2013年スイストレッキング&ドライブ旅行記
その5
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8月13日(火) Day4
時差ボケモードで朝4時に起床。
天気予報と違って雨が降っていてびっくりしたのですが、二度寝してから起きた時には止んでいてひと安心。
朝6時になったので、おじさんから言われたとおり食堂のある本館(宿泊棟は別棟なのです)の従業員用裏口から中に入り、、、

真っ暗な部屋でガラス製の冷蔵ケースの明かりを頼りに、自分で朝食を準備して頂きます。
おじさんはまだ寝ているみたいです。
これから山登りなので遠慮なくたくさんいただかせていただきました。
冷蔵ケースの中に自家製バターがあり、これがかなり美味しかったです。
あと、スイスはハムも美味しいですね!

さて、出発しますか。
少し晴れ間も見えてますし、後は天気予報通り晴れるでしょう。
気温は9度、やはり寒いです。

朝焼けが始まりました。

昨日も走った道でジナル村に向かいます。

昨日観光協会のお姉さんに教えてもらった村の南にある駐車場に車を停めます。
(公営駐車場が何箇所かあって、どこも無料で使用できます)
ここで最終パッキングを行い登山口に向かって歩き始めます。(7:25)

さすがアニヴィエ谷の登山基地ジナル。あちらこちらにコースが伸びています。

登山口が見えてきました。(7:45)

コースであることを示す白と赤のペンキマークが分岐ごとに石にきちんと付けられているので、基本的に迷うことはないです。
(と、言いつつ一箇所ペンキを見落として遠回りしちゃいましたが)

アニヴィエのU字谷の急峻な壁に設けられたつづら折れの道を登っていきます。
写真に写ってる電線は電流が流れているので(害獣よけか放牧している動物の檻)、隙間から通るか赤いプラスチック部品の部分を掴んでロープを外してくぐり抜けます。
一度間違って触っちゃったんですが、少しピリピリしました。

1時間近く歩いて誰とも会わなかったのでここは人気が無いコースなのかと思ったのですが、谷の頂上付近でぼちぼち後続の方に抜かされ始めました。
要は私の出発時間が早く、ペースが遅いだけのようです。

谷の頂上付近から見下ろせばジナルの村は遥か彼方下に見えます。
大きな地図で見る
地図上の標高で言えば軽く400mは登って来たことになります。(地図は日本の専門店で購入して持って行きました)

谷の頂上に到着すると一気に前方(東側)の視界がひらけます。(9:40)
流れている川は背後の壁で大きな滝になっていて、ジナルの村から見ることが出来ます。

ちょうど笠雲をかぶっているヴァイスホルン(Weisshorn 4505m)から左に伸びる稜線の鞍部にある小屋まで登るのですが、はてさて天気はいかがなもんでしょう?
ちなみにスイスには(というか大抵の諸外国には)日本のような山頂をつなぐ稜線を山小屋(備え付けのテン場)に泊まって歩き続けるという登山スタイルはありません。
トレッキングとクライミングは明確に分かれていて、標高の高い山の山頂を目指す「クライミング」は氷河や雪、急峻な岩に覆われた4000m峰をガイドを雇ってアイゼンとピッケル装備で仲間とロープでつないで登るというスタイルがスタンダードで、一方の「トレッキング」では景色の良い場所をひたすら歩き山頂を踏まないことも多いという感じになります。
そこで日本人や欧米のトレッキング専門の方は「山小屋めぐり」という一風変わった歩き方を楽しんでいる方が多いみたいです。
スイスの山奥にある山小屋の多くは4000m峰登山の前線基地として存在し、登山口と山頂の中間地点みたいな場所にあります。山頂アタックをする人はひとまず山小屋まで登り、そこで天候を見ながらタイミングを測って一気に登るという寸法です。
山小屋巡りのトレッカーは日帰り行程で山小屋まで行き、そこで4000m峰を間近に見上げながら提供される昼飯を食べて帰ってくるパターンが多いです。
今回私が行く山小屋はヴァイスホルン(Weisshorn 4505m)の登山ベースとなるトラキュイ小屋(Cab.deTracuit、3256m)で、登山口からの標高差は1600mと南アルプスの北岳登るのと大差ない行程なので行程は1泊2日にし、帰りは違う道を歩いて下山しようという計画です。
本当はさらにもう一泊して別の山小屋まで足を伸ばしたかったのですが、候補のうちの一箇所は近すぎて歩いた気分になれそうもなかったのと、もう一箇所は逆に遠すぎて到達困難と判断して諦めました。(あと、天気予報的にもアニヴィエ谷で3日粘るメリットが薄かったのです)

そんなわけで、ハイジの歌に出てくる「アルプ(高山山腹の夏季放牧地)」の中を歩いていってるわけですが、すでに標高差1000m近く登っていて、すでにかなり息が切れています。

花が沢山咲いていて景色は抜群なんですが、楽ちんトレッキングというわけじゃないです。
そんな中を信じられないペースで歩く西洋人グループに「ボンジュール!」と声をかけられながら抜かされまくります。(写真にも抜いてった方々が写ってます)
彼らは格好からしてクライマーなので私より荷物が重いはずなのですが、とんでもないスピードで歩き続けています。
私だって日本の旺文社の地図基準ならコースタイムを切れるぐらいのペースで歩いています。
彼らが速すぎるんです。

う〜ん、素晴らしい! (写真は広角で写してるので花がポツポツ咲いてるように写ってますが、実際はすごくたくさん咲いてます)

あまりに息が切れるので、シャリバテでもしたのかとコモパン休憩。
そんな中をどんどん西洋人グループの方たちが笑顔で「ボンジュール!」と挨拶しながら追い越して行きます。
(この行程で何組に追い越されたか覚えてないぐらいです)
あと、下ってくるグループも多いのでヴァイスホルンはやはり人気の山のようです。

登っている途中で振り返って絶景を眺めているところです。

たぶんあそこの鞍部に見える四角い建物がゴールのはずなんですが、事前に写真で見ていた小屋とデザインが全然違っていて自信が持てません。
もし違ったらと考えるとぞっとします。

いや〜、どこまでも登りますね〜。

ハイジの世界はほどなく終わり(アルプには岩山の意味もあるらしいのですが、岩山に森は無いはずなので、やはり終わったのでしょう)、明日歩く予定の道との分岐に到着。
(11:25)
ということは、本日泊まる小屋はあそこに見えていた四角い建物であってるはずです。

岩が転がる不安定な道をひたすら登っていきます。
かなり斜度が上がったので道はつづら折れになってます。

あと少し・・・・

最後はちょっとした岩場を超えて行きます。
(赤い上着を着てる方が居る辺りがちょっとした鎖場です)

着いたーー!!!(トラキュイ小屋(Cab. de Tracuit 3256m))(12:15)
登山口から4時間半ほどかかりました。(コースタイム通り)
大きな地図で見る
本日の歩行ログ。
事前に調べたのと全然違う建物だったんですが、去年だか今年だかに建て替えられて、最新設備バリバリの山小屋になってました。
全面ガラス&太陽電池貼りです。(写真は到着数時間後にガスが晴れてヘリが荷物の運搬で飛んできたところです)

シューズロッカーで靴を脱いで備え付けのサンダルに履き替えます。
ストック、ロープ、アイゼン置き場もありました。

レセプション、おっしゃれ〜。
で、ここで自分の名前をスタッフさんに伝えたわけですが、私の名前での予約が入ってませんでした。
昨日の観光協会での電話でのやりとりを聞いていて嫌な予感がしてたんですよね〜。
「私は日本人で昨日の夕方観光協会から予約した者です」と告げてようやく予約確認が取れました。

宿泊部屋はこんな感じです。
日本の山小屋と一緒です。(荷物置き場があるあたりは気が効いてます)
着いた時は空いていたんですが、最終的にほぼすべての部屋が満室になりました。
(たぶん収容人数100名ほど)

大きな窓ガラスの食堂兼休憩スペース。

外の景色を眺めながら昼食(ピザとパイみたいな食べ物)を頂きました。
もちろん山小屋価格です。(24フラン、2500円)

食堂から見える景色はご覧のとおり。巨大な窓ガラス越しに絶景を眺めながらまったり過ごせます。
私は外の空気が吸いたかったのと、ガラス越しが嫌だったので、なんだかんだ外に出て過ごしてました。
写真の尖った山はチナールロートホルン Zinalrothorn (4221m)です。

こちらが夕方になってガスが取れたヴァイスホルン方面。左に3つ並んでるピークの奥の真ん中のガスがかかってるピークです。
この日小屋に泊まった人の8割はヴァイスホルン(Weisshorn 4506m)か手前のビスホルン(Bishorn4153m))登山目的の方々だったので、天気を見ながらアイゼン、ピッケル、ロープ、ヘルメット装備で出発して行ったり、山から戻ってきたりしています。
私みたいに小屋で一泊して帰るのはファミリーグループとかご年配の方ぐらいのようです。
驚いたことにここではWiFiが使えるので、持ち込んだタブレットで天気予報を見ながら明日以降の計画を練りました。
そして、楽しみにしていた夕飯の時間になりました。(18:00)

一緒のテーブルに座った皆さんと大皿から仲良く取り分けるスタイルです。
写真で取り分けてくれているのはスタッフさんですが、普通は自分たちでやります。

フランスから来たという3人組の方々とお話しながらの夕食です。(メニューはスープにパスタ、あとデザート)
とても美味しかったです。
たぶんこの日100名ほど泊まっていたと思いますが(要予約宿なので定員いっぱいいっぱい)、日本人どころかアジア人は私一人だけでした。
ちなみに皆さん歩くペースも半端ないですが、食べる量もすごかったです。
明日のぶんの水を入手したかったのですが、売り物しか無いとのことでお金を出して購入しました。(先に書いておきますが、私と同じ行程の人は買う必要は無いと思います)
2リットルぐらいのペットボトルで10フラン(1050円)なり。

紅茶を受付時に申し込んでおくと、食後に大鍋で出してくれるので、各自テルモスなんかに移します。
そして、ここで精算タイム。
1泊2食付きで90フランと聞いていたので、そのぐらいの現金しか持ち合わせていなかったのですが、書かれた紙に「160スイスフラン」と書かれていて顔から血の気が引きました。
絶句して固まっていると、「あ、間違えちゃった。二人分で計算しちゃった」と100スイスフランぐらいに変更になり(たぶん10フランはお茶代分)、ほっと胸をなでおろしました。
その後は消灯時間となり、皆さん三々五々部屋に戻って行き、私も22時頃部屋に戻って眠りに就きました。
夜中に一度起きて外に出てみると、ゴルナーグラート以上の星空が広がっていました。
明日も天気はよさそうです。
その6へつづく