ケニアドライブ旅行記
その56
その55へ戻る



あとがき



■改めて感想


あまりにもいろいろなことがありすぎて一言では言い表せない旅でした。

帰国後に「ケニアはどうだった?」と尋ねられても、どこから何を話したら良いのか判断がつかないって感じです。

尋ねてきた人の興味関心に合わせて見てきた景色、パンクネタ、警察ネタ、交通事情ネタ、登山、ダイビング、そして野生動物の話をしたんじゃないかと思いますが、どれもこれもケニアを見て感じたことを表現するには片手落ちな気がします。

個人的に一番良かった体験は現地の方々との交流なんですが、話すとたいてい長くなるのでここにしか記していません。

髭茫々で日焼けして帰ってきたのとテレビなどで紹介されるアフリカのイメージからサバンナを彷徨ってきたんじゃないかと想像していた人が多かったのですが、今回旅したエリアは標高が高いところが多く、そこは牧草地帯やら畑だらけですからイメージとは違うんですよね。

この旅行記を書いた後にまとめ動画を編集し、改めて他の大ジャンプ動画と見比べてみたんですが、やはりケニアは実に見どころの多い国だったと思います。(走行シーンが一番少ない旅だったかも)

ケニアの人たちは楽天的な性格の方が多いゆえに、よく言えば何事にもおおらかなわけですが、それがガイドさんなどお金を払ってサービスを提供してもらう人だった場合、日本人観光客からすると良い面、悪い面両方あったような気がします。文化も生まれ育った環境も人種も違いますから、「ケニアの人ってそうなのか!」と思うことが多々あり、「人間って何だろう」を生涯学習のテーマにしている私にとっては大変興味深い出来事がたくさん起こりました。逆にそうじゃなかったら、いちいち立腹してたかもしれません(笑)


野生動物ウォッチングやケニア山登山、ダイビング、絶景めぐりに関してはロンプラの写真集で期待した通りで総じて満足度は高かったです。






これだけの景色を一気に見られる国なんてそうそう無いと思います。

さすが観光立国なだけはありました。


またケニアに行きたいか?と問われれば、もちろんイエスです。



やっぱりマサイ・マラのヌーの川渡りは一度は行って見ておきたいですし、人類史研究の舞台となった遺跡は見て回りたいです。

あと、基本的にアフリカが好きです。


そして、次はもうちょっと警察官対策をして行きたいと思います。今回は無防備過ぎました。

この報告書(2003年)からケニアに関する部分を抜粋。

TIケニア支部が実施した調査により算出されたケニア都市部賄賂指数によると、ケニアの平均的な都市生活者は1ヵ月に16回の賄賂を支払っている ことが明らかになりました。賄賂総額は1ヵ月に8,185 KSh(12,480円)となり、1ヶ月の平均収入が26,000 KSh(39,720円)しかない回答者たちにとっては大きな負担となっています。公務員が最も多くの賄賂を受け取っており、賄賂総額の99%を手にして います。警察が最悪の常習犯で、都市生活者の10人のうち6人が警察に対して賄賂を支払っていることが報告されました。


まぁ、こんな感じなので、自力でケニアを旅する人は覚悟しておかないとダメですね。1ヶ月に16回ってのは尋常じゃないレベルです。




■ケニアのドライブ事情


旅行記の中でしつこいぐらい書いてますが、正直に言って良くないです。

悪名高いインドで登録自動車台数あたりの交通事故発生確率は日本の約50倍、ケニアはそれに匹敵する40倍という数字になってます。(ケニアの場合、比較対象は日本ではなく先進国平均だった気がしますが、似たようなものでしょう)


参考記事 

インドの交通事故発生率は日本の50倍--どうすれば日本人駐在員の安全を守れるのか?
(※今調べたらインドにもAVISとか進出してますね。ケニアにもあるんだしそりゃそうかと思いました)


海外レンタカードライブ旅行の楽しさを布教したい私ではありますが、ケニアは気軽におすすめできないです。(あと私の経験の中からおすすめできないのはオーストラリアのアウトバック、ただし専用の車を借りれば大丈夫だと思います)

今回は事故って即死しててもおかしくない瞬間が幾度もありました。

運転の荒いバスも多かったです。やはりと言うか、今年の2月28日にこんな事故も起こっています。
ケニアでバス横転 35人死亡 - YouTube


本当はケニアの国立保護区内でセルフドライブサファリをする楽しさを強く主張したいんですが・・・。

というわけで、アフリカでは南アフリカとナミビアがトータルで考えてすごくオススメです!
ただし、この2カ国では制限速度80kmの砂利コーナーで四輪ドリフト状態になってからフルブレーキ踏んで横転する外人ドライバーが後を絶たないらしいので、そこだけ要注意です。
(私もとあるコーナーで花束が置いてあるのを見てぞっとしました)


ケニアでレンタカーを借りてドライブされる方は、こちらのあなたのケニア人度チェック!より、

29.道路にムココテニ(リヤカー)やロバ車も走っていることに違和感を感じない。

30.高速道路脇や住宅街の道路脇で牛の群れが放牧されているのを見て、「あぁ、乾期だからね」と納得してしまう。

31.高速で追い越しされたマタトゥーが、いきなり目の前で止まって客を降ろしているのにムカつかない。

32.高速を走っていて、前から逆走してくる車を見つけても、パニックにならない。

33.夜運転してて、街灯がなかろうが、前の車がハイビームつけて通り過ぎても、動じない。

34.暗くなると、信号が赤でも絶対に止まらない。(※強盗対策、南アフリカも同様)

35.アスファルト道路をパッチング(つぎはぎ)するのは道路工事だと思っている。

36.警察は正義の味方ではないと思っている。

37.ひどい渋滞だと、「警察が路上で交通整理しているんだな」と思ってしまう。

40.交通事故現場を見ても、つい素通りしてしまう。第一発見者が犯人にされるので、通報もしない。


あたりは本当にその通りだったので注意してください。


ドライブと関係ない番外編としては、

8.ダメ元精神で、なんでも「ちょうだい」とか、「○△してほしい」とか聞いてしまう。

28.誰かが助けてくれても、「キトゥ・キドゴ」(小さい物)をいくら取られるか心配してしまう。お金を要求されずに誰か助けてくれると驚いてしまう。


は、事前に知っておくと現地(特に観光地)でぎょっとすることは減ると思います。




■ケニアの治安


在ケニア日本国大使館 のページの下の方のリンク先にケニアで暮らしている方向けの安全情報があり、大変参考になりました。

私もナイロビのキベラみたいに治安が悪いと言われている場所には最初から近づかないようにしてました。


ケニアの最新ニュースはDaily Nationで手に入ります。





冒頭に出したイギリスの調査会社が出したリスク分布図。

参考記事
アフリカのリスクを地図で見る。本当に危険な場所はどこ?






カナダ政府が出している渡航者向けの安全情報。

日本が中国・韓国よりも危険(場所によっては危険)扱いになってると話題になりました。(原発事故後の放射能汚染関連らしいです)

ケニアも日本と同じ色ですが、海岸部の北部は赤になっていて絶対に近寄ってはダメなエリアに指定されています。








去年の9月に発表された旅行者向け安全情報で危険地帯(ホットスポット)に色をつけたもの。
残念ながらケニアにはホットスポットに指定されています。


あとは人口10万人あたりの殺人者数。


ということで、ものすごく危険ではないが安全でも無いというのが私の認識です。

個人的には交通事故とマラリア(蚊)のほうがよっぽど怖かったです。


どのマップでも危険地帯に指定されているお隣南スーダンでPKO部隊が襲撃されて、隊員12人殺害されるという痛ましい事件が4月10日に起こったことも記憶に新しいです。。。

最新情報は外務省のページを見てください。





■密猟の問題


帰国後にあれこれ調べている中で知った深刻な話をメモっておこうと思います。


行く前からロンプラにも書かれていたこともあって上っ面の知識としては知ってましたが、サンブルにせよツァボにせよ密猟の問題が近年かなり深刻化していてアフリカゾウやサイの頭数がものすごい勢いで減っているそうです。




日本人を含め我々アジア人が象牙製品を欲しがるからです。


ツァボの現在の象の頭数は6000頭、かつては4万5000頭(すごい写真があります)と言われていたらしいので、今回たくさん見たなぁと感じましたが、昔しはそれどころじゃない ぐらいの象の楽園だったようです。

なぜ密猟が減らないか、問題の概要はここにまとまってます。
タイ、象牙取引停止を宣言―拡大するブラック・マーケットの阻止なるか

象牙密輸業者、1個につき罰金1ドル以下で釈放 ケニア 国際ニュース : AFPBB News

私は現地でレンジャーさんたちに何度も会ったりお世話になっておきながら、彼らが何をしているのか深く考えもせずに過ごしておりました。

そういえばサンブルの2泊目、1月3日の夜中に銃声を2発聞いてるんですが、帰国後に密猟の件を調べている時に、銃声を聞いた翌日のニュースで密猟者に撃ち殺され無残に牙(だけじゃなく頭部の半分)を切り落とされた象 の亡骸がニュースに掲載されていたのを見て愕然としました。

正視できる人は象牙を取るためにどんなことが行われるのか一度見ておいたほうが良いと思います。(はじめて見る方は覚悟して見てください)

サンブル 2013年1月4日朝

ツァボ(2012年末)


我々日本人としては象牙製品(印鑑とか)を欲しがらない、買わないってのがまずは出来る事でしょうか。

マサイ・マラで獣医をされている方が象やサイを守るための資金を集めるための募金活動を行なっておりますのでお知らせいたします。

あとはアフリカゾウの涙のサイトも。






最後に、、、


■参考になった本、これから読みたい本


---ケニアガイド---

Lonely Planet Kenya Travel Guide

基本中の基本。これが無いと旅の調査が始まりません。

ホームページの掲示板でのやり取りもかなり参考になります。(あちらの人は個人旅行をする人が多いので、なおさら) 例えば人数割りの有利なケニア山の同行者募集なんかもしょっちゅう行われています。



地球の歩き方 東アフリカ 2012〜2013: 地球の歩き方編集室

私が持ってたのはだいぶん昔にタンザニア(キリマンジャロ)に行こうとした時に買ったやつなのですが、今回日本(docomo)に国際電話を書けるときだけ役立ちました。

Amazonのレビューで散々な書かれようですが、まったく否定出来ません。




---ケニアについて、歴史、経済、地理---


ケニアを知るための55章 (エリア・スタディーズ): 松田 素二, 津田 みわ

ケニアを旅する前にぜひ読んでおきたい本です。



アフリカの民族と社会 (世界の歴史): 福井 勝義, 大塚 和夫, 赤阪 賢: 本

上の本でケニアやアフリカについて興味が湧いたら次はこちら。

遊牧民族にとっての牛とは何かとか中東と絡めた歴史などを深く知ることができます。ただし、ケニアに関する話はごく一部で、むしろ後半は中東世界絡めた西&北アフリカ編になってます。
(ちょうどアルジェリアで事件が起こっていた時に読んでいたので、そのまま読みきっちゃいました)



裂ける大地 アフリカ大地溝帯の謎 (講談社選書メチエ): 諏訪 兼位

今回の旅行記中で「本を読んで寝ました」と書かれている場合、すべてこの本です。

興味あるテーマなのに眠気を誘われるという珍しい本でした。

地学の基礎知識がないと辛いと思います。




5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった: ニコラス ウェイド, 安田 喜憲, Nicholas Wade, 沼尻 由起子

ちょうど先日読みおわった本です。

ここしばらく人類系の本を読んでなかったのですが、DNA解析技術の進歩で自分の知識がえらい古いものになってることを痛感しました。

ケニアに行く前に読んでおくべき本でした。

(※個人メモ:DNAのマッチングによるクラスター分析で分化した年代もある程度特定できるというのはなるほどという感じで、そう言えば自分も大学の卒論で同じ手法を使っていたのでした。もちろんDNAの入れ替わり数みたいな最先端のデータではなく、走査電顕を使った目視で細胞の形状をあらゆる面からスコア化してやるという超古典的手法だったわけですが)



---ネイチャーガイドブック---


フィールドガイド・アフリカ野生動物―サファリを楽しむために (ブルーバックス): 小倉 寛太郎, 増井 光子

サファリをする前にぜひ読破しておきたい本です。古い本ですがとてもよく出来たガイドブックだと思います。国立保護区と動物、どちらも網羅されています。


ケニア・タンザニア旅ガイド まるまるサファリの本: 武田 ちょっこ

一応上の本と同じ領域のガイドブックではありますが、エッセイ集や旅行記ぐらいの情報量だと思います。

著者の方がブログを書かれてますので、それを読んで独特のノリが気に入るようでしたらぜひ。

本文中にも書きました通り掲載されている地図はセルフドライブ用としてはまったく参考になりませんでしたが(著者の方もそんなことは想定してなかったでしょう)、鳥類の情報量が充実していることと、数少ない日本語による国立公園情報として私には貴重な情報源でした。




---その他---


人喰鉄道〈上〉 (徳間文庫): 戸川 幸夫

ツァボのあたりで鉄道工事をしている時に作業員が次々とライオンに襲われたという史実を元にした創作小説です。

物語としてはそこそこおもしろいほうだと思います。私は創作小説だと知らずに読んで、すごい展開に無駄に感動させられました。

ツァボに一度でも行っていれば感情移入度10倍増しだと思います。




---ここから先は購入済みですがまだ読んでない本です。積み上がりすぎ!---



僕は見習いナチュラリスト: 加藤直邦

カカメガフォレストでお会いした「カトー?」こと加藤さんの本。



謎の独立国家ソマリランド: 高野 秀行

今読んでる本です。ケニアのお隣、無政府状態に陥ったソマリアから独立したと宣言した(国際社会は認めていない)ソマリランドや超危険地帯のソマリアを旅した人が書いた本。
だいぶん昔に「カラシニコフ」という本を読んだのですが、そこにもソマリランドのことが取り上げられていたらしく(私はソマリランドという国の名前含めてすっかり忘れてました)、なんでもアフリカ中に出回っているカラシニコフ(AK47、ロシア製ライフル)を、この自称国家だけは全て回収して議会制民主主義も整備して平和な自治国家を作っちゃったんだとか。はたして実態はいかに? という内容です。
ソマリランドだけが内紛状態から抜け出た秘密に迫る部分、昔から人間の本性として仮説を立てていたことまさにその通りのことが起こっていて、「やっぱりそうだったのか!」という思いです。
「アフリカの民族と社会」と「5万年前」を先に読んでおくと面白さ三倍増しです。(ケニアなどの東アフリカを旅しておけばさらに倍!)



モンスター - 暗躍する次のアルカイダ: 山田 敏弘

テロ活動を身近に感じられるところを旅したので興味が湧きました



世界は貧困を食いものにしている: ヒュー・シンクレア, 大田直子

アフリカを旅していると必ず目に付くこの問題への答えを求めて。



経済と人類の1万年史から、21世紀を考える: ダニエル・コーエン, 林 昌宏

そう言えば、「銃・病原菌・鉄」をまだ読んでなかったので、そちらが先でした。
読んだら次はこちらを読みます。



人類と感染症の歴史: 加藤 茂孝

マラリア関連。
つい最近病気の日本近代史―幕末から平成まで:は読んだのですが、もう少し詳しく知りたくなりました。



マダガスカルへ写真を撮りに行く (四月と十月文庫4): 堀内孝

いつかはマダガスカルということで。



アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1): アイザック・ディネーセン, 横山 貞子

ケニア山でご一緒させていただいたナディアさんに紹介してもらった 「Out of Africa」の翻訳本。欧米の方はこの本を読んでアフリカに憧れる人が多いんだとか。

ジェロームさんによると、この小説をベースにした映画「愛と悲しみの果て」もオススメなんだそうです。



深夜特急〈第一便〉黄金宮殿: 沢木 耕太郎

何を今更系。
突然バックパック背負って旅に出ちゃったりして(笑)



以上です!