その18
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いや、ここでパニックになったらダメだ。
出来る手はこれしかないと再び車の中を探し始めると、意図を察したのか二人ほど手伝ってくれます。
車の中にはカメラやら検問の時に取り出した免許証やらパスポート(予備のクレジットカード入り)などの貴重品が散乱してたのですが、さすがにこの状況で持ってっ
ちゃう人は居ないだろうと思ってましたが、実際に何も無くなりませんでした。
タイヤハウスのところに小さな収納ボックスがあることに気が付き、あまりに小さかったのでさすがにここには入ってないかなと思いつつそこを開けてみると、実
は中は深く出来ており、そこに見慣れた黒い合成革袋が・・・
もしかして、と、それを取り出すと、ビンゴ! 工具入れです。
中にはタイヤ交換用のレンチとジャッキハンドルが入ってました。しかし肝心のロックナットアダプターはありません。
工具袋が入っていた入り口の小さな収納スペースに腕を突っ込み底を漁ってみると、まだ何やら底の方に入ってます。
祈るような気持ちでそれを掴んで取り出してみると、、、、
「あったーーーーーーー!!!!」
皆さんも喜んでくれ、思わずハイタッチしてしまいました。
今度こそタイヤ交換ができる体制になりました。
(写真はパンタグラフジャッキだと高さが足りないということで、マタツのジャッキを後ろから突っ込んでセットしているシーンです)
ようやくいろいろ落ち着き、若い男性が私自身のことや今回の旅についてあれこれ尋ねてきたんですが、これからサンブルに行った後にケニア山に登るんだという話をしたところ、今まさにタイヤを交換してくれている
青年がケニア山でポーターをしてるんだよと紹介してくれました。
もしガイドの予約を入れてなければ、ここで即お願いするところだったのですが、こればかりは仕方がありません。
あと、タイヤ自体はこの先のナニュキの街で直せるとのこと。
少し心の余裕が出来た所でマタツの方を見ると、中には私のパンク騒動に巻き込まれたお客さんたちがまだ数名座っていて(女性ばかり、どうやら全男性が降りてきて手伝ってくれていたみたいで
す)、頭を下げて感謝の意を伝えました。
結局私は皆さんがすごい勢いで交換作業するのを後ろからぼーっと見ていただけで、何もしないまま交換作業は完了しました。
改めて皆さんに御礼を言って回りました。
さて、もう時間が時間なので今日はナニュキでタイヤ修理をして、そのまま宿泊することに決めました。(15:40)
しかし、先日キスムの街ですら宿探しに苦戦したので、それよりははるかに小さいナニュキの街で元旦に宿を見つけられるのはちょっと厳しい気はします。
でも、やるしかありません。
なんせここは夜間の治安が悪いエリアなので。
「ゆっくり気をつけて走るんだよ」
と、注意の言葉をいただきつつ出発。
これまでより10〜20kmぐらい落としたペースで車を走らせます。
それでもマタツよりは随分速いらしく、気がついた時にはバックミラーから消えていました。
とても清々しい気持ちで広大な景色を眺めます。
いろいろトラブルは起きますが、そのつど優しい人たちに助けてもらってます。
これぞ旅って感じがします。
しばらく走ると、またもや前方に牛かヤギが道路にたくさ・・・・、ん?
民族衣装を着た女性たちです。
何やら「アイヤーーーーイーーーヤーーーー」と歌いながらこちらに向かって歩いてきます。
完璧に道路を塞がれているので為す術なく車を停めると、そのまま囲まれてしまいました。
彼女たちは笑顔で歌いながら、一人は小さな箒みたいなもので車を撫でてくれています。
リーダー格らしき人が運転席の窓から箱を差し出してきたので、お布施をすればいいんだなと判断し、財布からお金を取り出して中に入れると、
歌声がさらに大きくなり、数秒後に前を開けてくれました。
元旦ゆえのお祭りだったのでしょうか?
いやはや、何事かと驚きました。
走れば走るほどどんどん天気が良くなっていきます。
その調子!
右奥に山裾が見えているのがケニア山だと思うんですが、まだ姿を現してくれません。
道端の子どもが英語で「ハワユー」と手を振りながら声をかけてきたので、「ファインセンキュウ!」とこちらも笑顔で手を振り返します。
川は水汲み目的の人達による社交場になっていて、皆さんが笑顔で談笑されていました。
牧畜で生計を立てているであろう方々(この辺りだとサンブル族でしょうか)は移動を前提にした簡素な家に住んでいるようでした。
実にケニアらしい風景です。
パンクした地点から数十キロ走ってようやくナニュキの近くまで来ました。
舗装路になって喜んだのですが、これがまた穴だらけで気が抜けません。
ようやく無事にナニュキの街に入りました。
さて、車の修理をしてくれる店を探さねば・・・・
と、思いながら走っていてすぐに目に入ったのがこの看板。
24時間パンク修理とか書かれています。
作業をしていたお兄さんに「パンク直せますか?」と尋ねると、「もちろん!」とのこと。
パンク修理の値段を確認すると1000KShぐらいかなとのこと。
C76号線でナニュキに入ってきて街の入口にあるわけですからなかなか好立地な店ですね。
早速パンク修理をお願いしました。
すぐに小さな男の子が駆け寄ってきて不思議そうな顔でこちらを見上げてくるので、気分が良かったことも有り笑顔で応えると、その子も満面の笑顔になったあと、
走ってどこかに行ってしまいました。
かわいいもんです。
タイヤに空気を入れて水に漬けると2箇所ほどパンクして泡が出ていました。
一箇所はかなり大きな穴らしく、タイヤを外して修理しなければならないとか。
なるほど、こんな道具で外すんですね。
日本の機械化の進んだ作業ピットしか見たことがなかったので、ちょっと感心してしまいました。
これが大きな穴。
タイヤ内側をヤスリで削って平にし、ボンドをたっぷり塗ってパッチ当てを行います。
そんな作業を興味深く見学していると、背後から、
「置いていくなよ〜」
と、突然声をかけられて振り向くと、先ほど一生懸命タイヤ交換作業をしてくれたポーターのお兄さんが立っていました。
なんでも、私がマタツの前を走って再びパンクしないか見ていてくれるという話だったらしいのですが(私の英語能力のためちゃんと理解できてませんでした)
私がマタツを振りきって走って行っちゃったことになってたみたいです。
聞けばこの近所に住んでいるということで、顔を出してくれたみたいです。
パンク修理は順調に進み、パッチ当てをした後、タイヤを組み上げ空気を入れます。
2箇所パンクしてたはずなんですが、もう一箇所はもう直したんだっけ?と
不思議に思って見ていると、、、
こちらはT字型のリーマーでラバーセメントをグリグリとパンク穴に突っ込んで直すみたいです。
この直し方は初めて見たのでアフリカ方式かと思ってたんですが、チューブレスタイヤではノーマルな直し方なん
ですね。
最後はラバーセメントの入りきらなかった部分をカッターで切り取って修理完了。
パッチ修理が1000KSh、リーマー修理が600KShで合計1600KShでした。
気分が良かったことも有り、支払いとは別に少しチップも払いました。
すると修理のお兄さんがたまにハリウッド映画とかで見かける「握手」→「握り直し」→「拳同士をくっつけて親指を立てる」というのをやろうとしてれたんで
すが、何分慣れてなかったのでうまく応えられませんでした。
ちょっと残念。
そして、私が支払いをしている間にポーターのお兄さんは修理が完了して濡れて泥だらけのタイヤを車まで運んで積み込んでくれてました。
今度こそハリウッド流の握手をしようと手を差し出すと、なぜかお兄さんが手の甲をこちらに向けて差し出します。
それがどういう握手の仕方なのかわからずに手を見つめていると、
「いや、手が汚れちゃったから」
と、言いながら汚れた手を見せてくれたんですが、汚れた原因は汚れたタイヤを運んだからなので、ちょっと感動してしまいました。
(と、言いつつ彼の意を汲んで控えめに握手してしまったのですが)
そういえばと思い出し、ナニュキの街に良い宿が無いか訪ねてみると、5つぐらいの候補をこれまた丁寧に方向をあれこれ指さしながら教えてくれました。
しかし、とても全部覚えきれなかったので、ひとまず一番お勧めの宿を尋ねてみると、「アイビスが良いと思うよ」とのこと。
最初、レンタカーのAVIS(日本語読みでエイビス)の建物の側にあるホテルのことを言ってるのかと思ったら、「IBIS」と書いて「アイビス」と読むホ
テルがあるのだとか。
あと、もう一箇所良いホテルの候補を教えてくれたのですが、IBISの行き方を覚えるので精一杯でした。
お兄さんからケニア山はどこの登山口から登るのか尋ねられたのでチョゴリアから登るんだと答えると、サンブル国立保護区からチョゴリアへの行き方を懇切丁寧に教えてく
れました。
もちろん、スマホナビがあるので迷うことは無いのですが、そんな事情は知らないであろう彼の親切心がひしひしと伝わってきて嬉しかったで
す。
今度こそここでお別れだと思い、今日これまで全てのお礼を言いながら手を差し出し、遠慮がちに出してきた彼の手をがっちり握ってお別れしました。
しかし、名前を聞いてないんですよね、これが・・・。ポーターのお兄さん、本当にありがとうございました。あなたぐらいのホスピタリティ精神があれば、きっと素晴らしいガイドさんになれると思いますよ。
さて、行きますか。
えーっと、たしかこのへんだと思うんですが・・・
ゆっくりとIBISホテルを探しながら走っていると、道端に立っていたおじさんが声をかけて来ました。
「君、中国人?」
と、尋ねられたので、
「いいえ、日本人ですよ」
と、答えると、
「コンニチワ!」
と、日本語で挨拶されました。
へぇ〜、こんな田舎の街まで日本人が来てるんですね〜。
(って、この時は思ってたのですが、実はナニュキはケニア山周辺で2番めに大きな登山基地の街だったのでした。なので観光スポットの無いキスムなんかよりもよっぽど宿泊事情は充実しているみたいです)
おじさんはさらに続けて、
「インケニア、ノーマウンテン、ノーサファリ、ノーライフ!、ガイドでもツアーでもなんでも紹介するよ!」
と、身を乗り出すように話しかけてきたので、なるほどおじさんは旅行代理店のエージェントさんなのだと気が付き、
「今後の予定は全部決まってるんで大丈夫です。ところで、IBISホテルはどこですか?」
と、返答しつつホテルの場所を尋ねてみると、ちょっとがっかりした顔を見せながらも、すぐ横にあった公園の向こうにある建物を指差し「あそこだよ」と、場所を教えてくれました。
おじさんにお礼を言い、さっそく向かうと、、、
ありました!
IBISホテルです。(ポーターのお兄さんにスペルまで聞いておいてよかったです) (17:20)
入り口には男女2名のガードマンも立っており、セキュリティもなかなかの様子。
中に入ると受付には登山ザックを足元に置いた西洋人男性が2名、ソファーにはアジア人の若い男性と白人の年配の男性が居て、ここが外国人向けのホテルなんだと
すぐに理解出来ました。
ポーターの彼、なかなか良い場所を案内してくれました。
(後で調べたらロンプラでもおすすめホテルとして紹介されてました。それもあって旅行者に人気なんだと思います)
男性二人組の受付が終わって私の番になったので、シングルルームで1泊出来るか尋ねてみると、「大丈夫ですよ」とのこと。
いや〜、よかったよかった。
料金は2000KShとリーズナブル、さらに朝食は要らないと申告するとさらに400KSh下がって1600KShになりました。
この値段でベッドで寝れ
るんなら大満足です。
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