その30
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本来であれば景観が変わって「最高!」と言いながら登るシーンですが、さすがにだんだん呼吸が辛くなって来ました。
うっへーーーー、急な登りはさすがにキツイ!
と、内心で思いながら登っていると、エリックが振り返り、
「一歩登るごとに深く呼吸して」
と、アドバイスしてくれたので、その通りに意識して深く呼吸しながら一歩ずつ登っていきます。
中央奥に見えている平らな大地の上にミントスハットがあると聞いて、俄然元気が出て来ました。
その左下に見えている湖はマイコソン湖(Lake Michaelson)で、あそこからビビアンフォールが落ちているそうです。
植生も徐々に変わってジャイアントロベリアなどの東アフリカの高山に生える植物がチラホラと顔を出し始めました。
キリマンジャロの写真なんかを見てるとよく出てくる植物なので、名前とルックスだけは知ってましたが見るのはもちろんはじめてです。
エリックはここでもちゃんと生態を説明してくれました。
いや〜、明らかに酸素が薄くてきっつい!
せめてこれで晴れてればもうちょっと気分よく歩けるんですが、、、
と、ここでエリックが「スイーツをあげる」と言ってガムをくれたんですが、ガムを噛みながら登るとかえって息苦しい気がします。
でも、もしかしたら高山病対策だったのかもしれません。
お、いきなり晴れて来ました。
ヤッホーーーー!
でも、空気薄ーーーい!
いや〜、日本では絶対に見られない光景です。
素晴らしい!
このまま山頂まで一気に晴れて欲しいもんです。
谷側の景色も相変わらず素晴らしいです。
チョゴリアルート、さすがでございます。
こちらは山側。
こちらも絶景です。
エリックが「あれがラストの登りだよ」と指差したのが、一度下った先にある標高差100mぐらいの登り坂。(写真右上)
ここから下りが10分、登りが30分とのこと。
ちょうどこの辺りにはマッシュルームストーンと呼ばれる基部がえぐれたキノコによく似た大きな岩がたくさんありました。
(人間と一緒に写さないと大きさがわからないんです
が、けっこうでかいです)
こちらも見上げる高さのセネシオの仲間。
Giant Groundsel Dendrosenecio
keniodendron
いや〜、すごい景観ですね〜。
他の惑星を歩いてる気分です。
こちらもロベリアの仲間。
Lobelia telekii
最後の登りに取り付きました。
ラストだと思うと俄然力が湧いてきて、ここは案外力強く登り切ることが出来ました。
現金な性格とも言えます。
登ってる最中に振り返ったところです。
さーて、登りきりましたよ〜。
ミントスハットはどこでしょう?
うーむ、景色は素晴らしいのですが、まだミントスハットに着かないですね〜。
(頭がそれでいっぱいになっている)
そして、ついにエリックが、
「ようこそ、ミントスハットへ!」
と、指差した先に小さな小屋が見えて大喜び。
本日の宿泊予定地だったロードヘッドから5時間、無事に登りきりました。(写真、右奥)
キャンプサイトの標高3000mスタートでトータルの歩行距離17km、標高差1300m、かつて無い重さのザック(ちょうど日頃トレーニングしてる重り入りザックと同じぐらいの重さで
したが)の組み合わせはさすがに堪えました。
これがミントスハットです。(標高4300m、16:00到着)
話に聞いてはいましたが、なかなかのオンボロ小屋です。
普通はガイドとポーター・コックのみが宿泊に使用し、お客さんは持参してポーターに運ばせるかガイドが準備したテントに泊まることが多いようです。
エリックがドアを開けた途端、中から数羽のムクドリクラスの鳥が5羽ぐらい飛び出してきて私はむちゃくちゃびっくりしたのですが、エリックは慣れてるみたいで頭を少し下げただけ
でした。
中はこんな感じで詰めれば20人ぐらいは寝られるスペースがあります。
私はテントを張る気満々だったのですが、エリックが「寒いし明日の朝の出発準備のこともあるから、ここで寝たほうがいいよ」とアドバイスしてくれたので、素直にそれに
従うことにしました。
自分の寝る場所を決めて荷物を置いて「やれやれ」と座った所で、
「だめだよ今休んだり寝たりしたら高山病になっちゃう。カメラ持ってちょっと散歩しよう」
と、エリックに誘われ、、、
小屋の周りを少し散策。
確かに北岳なんかのキャンプサイト(標高3000m)で到着直後に休憩のつもりが寝落ちして昼寝してしまい、軽い高山病にかかったことが過去に2回ほどあった
ので、このアドバイスは助かりました。
岩場に居たロッ
クハイラックス。 Procavia capensis
でかいネズミに見えますが、象の親戚です。南アフリカのオーグラビズフォールズでも見かけました。
どこぞのブログでケニア山のロックハイラックスは人を恐れないって書かれてましたが、近寄ることすら出来ませんでした。
うわ〜、これは綺麗!!
ホールターン(山湖)という名前でここが水場だそうです。(Hall Tarns)
そして、ガスが取れ始めたケニア山。
風が強くてガスがすっ飛んでいくさまが、なんとも神々しい光景でした。
いや〜、来てよかったです!
こういう山がガスに包まれたり顔を出したりするシーンが大好きなんですよね〜。
しばらく一人でぼーっと眺めてました。
帰国後に知ったんですが、こんなことが出来るんだったら絶対にやったんですけどね〜。
あと、水汲みに
ホールターンに下れば、こんな景色が拝めるみたいです。
あまりネタバレしないように調べなかったのが裏目に出ました。
小屋の脇で一人でタバコ吸いながら座ってるのがエリックです。
エリックは必要以上に絡んでこないので、ひとりきりになりたい気分の時は大変助かります。
しばらく一人っきりで景色を眺めてから小屋に戻りました。
大きな地図で見る
本日の歩行ログです。
小屋の中も床は濡れてるので、ここで寝るのは無理ですね。
というか、濡れてるということは雨漏りするんでしょうか?
そうこうしているうちにジェロームさんパーティのポーターコックチームが到着。
ご本人たちはまだ到着していません。
たぶん4000mオーバーの登りで苦戦してるんだと思います。
そして到着するなりすぐに夕食の準備が始まります。
エリックが自分のチャパティを彼らに配っていたので、そういう文化なのかなと思い、自分の行動食の中からポテトチップスやらカロリー
メイトなどを取り出し皆さんに配りました。
このポテトチップスがえらい大ウケで、ちょっとしたお祭り騒ぎになって喜ばれました。
夕方に向けてどんどん晴れ上がっていくかと思ってたんですが、意外にもガスに覆われてしまいました。(17:30)
そして、ジェロームさんたちも到着。
私も小屋の中でぼちぼちと夕食の準備を開始したわけですが、、、
先ほどのお返しにということで、砂糖たっぷりのケニアンティを頂いてしまいました。
さらに彼らからチャパティもプレゼントされてしまったのですが、今晩はすでに足りてるので明日の朝食にとっておくことにしました。
ちなみに、彼らの間では上下関係が厳然として存在しているらしく、ガイドさんは保温機能付きのマグカップ、コックは私と同じプラスティックのコップ、
ポーターは皿で紅茶を飲んでました。
(口をつける順番もガイドからです)
昨日は騒々しいとだけ感じていた皆さんのおしゃべりですが、本日はのっけから仲良くさせてもらったので、冗談を言い合いながら楽しく過ごすことが出来まし
た。
しかも、私のコップが空になるとすぐに紅茶を継ぎ足してくれるので、何杯もいただけたのはラッキーでした。
(高山病対策には水分補給が重要なのです)
あと、彼らの料理は日本の流儀とは全然違いますし、山ならではの工夫もあるので見ていて飽きません。
こんな高所の何も無い所でお客様用のまともな料理を手早く用意するんだから大したもんです。
写真にも写ってますが古いスウェーデン製の灯油コンロ(SVEA121L)あたりを2基用意してました。あれ、うちの父も昔使ってたんですよね。
懐かしいです。
そして、ジェロームさん達のガイドさんも私が日本人とわかってからは、顔をあわせる度に「コーニチワ!」と片言の日本語で挨拶してくれるのでした。
本日の夕焼けとジェロームさん達のテント。
もうちょっとガスが取れてくれればよかったんですけどね〜、明日に期待!
19時頃、トイレと歯磨きのために外に出た時の空です。
ちゃんと快晴になってました。
こりゃぁ、明日はバッチリのはずです。
さて、レナナピークアタックは2時半出発らしいので、早めに寝ることにしましょう。
エリックもカッパから何からすべて着込んで、見たところあまり暖かくはなさそうなシュラフに頭まですっぽり入って潜り込んでました。
というわけで、私も持ってきた服を全て着こみ、シュラフを頭まで被ってから21時ぐらいに横になって目を瞑りました。
しかし、興奮と緊張でなかなか寝付けません。
こういうことは珍しいんですが。。。
ようやく寝付いた頃、なんか体に重さを感じて目を覚ましたら、どうやら横に寝ているエリックの体がこちらに転がってきているようでした。
私は壁際で寝ていたのでこれ以上逃げようがありません。
エリックを起こして退いてもらおうと思ったんですが、よく見たらエリックの向こうに寝ているジェロームさんパーティのガイドさん含め、ほぼ全員がこちらにずれ
てきているのでした。
エリックも私と向こうのガイドさん(けっこうガタイが良い)に挟まれて窮屈そうに寝てます。
まぁ、いっか!
ということで、私も気にせず寝ることにしました。
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