その41
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1月9日(水)(13日目)
深い眠りの奥底に遥か遠くから執拗に鳴り響くアラームの音が聞こえてきます。
この音はなんだっけ?
今どこで何してるんだっけ?
あ、そうか。。。
この旅では久しぶりに目覚ましで無理やり起きました。(5:50)
よーし、今日は朝から目一杯楽しむぞ!
というか、これで朝から動物を何も見られなかったら昨日の苦労は何だったんだという話になります。
いや、そういう問題じゃないか。
既に朝焼けも始まっていて、朝方は冷え込んだのかフロントウインドウが少し曇ってます。
そして、車の脇をサファリカーが次々に通過していきます。
どうやら、このゲートでは止まらずに中に入って良いみたいです。
大分明るくなったので周囲の様子がわかったのですが、目の前には門の字型のゲートが有り、そこから銅線が何本も垂れ下がっていて、道路脇には「エレファントグリッド」とサインが出ています。
ど
う
やらここは象が敷地内から出ないように電流を流している専用グリッドゲートだったようです。
ということは、本物のゲートはまだ先ですね。
では、私も行きますか!
あれがゲートですね。
どおりで昨晩はレンジャーさんが見回りに来なかったわけです。
入場手続きの仕方がわからなかったので、一旦車を脇に停めて並んでるサファリカーがすべて中に入るのを待ちます。
だいたい皆さんが中に入った後にゲートに進むと、案の定園内に入るには先に事務所で精算手続きを済ませておかなければならないことが判明し、指示通りに一旦車を脇に停めて管
理事務所に向かいます。
事務所内では若い女性スタッフさんが対応にあたってくれました。
入園料金は2日間でUS$130、マイカー持ち込みで600KSh、クレジットカード支払いが可能ということでそれをお願いしたのですが、機械不調により
結局現金支払いになりました。
円高の時にしこたま準備したUSドル札もほぼ底をつきました。
ここでガイドブックやロンプラにも記載の無かったキャンプサイトが園内にあることが判明し、一瞬今晩の宿泊を申し込もうかと思ったのですが、やはり今日こそは水でもいいからシャ
ワーを浴びてベッドで大の字になって寝たいなと思い、ボイの街で宿を探すことにしました。(ツァボウエストにはオフィシャルのキャンプサイトがいくつかあるって書かれてたんですが、イーストは無記載
だったんです)
昼飯に関しては公園内の宿泊施設(どれもこれも1泊万円単位の高級リゾート)でランチを食べさせてくれるとのこと。
これはサンブルもそうだったので想定通
り。
ついでに地図を売ってないか確認してみると、これまた恒例の「ここには今在庫が無いから後で売店に行って買ってほしい」という返事。
地図って案外入手が難し
いもんなんですね〜、ケニアの国立公園では。
さらにお姉さんのおすすめのコースを尋ねてみたところ、動物たちの水飲み場となるアルバダム周辺とガラナ川周辺に動物が多いということと、その他景色の良い場所なども紹介して
もらっ
たのですが、後で地図を買いにここまで戻ってくるんならこのコースを走ったらいいんじゃないかと指差した範囲があまりにも小さかったので、逆にこの国立公園がいか
に広いか再認識させられました。
事務所内に蚊が数匹飛んでいたのが目に入ったので、ここではマラリアの危険性があるかどうか確認すると、「夜にしか(媒介するハマダラ蚊は)飛ばないから今は大丈
夫」とのこと。
そして、サファリカードなるICカードを渡されました。
ケニア中の国立公園で使用できるということで、その存在は前から知ってましたが、実際に使うのはこれが初めてです。
(テンポラリーって書いてますし、この2日間だけ有効なんでしょうね)
ひと通り手続きを済ませて車に戻ると、窓を開けっ放しにしていたせいで車の中かがハエだらけになってました。
気にせず車に乗り込みゲートに向かうと、まずはICカードの提示を求められ、それで中に入れるのかと思いきや、今度はアナログの巨大台帳に名前や住所
等の記入が必要ということで、スタッフさんが目の前で台帳を広げ、ちょうどページが埋まってたので次のページをめくった瞬間に数十匹の虫が蜘蛛の子を散らすように
台帳から逃げ出し、まるで映画のワンシーンみたいでした。
(虫が苦手な人なら絶叫もんです)
「あぁ、ごめん」と言いながら慣れた手つきで虫を振り払い、台帳を私の前に広げ直したので、私も何事もなかったかのように必要事項を記入しました。
さて、いよいよサファリドライブです!(6:30)
ここでの目標はこの旅ではまだ出会っていないライオンと名物のピンクエレファント、あとはこの辺りにしか居ないレア動物のヒローラです。
(※あと、地味な所でマングースというのもあります)
各交差点には番号付きの丁寧な標識が出ているので、これなら迷うことは無さそうです。
逆にサンブルのような毛細血管みたいに伸びる脇道は今のところ見当たりません。
ここではメイン道路を走るしか無いみたいです。
まず最初に「ライオンが多い」と聞いたアルバダムに向かうことにしました。
ちょうど真正面から太陽が昇ってきます。
これぞアフリカって感じの景色ですね〜。
すでに昨日のトラブルや疲れはすべて吹き飛んでます。
お〜、キリンだ!
この、道路脇に普通にキリンがいるのがアフリカの国立公園ならではです。
なるほど、これがマサイキリンですか。 Masai Giraffe (Giraffa camelopardalis tippelskirchi)
サンブルで見たアミメキリンとは別亜種で模様が全然違います。
日本の動物園ではこのマサイキリンがよく飼育されているんだそうです。
太陽を正面に見つつ、アルバダムに向かって走っていきます。
しばらく走った所で四駆が一台道路脇に停まっていて、その横には軍服を着てライフルを持った2人のレンジャーさんが立ってまいす。
軽く挨拶をしてそのまま通過しようとしたところ「止まれ」の指示を出され、昨日のこともあって内心で少し身構えてしまいます。
「君はいつからここに来てるの?」
と、尋ねられたので、
「今日からです。先ほど入園したばかりです」
と、答えると満面の笑顔で、
「ようこそ! じゃぁ、まずはサファリカードを見せてくれるかな?」
と、言われ、そう言えば彼ら国立公園内で働くレンジャーさんだったんだと再認識しました。
サファリカードを見せつつ、今日どこかでライオンを見なかったか尋ねてみたところ、
「アルバダムのところに行ってビヤコー探したほうが早いよ。ライオンが居ればビヤコーが集まってるから」
とのこと。
この「ビヤコー」、最初は何のことだかよくわからなかったのですが、エリックを始めとしていろいろな人が「ビヤコー」「ビヤコー」と言うので文脈からだんだんわかってきた単語で
、「自動車(ビークル)」のことなんですよね。
というわけで、元も子もない話ですがライオンに関しては他のサファリカーのハイエナ作戦で行くことにします。
では、行ってきま〜す!
ここで朝食タイム。
三角形のサムサは一晩経っても美味しかったのですが、期待していたミートパイ風の食べ物はイマヒトツでした。
とは言っても、昨日まで延々続いたスパゲティ地獄よりは100倍マシなのですが。
いずれにしろ、結論としてはケニアではサムサがナンバーワンフードです。
これを買っておけばとりあえず間違いなしです。
道路脇の木に停まっていたニシブッポウソウ(European Roller Coracias
garrulous)
羽の色が美しかったので目に留まりました。
さて、かれこれゲートから40分ほど走って、インパラ1頭、マサイキリンの群れ2回、その他小鳥系ぐらい
しか見かけていないのですが、ブッシュが高いから動物たちが隠れちゃってるのか、そもそも動物が少ないのかは今のところ判断が
つかないところです。
ここで何台ものサファリカーとすれ違い始めます。
この先にはアルバダムがあるので、彼らがこちらに向かって走ってきたということはハイエナ理論で言うとダム周辺にライオンなどの「大物」は居ないことにな
ります。
逆に無線機で連絡を取り合ってる彼らが逆方向に疾走していくってことは、そちらに何かが居る可能性のほうが高いのですが、状況もはっきりしないままサファ
リカーの列にくっついて行くのもなんだったので、ますはアルバダムに行くことにします。
ダム付近に草食動物がたくさん群れていればそれだけでも十分満足ですし。
そして、予想通りアルバダムに近づくに連れ、動物密度が上がって来ました。
インパラのオスの群れ。(Aepyceros melampus)
コウノトリ。
(ヨーロッパコウノトリ White Stork Ciconia ciconia)
サンブルで一緒に飛んでくれたアマサギ Cattle Egret Bubulcus ibis
こんなかんじでダム周辺の動物たちを眺めながら走っていると、サファリカーが1台ぽつんと道路脇に停まっていて、乗っているお客さんたちが何やら熱心に眺めています。
眺めている先を見ても何も居ないので、どうやら距離が遠いか私の場所からだと見えないかどちらかなのですが、熱心さから言って大物の予感がします。(象やキリン以外の草食動物を見てる時って、なんか皆さん熱意がないんですよ(笑))
しかし、大物であれば停まっているサファリカーが一台だけってのもおかしいので、きっとコウノトリとかアマサギを見てるんだろうと結論づけてそこはパスしました。
そこから半径3百mぐらいの大きなカーブをUターンするように走ってダム湖の上に出ます。
(アルバダムと呼ばれている場所ですが、ダム本体は見ませんでした)
ここにもサファリカーが1台停まっていて、ちょうど先ほどのサファリカーのお客さん達が覗いていたあたりを反対側から熱心に
見ていて、やっぱり何か居るような気がします。
しかし、いくら見つめている先を確認しても何も居る様子がなかったので、先にダム湖を見に行くことにしました。
ダム湖の周辺にはたくさんのレイヨウやシマウマが群れていました。
水の中にはカバらしき動物も居ます。
壮観の一言です。
そして、この光景を眺めているサファリカーは2台。
ちょっと離れたところには先ほど何かを熱心に見ていたサファリカーがまだ停まってます。
あそこからこちらのダム湖の様子は見えないはずです。
ということは、やはり何かが居るんです。
しかし、先ほどアルバダムから戻るサファリカー軍団とすれ違い、ここには数台しか残ってないのですから、大物が居るって感じでは無いのですが、、、う〜ん、でも、気になります。
運転手さんに尋ねれば済むだけの話ですが、せっかくなので探す楽しみも込みで、そのサファリカーの後ろに車を停めて、何を見てるのか同じ方向を探してみること
にしました。
双眼鏡で探すこと30秒。
ん?
あの小さな物体は・・・・
もしかして・・・
(掲載の写真は35mmフィルム換算で200mm望遠レンズでノートリミング)
ライオンだ!! lion (Panthera leo)
(超望遠レンズで写して、さらにトリミング)
うわーーーー、これまでに停ってた2台のサファリカーのガイドさん、
すごい目をしてるなぁ〜。。。
(マサイ族の人を助手席に乗せてる車とかもあったので、その手を使っていたかもしれません)
いやぁ〜、お陰様でやっと出会えました!
昨日の夜中の苦労が報われました(笑)
こうやって見ていると向こうを走ってるサファリカーがなぜ気がつかないのだろうって思ってしまうのですが、これは望遠レンズの圧縮効果によるもので、実際にはライオンとサファリカーはかなり離れています。
(ということがわかってるはずなのに、念のため後で反対側まで確認に行ってみましたが、やはり遠かったのでした)
こう、もっとダイナミックに生活しているところ、できればハンティングシーンとかを見てみたいわけですが、贅沢は言えないですね。
そもそもライオンは狩りの時間以外は無駄なカロリーを消費しないようにダラダラしてますし。
うむ、満足しました!
アフリカの大型のネコ科動物コンプリートです。(マサイ・マラ抜きで実現したのは我ながら偉い(笑))
というわけで、再びアルバダム湖に戻ります。
ちなみに、ダム湖と言っても直径300mぐらいの日本で言えば池ぐらいの大きさです。
まずはカバ。
ライオンと一緒で昼間はちっとも動きません。
そして対岸に居るレイヨウ達。こんなにたくさんのオリックスは初めて見ました。
ライオンがのんびりしてる場所から数百mしか離れてません。
ここは見ていて飽きないので、しばらく佇んでました。
カメラに超望遠レンズを付けていたので、コウノトリ(シュバシコウ、White Stork (Ciconia ciconia))
のアップを撮影。
ふと気がつくと、いつの間にやらライオン目的でサファリカー達が集まってきていました。
さすが無線機を搭載しているだけのことはあります。
ライオンから数百m離れているので、これならハラスメントにもならないでしょう。
あまりにもたくさん集まってきたので、もしたしたら他に居るのかもと思って再確認してみましたが、やはりこのペアを見るために来ていたようです。
(この写真は念のため反対側に回りこんだ時に撮影したものです)
では、そろそろ地図を買いにボイゲートに戻るとしますか。
飛び立つシュバシコウの群れ。
道路脇で食事中のマサイキリン。
模様を見ててっきりアミメキリンかと思ったのですが、いろいろ調べてみたらツァボイースト独特の網目状の模様を纏ったマサイキリンだそうです。
ややこしい!
こちらはノーマルな模様のマサイキリン。
警戒心が強いので、車が近くにいる場合はかなりの確率でカメラ目線になります。
口は左右上下にモグモグ動かしてますが、目線は常にこちら。
これがかわいいんですよね。
ちなみに、オスは高いところの葉っぱ、メスは低いところの葉っぱを食べるらしく、今度旭山動物園はそれを紹介する生態展示をするそうです。(って、たまたま見ていたテレビ番組でやってました)
行きは逆光でしたが戻るときは順光なので、景色を存分に楽しみながら走れます。
ここもサンブルと同じで足が青いソマリダチョウが生息してるんですね。
Struthio
camelus molybdophanes
ちなみにツァボイーストはサンブルと同じ北方系の動物、川や線路と道路挟んで反対側のツァボウエストは南方系の動物が多いんだそうです。
お〜、土の色が赤くなりました。
オーストラリアのアウトバックやナミブ砂漠やカラハリ砂漠もそうでしたが独特の景観ですね〜。
この赤い土をまとった「ピンクエレファント」がツァボでは有名なのですが、まだ今のところ一匹もお目にかかっていません。
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