その38
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ちなみに地図上だとタンザニアとの国境もすぐそこです。
かなりの水たまりですが、幸い道路まで覆われていなかったので良かったです。
おおお! 見えた、マガディ湖です。
何やら建物群が見えて来ました。
湖を含むこのエリア一帯はインドのタタケミカルズの子会社のマ
ガディソーダカンパニーという会社の私有地で、良質のトロナ石で覆われた湖から炭酸ソーダを取り出し、それを列車に乗せてモンバサから出荷しているアフリカ最大の炭酸ソーダ鉱床だったりしま
す。
(事前の調査でこの時に私が知っていたのは、塩田らしきものがあって会社の私有地の中に温泉があるってことぐらいでしたが)
というわけで、ちゃんとしたゲートが設けられていて、中に入るには許可が必要です。(16:25)
ちょっと物々しい雰囲気でしたが、ガードマンさんが差し出したノートに名前を記入し、簡単な説明を受けただけで中に入ることが出来ました。
ここでは料金とかは支払わなくて良いみたいですが、ガードマンさんの説明によると温泉にはマサイの管理スタッフが居て彼らに料金を支払う必要があるとのこと。あ
と、途中のゲートに同じ制服を着たスタッフが立っているけど温泉に行くといえば通してくれるらしいです。
ひと通り説明が終わったので、ここから温泉までの距離を尋ねたら「サーティ(30km)」と聞こえたので、「サーティ!?」と驚いて聞き返したら、「サーティーン」の
聞き間違いでした。
いやぁ〜、びっくりしました。
ロンプラに「四駆が必要」って書いてある一方で、エリックは「道は悪く無いから問題ないよ」と言っていたのですが、念のためここでも確認してみたとこ
ろ、温泉のすぐ近くは砂が和やらかいので車で近づき過ぎなければ大丈夫とのことで、温泉までの道中は問題ないらしいです。
というわけで、レッツゴー!
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湖の東側に沿って南に進路を取ります。
この辺はエリックから事前に聞いていたとおりです。
会社の敷地内に居住区や学校など必要な物はすべて揃ってるらしく、昭和の時代に作られたニュータウンみたいな人工的な街が湖畔に建てられています。
歩いている子どもたちもちゃんと制服を着ていて、これまでとは全然違った雰囲気を感じるのと、治安についての安心感があります。
しかし、ちゃんと温泉に向かって走ってるのかどうか自信がなかったので街行く人に尋ねてみたところ、「あってるよ」とのこと。
数キロ南下したところでゲートに到着しましたが、誰も立っていなかったのでそのまま通過しました。
ここにもちゃんと温泉の案内が出ていました。
ここからダート区間が始まります。
分岐にはちゃんと案内が出てます。
これは助かります。
お、バブーンが居ますね。
ぱっと見フラットダートっぽいんですが、実際には尖った石がところどころに顔を出していて、パンクしないか気が気じゃありません。
こんな区間があると身構えてしまうのですが、案外土が硬くて問題なく通過出来ます。
(出来る限り避けて走ってましたが)
なんとなく、もう13kmぐらいは走った気がするんですが、一向に到着する気配がありません。
案内看板も無いし、だんだん不安になってきました。
どこかで分岐を見逃したってことは無いはずですし・・・
そうこうしているうちに巨大な水たまりが登場し、車を停めて先に様子を確認しようと車から降りたところ、ちょうど左手の
丘の上にマサイ族の男性が立ってるのが見えました。
大声で呼びかけ、この先に温泉があるのかどうか尋ねてみたところ、あってるとのこと。
さらに、あとどのぐらいの距離があるのか尋ねたら温泉まであと5kmほどあるというのでまだそんなに残っているのかとちょっと驚いていたら、こちらに走ってきて「温泉まで案内してあげようか?」と嬉しい提案をしてくれます。
というわけで、ガイドをお願いしました。
マサイ族のピーターさんです。
先ほどの水たまりですが、深さはそれほどでもなく、かつ底が硬かったので難なく通過出来ました。
ピーターさんとお話しつつ、温泉目指して走っていきます。
そういえば、ピーターさんはこれまで乗せた誰とも違う体臭がします。
プラスチッキーというかなんというか、もしかしたら体臭ではなく化粧で塗ってる何かの成分の臭いかもしれません。
アフリカには現生人類の中でもかなり初期に枝分かれした遺伝タイプの人がいろいろ暮らしてるんですよね。そのせいかもしれません。
ここは干上がったマガディ湖の底のようです。
タイヤ跡は付いてますが、道路かどうかわからないような場所なので、ピーターがついてきてくれて安心です。
こんな箇所もありますが、万が一スタックしても押してもらえる人が一人居るってだけで安心感が違います。
(実際は全然泥濘んでないので大丈夫です)
ピーターさんが遠くを指差すのでなにかと思ったら、シマウマが草を食んでました。
こんなところにも居るもんなんですね〜。
ドライシーズン用の道とウェットシーズン用の道との分岐が2回ほど有り、両方共ウェットシーズン用の道に進むように指示されました。
これだけ水が残ってる時にドライシーズン用の道に突っ込むと、この車だとスタックする可能性があるんだとか。
というわけで、どうやらここがマガディ湖温泉のようです。(17:10)
我々以外の誰も居ません。ラッキー、貸切です!
しかも、写真には小さく写ってますがフラミンゴも群れてます。
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ちょうどマガディ湖の縁に沿ってJの字に走ってきたみたいです。
車を停めてまずは周囲の景色を眺めていると、ここに来る手前にあった屋根付きの小屋からマサイ族の男性2名が出てきてこちらに歩いて来ました。
どうやらこ
この管理人さんのようです。
ピーターさんが耳元で「彼らにお金を払ってはダメだ」と言い始めたので、何事かと思ったのですが、やってきた2名の中で長老風のおじさんは当然のごとく入
場料(1200KSh)を支払ってくれと言ってきます。
おじさんの手元を見るとちゃんとした入園用のチケットや台帳を持っていて「偽の管理人さん」という感じでは無いのですが、彼らの後ろに立ったピーターさんがさかん
に表情で「払うな」というサインを送ってくるので困ってしまいました。
でも、ここで払わないという選択肢はどう考えても無いと判断して、結局お金を支払いました。
ピーターさんはそれが納得出来ない様子でしたが、どうしようもありません。(後で聞いたら、ここの管理を誰がして、誰がお金を徴収するかということで揉めてるみたいでした。私
のヒアリング能力なので詳しいことは分からなかったのですが)
とりあえずお金も支払ったし用も済んだかと思ったのですが、彼らは特に立ち去る様子はなく、さらに後から女性が5名ほどどこからともなく歩いてきて、車のすぐ側に小
さなじゅうたんを敷いて何やら商品を並べ始めています。
どうやらここで私一人相手に市場を開いて商売をする気のようです。(笑)
もう、どうにでもなれということで、長老さんに一言断ってから後部ドアを開けてその影でスッポンポンになり(5mほど横で小さな女の子からお歳を召した女性達によって市場が開かれてるわけですが)、
海パンを履いて温泉に入ることにします。
どうせ見物されるんならついでに写真でも撮ってもらおうと思い、デジイチをピーターさんに渡すと「使い方がわからないから」ということで、彼が長老さんに渡したの
で、長老さんにシャッターボタンとファインダーの覗き方を教えて写真を撮ってくださいとお願いしてから温泉に向かいました。
というかピーターさんから事前に聞いてはいましたが、足元が苔で無茶苦茶滑ります。
湖底は巨大な1枚岩になっていて深さわずか5cmぐらいの区間が10mほど続くのですが、まともに立って歩けないぐらいヌルヌルと滑るのです。
そこをすっ転ばないように慎重に歩いて行く、というよりも、少しずつ足の位置をずらしながら進んでいくのですが、足の裏がまったく岩をグリップしないので自分の
意思とは関係なく体が90度横を向いたりするぐらい滑ります。(上の写真で横を向いて立ってるのはそのせいです)
後方からは「パシャ!パシャ!」とカメラのシャッター音が聞こえてきて、長老おじさんが転ばないように必死に歩く私を激写してるらしいのですが、写して欲しかったのはそんなシーンではないので
す。
というか、転んだシーンを写された日には末代までの恥です。
(データを消せばいいだけですが、それじゃぁポリシーに反しますしね)
はっきり言って恥も外聞も捨てて四つん這いで進んだほうが良いと思うのですが、そのシーンを写真に撮られるのだけは嫌だったので灼熱と言える気温の中、冷や汗流しながら立ったまま進みまし
た。
10mぐらい進んだところに幅が2mぐらいの細長い岩の裂け目があり、そこは水深が50cmから1mぐらいあって湯船みたいになってます。
手を入れてみると湯音も適温。(ジャスト41度ぐらいでしょうか)
さっそく入ってみました。
超ヌルヌルのアルカリ泉です。
もう、最高です!
そして、グレートリフトバレーの底にある絶景温泉、すごいのはこれだけじゃなく、、、、
すぐ側をフラミンゴが飛んでいくんですよ!
長老おじさん、ナイスタイミング!
(もちろん、撮って!撮って!と、さかんにアピールした結果ですが、3回めぐらいの飛来でちゃんと撮ってくれました)
というかですね、長老おじさんはカメラ撮影が気に入ったからか、その後は私が温泉に浸かってる間に何枚も写真を撮ってました。
ちなみに、おじさんは26枚も写真を写してくれました。
フィルムカメラだったら泣いちゃうところです(笑)
しかもそのうち6枚は私が写っていない!
海水並みの塩分濃度があるらしく、息を吸い込むと体がプカーっと浮き上がります。
このページの作者によるとpH10.3の強アルカリ泉だそうです。
私が浸かってるところから右下に続いている緑の帯が人が歩いて苔が多少薄くなっている道です。
気温が高いので半身浴で数時間過ごせそうな勢いです。
これで温泉脇に8人も見物人が居なければ最高なんですけどね〜。
ちなみにマサイ族はこの温泉には入らないのだとか。
いろいろ文化の違いはありますが、もったいないと正直思いました。
日本にこれがあった日には確実に芋洗い状態になります。
(TBSの「THE世界遺産」では村の長老が湯治で入ってました。だれでも気軽にはいれるってわけじゃないのかもしれません)
というわけで、出たり入ったりしながらなんだかんだと30分ほどは浸かってたでしょうか。
私が転んだシーンを長老おじさんに撮影されないために全神経を足の裏と体のバランスに集中して10mを渡りきり、無事に岸ま
で戻って来ました。
温泉脇の男性2名と女性5名の市場。(私の横に立っていた長老おじさんに許可をもらってから撮影)
左奥に小さく見えているのが彼らが居た管理小屋です。
ミニ市場と反対方向、車の先にはコフラミンゴの群れ。
最初に訪れたレイクボゴリアほどの数は居ないですが、温泉浸かりながらフラミンゴが餌を啄んだり、すぐ側を飛んだりするのを眺められるなんて最高です。
長老さんいわくここは(たぶんナイロビ駐在の)「日本人に大人気」で、皆さんテントを持ってきてここで一晩を過ごすんだとか。「君も今晩はここに泊まるの
か?」と尋ねられて、かなり心揺れたのですが、今日中にツァボ国立公園まで移動しようと決心してオロゲサイリもすっ飛ばして来ちゃったので、「今日はこれ
で帰りま
す」と答えてしまいました。
「ここから奥に進んだところにキリンの群れが居るから見て来たら?」と言うので、「ジラフ(キリン)は既に見ましたよ」と答えたところ、「そ
りゃゼブラ(シマウマ)だろ」と、速攻で返され、私の英単語の勘違いが原因なのですが、なんで私がゼブラを見たことを知ってるんだろうと不思議に思いました。
まぁ、ピーターさんいわく、マサイ族は遠くでスタックした車も発見できるからよく助けに行くって言ってたので、彼らはすさまじく目が良いんだろうと多います。
もともとここに来ようと決めたきっかけはケニア駐日大使館の紹介ページだったのですが、それによるとここにはハイエナが徘徊してるらしいので、泊まる
んならレンジャーを雇ってきたほうが安全なんだそうです。
そういえば写真を撮り忘れましたが、温度の低いところには魚が群れておりました。
(Alcolapia grahami )
源泉は50度らしいので(※Wikipediaによると86度)、温度が高い順に熱くて動物の居ない場所、人間の入浴場所、魚の生息場所と別れているわけです。温泉自体は湖と繋がってますか
ら、冷たくて構わないならそのままフラミンゴの居る辺りまで泳いでいけますね。
ここが海水並みの塩分濃度ということは事前に知っていて、残してあった水で体を洗い流そうと思っていたんですが、そんな気持ちを知ってか知らずか長老さん
が
「なぁフレンド、よかったら水をくれないか?」と声をかけてきたので、使い終わった500mlのペットボトルに水を分けてあげてプレゼントしつつ、彼
らの目の前で飲水で体を洗い流すのもどうかと思い、そのまま海パン脱いで体を拭いてしまいました。結局頭は温泉でも洗わずじまい、登山5日分の汚れ
は明日にでも落とすことにしましょう。(男一人旅、こういうところは気楽で良いです)
海パンを絞っていると、ピーターさんが「僕がやっておくよ」と言いながら手を出したので、別に頼むほどのことでもなかったのですが気軽にお願いし
ました。ついでにピーターさんにも水をペットボトルに入れて差し上げました。
さて、目の前では私のために市場が開かれております。
「あそこで何か買ったほうがいいですか?」とピーターさんに聞いてみたところ、少し考えてから「君が何か欲しいなら」とのこと。
じゃぁ、ひとつぐらい何か記念に買いますか、ということで市場に向かいます。
彼女たちが売ってるのは腕輪とお酒(こちらのビール)を飲むよう用のひょうたんでした。
メインの商品はビーズの腕輪で、軽く100個ぐらい並べられていて、どれを選んだら良いのかさっぱり判断がつきません。
彼女たちがすごい勢いで私の前に腕輪を差し出し、隙あらば腕にはめようとするので圧倒されつつどれにしようか悩みます。
強引にはめられた腕輪を外して敷物の上に戻したら、離れた場所に座っていた小さな女の子がそれを奪い取るように取り上げて自分の前のスペー
スに戻したので、どうやら5人横に並んでますが、両横はライバル同士、自分の商品を自分の正面に並べて商売をしているようです。
とは言え、さすがに5個も買うわけにもいかないので、誰かの商品をひとつ選ばなきゃならないのですが、結局私が選んだのはベテラン(ご高齢)の方が売っていた渋いデザインの腕
輪でした。(300KShなり)
ちなみに、この腕輪、車の座席の間にあるドリンクホルダーのところに置いておいたのですが、どこかのハンプでジャンプした時に椅子の下に落ちたらし
く、そのまま回収を忘れて帰国してしまいました。
なので、今手元にはありません。
残念。
買い物が終わり、車に戻って乗り込もうとしたところ、背後から何か気配を感じて振り返ると彼女たちがビーズの腕輪を両手にたくさん
持って目の前までやってきていて、「買え!買え!」という勢いで目の前に突き出してきます。(買い物した時もそうでしたが、全員無言です)
それを見かねた長老おじさんが「行っていいよ」と言ってくれたので振り切るように車に乗り込み、車の窓を開けて彼女たちに別れの挨拶のつもりで笑顔で手を振った
ら、おもいっきり無反応でした(笑)
いやはや、いろいろありましたが、トータルで大満足な温泉でした。
さて、行きますか!(17:50)
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