさんは助手席で大はしゃぎしてました。

なので、撮影した動画にはジョンさんの大はしゃぎっぷりがばっちり録音されてます。(笑)








その後、親子はブッシュの中に消えていったので、我々も移動を開始しました。



いやぁ、本当に良いシーンに出会えました。


これだから国立保護区巡りは面白いです。(8:30)











その後もジョンさんのガイディングでライオンの生息地を中心にあちらこちらへと車を走らせます。











ジョンさんはさすがに目が良くて、遠くに居る猛禽類の鳥を見つけて教えてくれました。
ヨゲンノスリ Augur Buzzard (Buteo augur)

ちょうど食事中でした。ジリスかネズミを捕まえたのでしょうか?










昨日は一度しか出会えなかったオリックスに再び会えました。











ここでこれまでトムソンガゼルだと思い込んでいたレイヨウが実はグラントガゼルだとジョンさんに教えてもらいました。(トムソンガゼルのトレードマークのお腹の黒い帯はグラントガゼルの幼少期にもついてるんだそうです)







道路を横断していくグラントカゼル。









ちょいと展望台に上がってみようということになり、小高い丘に登って来ました。



ここは車から降りることが許されている展望エリアなので、車から降りて大きな岩の上に登ってみました。








岩の上からサンブル国立保護区とその向こうにあるバファロースプリング国立保護区を見渡します。(9:40)

素晴らしい眺めです。


西洋人が畑とか牧場を持ち込む前はこんな景色がどこまでも続いていたんでしょうね〜。



サンブルで見たかった動物(グレビーシマウマ、ゲレヌク、アミメキリン、アフリカゾウ、ヒョウ)には首尾よく出会えました。

あえて言うなら、あとはライオンぐらいでしょうか。(実はそこまで強いこだわりは無いのですが)



このエリアにライオンが何匹居るのかジョンさんに尋ねてみたところ、サンブル側に4〜50匹ぐらいじゃないだろうかとのこと。

帰国後に調べてみたら、数年前の調査でサンブルからバファロースプリング、さらにイシオロぐらいまでのエリアで100頭だそうです。マサイ・マラは800 頭以上居るとのことなのでその差は歴然。これだけ隠れる場所も多いので、乾季で川に動物たちが集まる時期じゃないと、なかなか出会うのは難しいのかもしれ ません。


さて、行きますか。



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